Yahoo!ニュース

大型バイク集団暴走で逮捕も… コロナ禍の今こそ「モラル」ある走りを!

佐川健太郎モーターサイクルジャーナリスト
写真はイメージです。(写真:PantherMedia/イメージマート)

サーキットで走る練習のため…は本末転倒

今週、群馬県の赤城山の県道でバイクによる集団暴走をしたとして、運転していた男性5人(27~55歳)が道路交通法違反(共同危険行為等の禁止)の疑いで逮捕された。

警察などの発表によると、昨年10月の午前中に約20分間、赤城山中の県道5kmの区間において大型バイク5台(いずれも1000cc)を連ねて高速で往復し、他人に著しい危険や迷惑を与える集団暴走をした疑いがあるとのこと。容疑について「サーキットで走る練習のため」「爽快感を求めた」「スリルを味わうため」などと話しているという。

この一件、テレビのニュース番組でも取り上げられ実際の映像も流れるなど、バイクやライダーの印象を悪化させるに十分すぎるインパクトがあった。自分も含め多くの一般ライダーが非常に残念な気持ちになったことだろう。

映像をみると、全員がレザースーツに身を包みスーパースポーツと呼ばれる高性能モデルに乗っている。走行シーンは数秒を切り取ったものだが、車間距離を詰めて相当な速度で走っている様子は見て取れる。コーナーでも車線を跨ぐなどの悪質な行為はしていないものの、やはり「常識的ではない」走りをしている。

公道は移動のために皆が利用するものであって、「サーキットの練習を公道でする」という発想は本末転倒もいいところだ。バイクの練習をしたい、上手になりたいのであれば、対向車も制限速度もなく存分に走り込めるサーキットへ行くべきだ。

コロナ禍だからこそ自重すべき

風光明媚な観光道路や峠道などで危険な走りをする「ローリング族」や「走り屋」の存在は今に始まったことではなく、何十年も前から問題になっている。毎年日本の各地で命が失われ、それが原因で二輪通行禁止になった路線も少なくない。

一部の身勝手な行いによって、自分や仲間だけでなく、多くの一般ライダーやドライバーにも大きな迷惑を及ぼしていることを理解してほしい。

ニュース記事のコメントを見ていると、「公道は練習する場所ではない」や「攻めたければサーキットへ」という意見が大半を占める中、一部には「程度の差はあれ、誰だって身に覚えがあるんじゃない?」とか「制限速度を守ってるバイクやクルマなどいるの?」という書き込みも見られ、ライダー心理が透けて見える。

ただ、コロナ禍により医療体制が逼迫する中、暴走行為によってケガ人が出れば、本当に治療が必要な人の命を救えない事態にもなりかねない。そうなれば、社会的な罪はさらに重いはず。

今回の逮捕に至った経緯として、情報を寄せられた県警が動画を撮影するなどして捜査を進めてきたという話もある。その意味では、容疑者逮捕と氏名公開という厳しい対応はこの事態を重く見た「見せしめ」的な強硬手段だったと言えるかもしれない。

「常識的な走り」を心がけたい

以前、取材した白バイ隊員に率直な質問を投げかけたことがある。「制限速度を何キロオーバーしたら取締りますか?」との問いに対し、「交通の流れに乗って常識的に走っていれば、バイクだけ捕まえることはありません」との回答だった。

つまり、バイクでもクルマでも非常識な運転をしていれば、危険行為と見なされ取締りの対象になるということだろう。「モラルある走り」が求められる。そう自分は理解した。

いろいろなことがユルかった時代を懐かしみ、「昔はよかった」と嘆く人もいる。でも、今はタバコのポイ捨ても、セクハラ・パワハラ発言も容認されない時代だ。それは社会が成熟して、皆にとって快適で安全になったということでもある。我が身を振り返りつつ、襟を正していこうと思う。

※原文より筆者自身が加筆修正しています。

出典:Webikeバイクニュース

モーターサイクルジャーナリスト

63年東京生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、RECRUITグループ、販促コンサルタント会社を経て独立。趣味が高じてモータージャーナルの世界へ。編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら、「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。㈱モト・マニアックス代表。「Webikeバイクニュース」編集長。日本交通心理学会員 交通心理士。MFJ認定インストラクター。

佐川健太郎の最近の記事