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電子マネー利用額は2割増 2020年「家計消費状況調査」から考える家計管理のポイント

坂本綾子ファイナンシャルプランナー(CFP®)、1級FP技能士
(写真:アフロ)

コロナ禍の家計消費はどう変化した?

個人消費の動向を把握するために行われるのが「家計消費状況調査」だ。コロナ禍に翻弄された2020年はどのような結果だったのだろうか。

ネットで食料を買う世帯が増加

大きく増えたのが、ネットショッピングの利用世帯だ。2人以上の世帯における利用世帯の割合は2010年には19.7%つまり5世帯に1世帯ほどだったが、2020年には48.8%つまり2世帯に1世帯に増えた。前年比では6ポイントの増加だった。

では、ネットショッピングでは何を買っているのか。前年比で大きく伸びたのが「食料」と「家電・家具」。いずれも50%を超える増加率となっている。一方、外出自粛などの影響を受けて大きく減少しているのが「旅行関連費」と「チケット」。こちらはいずれも50%を超える減少となった。

食料の内訳を見てみると、「出前」が前年比97.8%増、食料品が54.6%増、飲料が41.8%増である。確かに、飲食店から預かった料理を背中のリュックに入れて自転車を走らせる配達員の姿をよく見かけた。

電子マネーの利用世帯も増加

もうひとつのトピックは、電子マネーの利用世帯の増加だ。電子マネーを所有している人がいる割合は、2人以上の世帯において2020年は69.2%で前年比6.8ポイントの上昇。持っているだけではなく電子マネーを利用した世帯の割合は57.5%で、こちらも前年比4.3ポイントの上昇だ。

電子マネーの利用金額も増加している。2人以上の世帯では、電子マネーの1か月あたりの平均利用金額は2万4790円。前年比20.5%の増加だった。

2021年も5カ月が過ぎ、ワクチン接種が進めば、コロナ禍からの脱出も近づいてくるだろうという期待感がある。しかし、2020年は未知のウイルスに対する恐怖心は大きかった。戸惑いながら過ごした1年間の記憶と、調査結果は重なっていると思う。

コロナ以降の家計管理のポイントはキャッシュレス決済への対応

さて、コロナが収束すれば、ここまで紹介したような変化は、元に戻るのだろうか? 

そんなことはないと考える人がきっと大多数だろう。ネットショッピングはますます増えるだろうし、食料の出前も、いったんその便利さを享受したら後戻りは難しい。電子マネーも、おつりがいらない、財布が硬貨で重くならないなどメリットは大きい。

しかも、コロナが収束すれば、これまで外出自粛により抑えられていた消費は、一気に増える可能性が高い。「家計消費状況調査」に戻ると、2020年はネットでの購入が大幅に減少した「旅行関連費」だが、月ごとの推移を見ると、増減の変化が激しいことがわかる。緊急事態宣言によりいったん減少した後、緊急事態宣言の解除と「Go Toトラベル」の開始により持ち直し、11月以降は感染拡大により再び減少している。

消費者には外出したい意欲が溜まっているし、家計の貯蓄額は全体で見れば消費抑制により大きく増えている。政府も景気を刺激するために財布のひもを緩めたくなるような政策を行うだろう。

家計管理もコロナ以降にシフトを

ここで注意したいのが、家計管理の方法を、ネットショッピングの増加や電子マネーの増加に対応させることだ。ネットショッピングの決済方法は、約8割がクレジットカードとなっている(令和2年版「情報通信白書」)。具体的には、クレジットカードや電子マネーといったキャッシュレス決済をどう管理するかをしっかり考えることだ。

以前はよく家計相談の際に、クレジットカードを使ったときは、家計簿にどう付ければいいかという質問を受けた。買った日か、それとも引き落とされる日か。「買った日に付ける」ことをおすすめする。後払いのクレジットカードは借金であり、必ず返済しなければならないからだ。そもそも銀行口座に残高がない状態でクレジットカードで支払いをしてはいけない。

さらに最近よく聞かれるのが電子マネーをどう使えばいいか。電子マネーは、何に使うかと予算を決めるのが上手に管理するコツだ。電子マネーは、現金や銀行口座からチャージすれば先払い、クレジットカードに紐づけると後払いになる。複数のクレジットカードや電子マネーを適当に使ってしまうと、商品やサービスの購入時にお金を払う同時払いの原則が崩れて、家計管理が大きく混乱してしまう。

キャッシュレス決済のルールを決めよう

キャッシュレス決済について、自分なりのルールを決めたい。クレジットカードや電子マネーは、生活の状況に合わせて、必要なものだけに絞り込み、支払い手段ごとに何に使うかと予算を決める。

例えば

  • Aクレジットカード:食料や雑貨など毎月使う日常的な支出、予算は月8万円
  • Bクレジットカード:旅行代金や家電の買い替えなど年に数回の支出。予算は年間50万円
  • C電子マネー:通勤定期 予算は定期代 チャージは現金
  • D電子マネー:コンビニやスーパーでの日常的な買い物 予算は月2万円 支払いはAクレジットカードに紐づけ

財布の中の現金が目に見えて減るという視覚的な抑制効果が働かない分、使いすぎになりやすいと言われるキャッシュレス決済。予算を立てて守ることで使いすぎを防げるし、何に使うかという費目と関連づけておくことで、細かく家計簿をつけなくても支出を把握しやすくなる。

支出増の前に、お金の通り道を整備して、スムーズに無駄なくお金を使えるようにしておこう。

ファイナンシャルプランナー(CFP®)、1級FP技能士

雑誌記者として22年間、金融機関等を取材して消費者向けの記事を執筆。その経験を活かしてファイナンシャルプランナー資格を取得。2010年より、金融機関に所属しない独立した立場で、執筆に加えて家計相談やセミナー講師も行う。情報の取捨選択が重要な時代に、それぞれの人が納得して適切な判断ができるよう、要点や背景を押さえた実用的な解説とアドバイスを目指している。

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