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学生の「ナビサイト離れ」実態は?20卒就活解禁(採用広報解禁)の現状

酒井一樹就活SWOT代表
(写真:アフロ)

3月になり、就活ナビサイトがグランドオープンし、「採用広報」が解禁となり、一週間が過ぎた。

実態としてはすでにインターンシップなどの形式で学生と接点を持っていた企業も多いのだが、正式には今月から企業説明会などが開催され、6月からが「選考解禁」となる。

(ただし選考解禁日やそれ以前に内々定を告げられる学生も実態としては多い。)

【ナビサイト離れできない企業】

今年3月1日時点で、ナビサイト大手のリクナビには3万社を超える企業が掲載された。

続くマイナビでも約2.4万社が掲載され、過去に例がないほどの掲載社数となっている。

この「掲載企業数」には情報だけ掲載し、エントリーは自社サイトなどで受け付けている企業も含まれているが、概ね9割程度はそのままナビサイト上でエントリーが可能になっている。

昨今、一部の学生が「ナビサイト離れしている」と言われている一方で、企業側は逆にナビサイト離れができていないようだ。

一度は、「新卒採用が激戦だから」と第二新卒採用や中途採用にシフトする企業も多かった。

しかし中途・既卒市場も激戦でうまく行かず、結局新卒採用もせざるを得ないという企業もあるようだ。

「ナビサイトに載せるだけでは採用できない」と言われながら、それでもナビサイトに載せる以外の選択肢はまだまだ少ない。

「ダイレクトリクルーティング」の名のもとに学生に直接スカウトを送れるタイプのサイトも増えて来てはいるが、まだまだ対応できている企業は少ない。

【学生はナビサイト離れ…とは言うものの】

一方で学生は「ナビサイト離れ」が指摘されているが、それは本当なのだろうか?

結論から言うと、難易度の高い企業群を狙う意識の高い層の学生においてはそのとおりだ。

しかし「就活開始時にとりあえずナビサイトに会員登録はしておく」という流れは変わっていない。むしろ利用学生は増えているという状況だ。

特にテレビCMなどプロモーションに積極的なマイナビは会員数を伸ばしており、3月1日時点で会員数90万人を超えたという。

2019卒同時期では80万人程度であったため、前年比で1割程度の増加となっている。

(この数字は、インターンシップ時点ですでに登録していたユーザーも含んでいる)

昔はナビサイトは「ほぼ大卒者向け」というイメージが強かったが、最近では第二新卒や既卒、専門学生や高卒の学生などに対してもナビサイトを使うよう積極的にプロモーションされているようだ。

つまり「ナビサイト離れ」が進んでいるのは大卒者の中でも比較的上位層の学生に限った話であり、それと入れ替わるように新たなユーザーがナビサイトに流入してきているというのが実情だ。

「ナビサイトだけに頼らない」という学生も増えているが、ナビサイトを使った方が就活がしやすいという就活生もそれ以上に多いというのが現状だと言えるだろう。

【20卒選考はすでに開始。内定学生も】

最近の就活事情を語る上でのもう1つのキーワードが「早期化」だ。

今年2月1日時点の内定率は、8.1%という調査結果が出ているようだ。もちろん19卒学生の話ではなく、20卒学生の話である。

インターンシップ経由での内定もあり、今年も早期化は進んでいる。

新卒採用に積極的な人事担当者の間では「3〜4月が勝負」と言われており、6月から選考を開始しようなどという呑気なことを言っている人事は逆に珍しいだろう。

政府はこのような状況を鑑みて、採用直結のインターンシップをやめるよう要請するという。

「2021年卒学生向けの就活ルールで、政府は採用に直接結びつけるインターンシップ(就業体験)の禁止を経済界に要請する」方針を固めたと報じられているのだ。

インターンシップが事実上の選考になっていることも確かだが、すべての企業に遵守させることは難しい。

仮にこのまま経済界に要請されれば、結果として外資やベンチャー企業による抜け駆け採用が増えることになるだろう。

ここ数年「早期化」「売り手市場」などのキーワードで語られてきた就活市場だが、来年以降は政府の動き方次第ではまた一悶着ありそうだ。

就活SWOT代表

慶應義塾大学在学中、世界初の就活SNSの代表に就任。国内最大の就活SNSへと成長させた後に大学を卒業し、エグゼクティブサーチを行う人材ベンチャーに入社。役員・事業責任者などの幹部人材の採用支援に携わる。2009年にエイリストを設立し「自分の頭で考え、行動する人材を増やす事」を命題として就職情報サイト「就活SWOT」を開設。

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