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ケニー佐川が勝手に決める「2019モーターサイクル トップ10(1位~5位)」

佐川健太郎モーターサイクルジャーナリスト
写真出典:Webikeバイクニュース 以下同

2019年を締めくくる意味で毎年恒例のトップテンを発表します。本年度に発売されたニューモデルについて、Webikeニュース編集長のケニー佐川が独断で勝手にランキング。話題性や注目度、社会に与えたインパクトやユーザビリティなどを総合的に評価したものですが、あくまでも感覚的なものですので、楽しみながらご参考にしていただければ幸いです。

なお今回は国内・海外を分けずトータル順位とさせていただきました。また、発売前のモデルは除外しています。いよいよ1位~5位の発表です。

第1位「HONDA CBR650R」

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最大公約数のライダーが安心してスポーツを楽しめる

ホンダの中量級フルカウルスポーツ「CBR650F」の新型が「CBR650R」を襲名して登場。ホンダの中で「F」は日常使いもできる万能型を表すコードであるのに対し「R」はよりスポーツ性能重視という位置づけ。その名のとおり、CBR伝統の水冷直4エンジンは先代から5ps増の95psに、車重は同じく6kgダウンの207kgへと減量しつつマス集中により軽快さもアップ。足まわりも倒立フォークにラジアル4Pブレーキを採用、ライポジもやや前傾度を増すなど全方位的にパフォーマンスを強化しつつスポーツ純度を高めた感じだ。

直4エンジンの胸のすくような伸び切り感と高周波サウンド、緻密な回転フィールはホンダならでは。それでいて、程よいパワーは回しても怖くなくレスポンスも穏やか、トラコンも付く。ハンドリングは鋭すぎずフロントのねっちりした接地感がライダーに常に安心感を与えてくれるなど、最大公約数のライダーがスポーツを楽しめるよう作り込まれている。おそらくそこがホンダの狙いだろう。スタイルやディテールの品質も申し分なく、およそ100馬力100万円というコスパも見事。これぞメイド・イン・ジャパンを世界に誇れるバイクと思う。ネイキッド版の「CB650R」も同じく評価したいが、よりスポーティな乗り味や長距離での快適性などを含めフルカウル版を推したい。

第2位「TRIUMPH STREET TRIPLE RS」

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Moto2血統書付きのシリーズ最高傑作

2019シーズンからMoto2クラスへエンジンを供給するトライアンフが、まさにそのエンジンを使って作り上げたロードスターモデル。その魅力の核心はやはりMoto2ベースの水冷3気筒765ccユニットそのものだ。従来型がベースながら、究極の性能と耐久性が求められる最高峰レースでとことん鍛え上げられている。マス集中した3気筒エンジンと引き締まったボディ、しなやかなフレームとしっとりと動く“猫足”のような前後サスが作り出すピュアで上質な走りの世界はまさにファンタスティック! 3気筒独特のフラットトルクはさらに厚みを増して回転フィールも滑らかに。スロットルも右手に忠実で扱いやすいためコーナリング姿勢も安定させやすく、オーバーナナハンとは思えない俊敏さでコーナーを切り取っていく。そして、どこか物憂げなトリプルサウンドが心に染み入る。とにかく攻めるほどに楽しく、アップハンで軽いので公道でも十分乗りやすい。年末にかけてRSで何回かサーキットを走る機会があったが、その場にいたジャーナリスト達も一様に高評価で、同じようなコメントを残していた。シリーズ最高傑作にして、Moto2の血統書付きだ。

第3位「SUZUKI KATANA」

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骨太で豪快な走りが楽しい現代の名刀

新型カタナのベースは現行スポーツネイキッド「GSX-S1000」であり、そのエンジンにはあえてちょっと昔のGSX-R1000(通称K5)系の水冷直4ユニットが採用されている。その理由はロングストローク設定で低中速寄りのトルクフルな出力特性が見込めるためだ。とはいえ、最高出力も148psとクラス最強レベル。車体と足まわりもスーパースポーツ譲りで電制も3モードのトラコンの他、ワンプッシュで始動が可能な「スズキイージースタートシステム」や極低速時にエンストしにくい「ローRPMアシスト」などスズキの良心を感じさせるお助け機能も搭載されている。

乗り味は骨太。スロットルをひとたび開ければ怒涛の加速と魂を震わせる野獣のような咆哮に包まれる。実に男らしいバイクだと思う。ワイドなアップハンが奏功してハンドル入力による軽快な切り返しも可能で、80年代スーパーバイク乗りのような豪快でダイナミックな走りが楽しめる。ハウリングのように共鳴する吸気音も耳に心地よい。街乗りすれば都会に映えるし、サーキットでも腕があればSSと張り合える走りも可能。KATANAではあるが昔のカタナとは別のバイクとして素直にカッコいい。

第4位「KTM 790ADVENTURE R」

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常識を覆した純度100%の冒険マシン

世界で最も過酷なオフロードレースと言われるダカールラリーで18年間負け知らずのラリー界の帝王、KTMが新たに投入したミドルクラスのリアル冒険マシンが「790アドベンチャー」である。スポーツネイキッド「790DUKE」に搭載されたKTM初の水冷並列2気筒、通称LC8cエンジンをクロモリ製フレームに搭載し、WP製前後サスと最新の電子デバイスで武装した本気度100%のアドベンチャーモデルだ。

75度位相クランクによるVツイン的な鼓動感と2軸バランサーによる滑らかさが特徴で、オンもオフも同じように走ってしまう凄いヤツ。電制もフル装備で3種類のライドモードやアップ&ダウンシフターに加え、コーナリング対応のトラコン&ABSを搭載するなど、どんな道でもどんと来い。特にオフロード向けに足まわりが強化された「R」仕様には、ダート走行に特化した最強の「ラリーモード」が搭載されるなどガチぶりが光る。もちろんそのレシピにはダカールラリーの知見が注がれているわけだ。

と聞くと、かなりヤバそうな感じがするが実は車体がコンパクトで軽く足着きも比較的良いなど、巨大マシン揃いのこのセグメントにあっては格段に扱いやすいことが最大のメリットだ。アドベンチャーの常識を覆した功績は大きい。

第5位「HARLEY DAVIDSON LiveWire」

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初の電動スポーツバイクにしてこの完成度

ハーレー初の電動スポーツバイク「LiveWire」がいよいよ市販モデルとしてデビューした。創業以来100年以上もVツイン一筋で伝統を守り続けてきたあのハーレーが!? とそれだけでも大トピックだが、さらに驚いたのは完成度の高さだ。

米国で先行発売された(日本では2020年以降予定)量産市販モデルにいち早く試乗する機会を得たが、0→100km/h加速が3.0秒という大型スポーツモデル並みの加速力もさることながら、超電導カタパルトで射出されるような電動モーター特有のトルク特性は今までに体験したことがない新鮮な感覚だった。一方でハーレーらしい低シートとスリムな車体で足着きも良く、ライポジも楽で小回りが利くなど、市街地での移動にもストレスがなく、新幹線のように静かでスムーズな乗り味はエンジン車にはない不思議な安らぎが感じられた。

アールデコ調を思わせるネオレトロなデザインや巨大なバッテリーと電動モーターに前後輪をくっつけただけのようなシンプルな構造など見た目のインパクトも最大級。航続距離と充電インフラ整備などの課題は残るが、映画で見た未来がすぐそこまで来ていることをリアルに感じた。最も古典的と思われたブランドが実はイノベーターだったという意外性も含めてランクイン。

※原文より筆者自身が加筆修正しています。

出典:Webikeバイクニュース

モーターサイクルジャーナリスト

63年東京生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、RECRUITグループ、販促コンサルタント会社を経て独立。趣味が高じてモータージャーナルの世界へ。編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら、「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。㈱モト・マニアックス代表。「Webikeバイクニュース」編集長。日本交通心理学会員 交通心理士。MFJ認定インストラクター。

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