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就活時期変更により急増する「秋冬インターン」への違和感

酒井一樹就活SWOT代表
(提供:アフロ)

【就活開始時期が遅れ「秋・冬インターン」が多くなっている】

ここ数年の間に就活開始時期が後ろ倒しになり、採用広報解禁が3月になった事は記憶に新しいかと思います。

その一方、就活市場はどのように変化したかというと実は「秋/冬インターンを実施する企業が急激に増えた」という実情があります。

夏季インターンは例年3年生の6月から情報発信が始まり日系企業も含めて実施していましたが、これまでマイナーだった「秋冬インターン」がここ数年急増してきているのです。

【秋冬インターンといえば、以前は外資中心だった】

秋冬インターンは、外資など一部企業の採用活動においては昔から馴染みのある手法でした。

コンサルティングファームや外資系金融機関を中心に秋・冬に実施する内定直結インターンが開催され、一部の優秀な学生はそこで就活を終えていました。

しかし最近では外資系だけでなく、日系企業でも秋・冬のインターンを導入する企業が増えてきているのです。

参考までにGoogleトレンドで「冬インターン」を調べると下記のように年々検索数も伸びてきている事がわかります。

「冬インターン」の検索数トレンド(Googleトレンドより)
「冬インターン」の検索数トレンド(Googleトレンドより)

【採用広報解禁前に、6000社以上が秋冬インターンを実施!?】

具体的な企業名は伏せますが、とある就活ナビサイトでは10月にインターンを実施する企業がなんと1500社以上ありました。(9月下旬時点)

11月は2000社以上、12月に至っては2200社以上が現時点で公開されています。(10月19日現在)

夏休みが終わった10月以降で採用広報解禁の2月末までを含めると、重複を除いて6000社以上に上ります。

そしてこの企業数は今もまだ増加しています。

採用広報解禁が遅れても「インターン情報なら掲載できるから…」と仕方なくインターンへとシフトしている企業が多いと推察されます。

これは「企業情報だけ載せている」企業数ではなく、実際にインターン情報を掲載し、エントリーできる状態の企業数です。

あくまで現時点での数字ですので、今後新規にインターン開催を決定する企業もあるでしょう。

内容は説明会に毛が生えた程度の1Dayインターンから2週間以上の中期インターンまで様々です。企業規模で言うと、ベンチャーや中小企業ばかりではなく、日系大手企業も含まれています。

もちろんインターンの実施が悪いことではないのですが、会社説明会にグループワークを足した程度の1Dayインターンも多く、それが増加するともはや完全に形骸化です。

所謂「合同説明会」も、就活という単語を出さないだけで「インターンイベント」「キャリアイベント」という体裁で昔と概ね同じ内容のイベントを実施しています。

【学生の負担は減っていない。むしろ…】

昔は3年生の秋頃にナビサイトがオープンし、そこから約半年かけて就活を行っていたわけですが、現状はその前半を秋冬インターンシップ、後半を本選考と分けただけに近い状態です。

しかも内定を出す時期自体は後ろ倒しになっており、「就活のために動く期間」だけは長くなってしまいました。

もちろん本選考が始まるまで動かない学生もいるわけですから、必ずしも全員が長期間活動しているわけではないでしょう。

裏を返せば、3年生の秋から動き出さない学生は情報や選考への慣れという点において出遅れることになってしまいます。

企業側が「採用広報の代わりにインターンを」とシフトしている中でも、「今はインターンの時期だからまだ就活しなくても良い」と思い込む学生は存在します。

「表向きの解禁時期変更」によって割を食うのはそういった学生です。

【問題が顕在化するのは、市況が悪化した時】

とはいえ今は採用も売り手市場ですので、出遅れた学生もそこまで苦労せず

「どこか」からの内定はもらうことができています。

現状では学生がエントリーする企業の数はここ数年減ってきており、逆に人事担当者側が苦労させられていると言って良いでしょう。

しかし今後求人数が少なくなり買い手市場になった場合、情報をキャッチできず出遅れた学生の負担が増していく可能性は高いと思われます。

少なくとも6000社以上もの企業がこぞって「インターン」を企画している現在の就活市場は異常だと思われます。

もちろん中には本来の意図でインターンを企画されている企業も存在するでしょうし、学生がインターンシップに参加できる機会が増えること自体は良い事だと考えています。

しかし今の状況を見るに、残念ながら「採用支援会社の煽りに乗ってしまった」という企業も多いはずです。

インターンシップの機会が増える事と、「事実上の就職活動」にインターンのラベルを貼り変える事は全く意味・意義が異なります。

事実上の採用広報を目的としながらそれらを「インターン」と銘打つことは正しいことなのか、疑問を感じずにはいられません。

就活SWOT代表

慶應義塾大学在学中、世界初の就活SNSの代表に就任。国内最大の就活SNSへと成長させた後に大学を卒業し、エグゼクティブサーチを行う人材ベンチャーに入社。役員・事業責任者などの幹部人材の採用支援に携わる。2009年にエイリストを設立し「自分の頭で考え、行動する人材を増やす事」を命題として就職情報サイト「就活SWOT」を開設。

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