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宮崎県・熊本県内の河川増水が始まった 夜間は2階以上へ垂直避難(23:20タイトル変更)

斎藤秀俊水難学者/工学者 長岡技術科学大学大学院教授
宮崎県内五十鈴川の氾濫注意情報(Yahoo!天気・災害より抜粋)

 16時現在で、宮崎県内の五十鈴川が水防団待機水位を超えました。まだ水位情報の出ていない河川でも急上昇中で、よくみると氾濫注意水位まですぐそこまでという状況です。降り続く雨の中ですが、河川流域を中心に避難をしましょう。

 17時現在、五十鈴川、一ツ瀬川ともに避難判断水位超過です。(17時加筆)

 23:20現在 熊本県球磨川 多良木にて氾濫注意水位を超過しました。すでに暗いので、外への避難は諦めて、自宅等2階以上への垂直避難を行いましょう。(23:20加筆)

 その際には、愛車を使って避難も可能です。徒歩でいける自宅のすぐに避難所があれば、登る一方で、橋を渡らなくて済むルートを選びましょう。その際には、運動靴、リュックサック、帽子、杖のかわりになる棒、目立つ雨合羽の格好で避難します。

Yahoo!天気・災害ですぐチェック

 例えば、宮崎県内の五十鈴川の水位情報をご覧ください。リアルタイムで川の水位情報を知ることができます。このほか、耳川や小丸川の水位も上がっていることがわかります。ご自分のお住いの河川の水位情報をしっかりとご確認ください。

河川増水の速さ

 図1は9月4日に新潟県湯沢町の魚野川上流で、洪水で流された場合のライフジャケットの有効性を検証していた時の写真です。上は午後2時頃の川の様子です。いつもよりも水量が少なく、有効性を検証するには少し迫力が足りないかな、という状態でした。ところがこの後、この魚野川の上流を中心に夕立が降りました。降雨の時間は、15時頃を中心に1時間から2時間でした。すると下の写真は午後6時の様子です。様相が一変していました。激流となり、大量の濁り水が渓流に押し寄せました。当然、安全な場所から撮影を行っています。

図1(a) 新潟県魚野川上流域9月4日午後2時頃の様子(筆者撮影)
図1(a) 新潟県魚野川上流域9月4日午後2時頃の様子(筆者撮影)
図1(b) 同9月4日午後6時頃の様子(筆者撮影)
図1(b) 同9月4日午後6時頃の様子(筆者撮影)

 山からいっきに落ちてくる急流河川では、山沿いで大雨が降れば尋常ではない速さで流量が増えます。先日の球磨川流域での洪水の例でもわれわれは痛いほどそれがよくわかりました。降り続く雨の中ですが、避難を早めに開始しましょう。

徒歩ならどういう格好で?

 重要なことは、次の3つです。

1. 緊急浮き具を身に着ける

2. 杖をつき目立つ格好で歩く

3. 緊急通報手段を肌身から離さない

図2にその様子を示します。

図2 徒歩避難の時の格好の一例(筆者撮影)
図2 徒歩避難の時の格好の一例(筆者撮影)

緊急浮き具を身に着ける

 ビニール袋に衣服などを詰めたリュックサックは、水没した時のような緊急時に浮き具になります。1個しかないなら、前方に担ぎます。足元は見づらくなりますが、急な深みに落ち込んでしまった時には、顔を水面から出すような恰好で浮くこと(背浮き)ができます。まずは呼吸を確保して、次に周囲の状況を確認して、もし来た方向に戻れるなら、バタ足などで戻ります。浅くなったら立ち上がります。

 リュックサックが2個あるようであれば、図2のように前方と後方にそれぞれ担ぎます。急な深みに落ち込んでも、立っているような、垂直の姿勢で顔を水面上に出すことができます。呼吸は楽にできますし、周りの状況もよく見えます。両手を使って、落ち着いてゆっくりと来た方向にも戻り、浅くなったら立ち上がります。

 足には底の厚い運動靴を履きます。いざという時には足が浮いて背浮きの姿勢になることができます。長靴はダメです。水が入ると歩きづらくなります。特に黒長靴は水に沈みます。背浮きができず、溺れます。

杖をつき目立ち格好で歩く

 リュックサックがなければ、厚手のジャケットでもかまいません。緊急のライフジャケットになります。白色、黄色、赤色などの生地で、できるだけ派手なジャケットがいいです。緊急時に浮いていると発見されやすくなります。特に天候の悪い時には、白色や黄色がヘリコプターからよくわかります。上空からだと、手を振るよりもこういった色の衣服の方が発見しやすいです。

 帽子は、白色、黄色、赤色などの帽子を選びかぶります。頭を固いものの衝撃から保護すると同時に、上空から見て髪の毛の黒より目立つからです。

 杖は、前方の水底の安全を確認するために使います。前方には蓋のあいたマンホールや側溝などがあり、歩いていて落ち込むかもしれません。プラスチックの洗濯竿など軽めのものにします。万が一、深みにはまったらすぐに手から離し、浮くことに専念します。

緊急通報手段を肌身から離さない

 スマートフォンなどの携帯電話を肌身離さず、首からぶら下げられるようにします。現在のスマートフォンのほとんどは水に浸かってもすぐには故障しません。避難途中に深みにはまったとか、流され始めたとか、トラブルが生じたら、迷いなく119番通報して救助隊を呼んでください。自分が今いる場所がわからなくても、電話の位置情報が消防本部に送られて、消防本部でおおよその場所を特定してくれます。もし通話に出てくれないようであれば、110番警察、それでもつながらなければ、検索して調べて、119番や110番以外の電話番号で、消防や警察に連絡をします。

まとめ

 Yahoo!天気・災害で付近の河川の水位情報を集めてください。危ないと感じたら、とにかく、道路冠水が始まる前に避難をしましょう。河川流域にお住まいの方は、まっさきに避難が必要です。

水難学者/工学者 長岡技術科学大学大学院教授

ういてまて。救助技術がどんなに優れていても、要救助者が浮いて呼吸を確保できなければ水難からの生還は難しい。要救助側の命を守る考え方が「ういてまて」です。浮き輪を使おうが救命胴衣を着装してようが単純な背浮きであろうが、浮いて呼吸を確保し救助を待てた人が水難事故から生還できます。水難学者であると同時に工学者(材料工学)です。水難事故・偽装事件の解析実績多数。風呂から海まで水や雪氷にまつわる事故・事件、津波大雨災害、船舶事故、工学的要素があればなおさらのこのような話題を実験・現場第一主義に徹し提供していきます。オーサー大賞2021受賞。講演会・取材承ります。連絡先 jimu@uitemate.jp

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