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交通事故死者数が過去最少に 二輪初の600人切りも課題多し

佐川健太郎モーターサイクルジャーナリスト
画像出典:Webikeニュース

1993年の3割にまで減少

警察庁から発表があり、令和元年中の30日以内交通事故死者数は3,920人で、前年に比べ246人減少(前年比ー5.9%)し、初めて4000人を切った。

統計を開始した1993年の13,272人から3割にまで減少したことになる。二輪に関しても前年から15.7%減の589人となり初めて600人を切るなど喜ばしい結果となっている。要因としては、ABSや自動ブレーキなど自動車の安全性能の向上の他、救急医療の進歩や交通環境の変化、取締りや罰則強化なども影響していると思われる。

原付の交通マナーの悪さが目に余る

一方で最近気になるのがバイクの交通マナーの悪さ。特に通勤ラッシュ時の原付スクーターの乱暴な走りは目に余るものがある。渋滞しているクルマの脇をもの凄い勢いですり抜けていくし、時には停止しているクルマの前後を横切ってクランクのように抜けていく者もいる。

乗り方や服装がだらしない人も目立つ。両ヒザを広げて爪先もフロアから大きくはみ出してみたり、どこかに引っ掛けそうで見ているほうが怖いし、そういう乗り方をしている人に限って玩具のようなヘルメットだったり、と服装にもまるで安全意識が感じられなかったりする。原付のマナー向上はひとつの課題と言えよう。

最近も帰宅時間に都内の幹線道路をバイクで走っていたら、いきなり渋滞が始まり、遠くに目を凝らすとパトカーや救急車の赤橙が……。近づいてみると125ccスクーターが路上に転倒したまま、ライダーと見られる中年男性が路肩で顏をしかめたまま動けない状態。すでに救急隊の手当を受けていたが、相手側の乗用車の後部も車体が凹んでバンパーが壊れるなど大きく破損していたことから、かなりの速度差で追突したのだろう。原因は分からないが、誰もがせわしない危険な時間帯だったように思う。

通勤ラッシュ時に事故が集中

実際に通勤時のバイク事故が多いことはデータが証明している。

2019年における交通事故死者数の中で二輪車が占める割合は、全国では15.9%と四輪(33.7%)の約半分ではあるが、二輪車の保有台数(約1000万台で四輪の約7分の1)であることを考えるとやはり多いと言える。これが東京都内になると構成比はさらに21.1%に高まり、四輪(10.5%)を逆転して2倍のスコアまで跳ねあがる。

そして、「都内の二輪車乗車中の交通死亡事故」では5割が出勤・退勤時に集中しているのが特徴で、特に午前6時~8時に事故が多発していることからも、通勤ラッシュ時が危険な時間帯であることが分かる。また、「発生時期」で見ると過去5年平均では4月および7月~8月に多くなっていて、暖かくなってバイク通勤がしやすくなるこれからの季節が要注意であることを示唆している。

以上のことから、バイクは通勤・通学にも便利な乗り物ではあるが、東京のような大都市での死亡事故比率は四輪に比べて大幅に高くなる傾向があること。またそれが通勤時に集中していることが浮かび上がってくる。

前述のように交通事故とそれにともなう死者数も毎年減ってきてはいるが、地域によって事故の性質も異なることを知っておく必要がありそうだ。シーズンインとともにバイクに乗る機会が増えると思うが、今一度気を引き締めていこうではないか。

※原文より筆者自身が加筆修正しています。

出典:Webikeバイクニュース

モーターサイクルジャーナリスト

63年東京生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、RECRUITグループ、販促コンサルタント会社を経て独立。趣味が高じてモータージャーナルの世界へ。編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら、「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。㈱モト・マニアックス代表。「Webikeバイクニュース」編集長。日本交通心理学会員 交通心理士。MFJ認定インストラクター。

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