テレビ離れがいよいよ進み、YouTubeの勢いが増している。テレビは押され気味なのは否めない状態だ。テレビで活躍しているタレントがYouTubeにチャンネルを持つのも当たり前で、むしろそちらに心血を注ぐ芸人も多い。テレビは視聴者からも出演者からも見放され、YouTubeがメインストリームになりつつある。

テレビ局がYouTubeを積極的に活用

だが一方で、したたかなテレビの作り手の中にはYouTubeをむしろ積極的に利用して自分たちが作った番組をより多くの人びとに見てもらう努力を重ねている。そのことを筆者は昨年もYahoo!ニュースで伝えてきたが、ここへ来て新たな局面を迎えているように思う。

番組を丸ごとYouTubeに置く動きが出てきた。

まずは読売テレビ「そこまで言って委員会NP」。

これは最新の年末放送回だが、1時間を超える長尺の番組がそのまま丸ごと置かれている。

この番組はTVerでも配信しているのだが、そちらは配信期間が1週間であるのに対し、YouTubeではもっと長い期間置かれている。再生回数も万単位でなかなかのものだ。

また名古屋テレビ制作のおぎやはぎ出演のキャンプ番組「ハピキャン」は放送から一年程度時間が経った回をYouTubeでやはり丸ごと配信している。

これは2019年3月に放送された最初の回を2020年3月に配信したものだが、350万回以上(2022年1月現在)再生されている。キャンプブームにうまく乗ったのだろう。

放送された番組ではなく、YouTubeでオリジナルの番組を展開する動きもある。

「燃えドラCh」はCBCテレビが運営する中日ドラゴンズファン向けのYouTubeチャンネル。特定の球団に絞っているからこそ、回によってはとんでもない再生回数になっている。

しゃべりの達者な元選手を起用するのもポイントのようだ。

これらはいずれも、番組の作り手たちが少しでも番組と接してもらいたいとの思いでやっていることだろう。番組を見てもらうことで収益面でも何らかの可能性が出てくる。

また全国ネットの番組ではないからこそ、日本中(世界中?)で見てもらえるYouTubeで配信する意義がある。万人向けではなく対象を絞った番組なのもポイントだろう。テレビ各局は最近、コア視聴率を気にするようになったが、もっとギュッと絞った相手に向けることで、ネットで配信する価値が出てくる。

元テレビマンたちがYouTube動画制作へ

テレビ局を辞めた作り手たちのネットでの活動も活発になってきた。

TBSから独立しフリーになった角田陽一郎氏はEXIT兼近が出演するYouTube番組「ポポポエム」を制作している。NTTと吉本興行のジョイントで生まれた教育コンテンツ事業「ラフ&ピースマザー」のブランディングチャンネルだ。

この事業はアプリの形で遊びと学びのコンテンツを配信するオンラインサービス。アプリ内で提供している動画の一部をYouTubeでも見てもらうためにチャンネルを開設した。

兼近と子どもたちがポエムを即興的に作る動画で、かわいらしく時にドキッとする子どもたちとの会話が面白い。

元テレビ朝日で今はABEMAの番組などネットでも動画を制作する鎮目博道氏は自ら制作する動画に自身でも出演している。この動画は伊藤ハムのYouTube公式チャンネルで展開される「みんなでハムハム」で配信されているもので、筆者も立ち上げの手伝いをした。元テレビマンが企業とコラボして動画を制作するにあたり、自身の姿もさらけ出して取り組むのが面白い。伊藤ハムのSNSキャラクター、ハム係長の声を声優の石田彰氏が務めているのも魅力だ。

奥渋の老舗魚屋「魚力」にハムのメニュー開発をむちゃぶりしているのだが、これを皮切りに全国のお店を訪問するという。

テレビの作り手たちは、考えてみるとこれまでテレビ放送というフレームに縛られていた。だが気づいてみると、新たなプラットフォームであるYouTubeは創造意欲をのびのび解放できる場でもある。YouTubeに押されているからこそ、そこを自分たちの場所として捉えることで新しいコンテンツ作りができるのではないだろうか。それにより、テレビとネットの垣根を超えて映像コンテンツ全体が面白くなっていくことを期待したい。