Yahoo!ニュース

「ヒザ擦り」しやすいバイク!ナンバーワンは意外にもアレだった

佐川健太郎モーターサイクルジャーナリスト
写真出典:Webikeバイクニュース ライダー/筆者

ライダーの永遠の憧れ、ヒザ擦り…。といっては大げさかもしれませんが、MotoGPレーサーのようにカッコいいフォームでヒザを擦りながらコーナリングしたいと思ったこと、バイク乗りなら誰でも一度はあるのではないでしょうか。

高性能マシンでいきなりはNG

先日もライディングスクールで、ある参加者の方から「一番ヒザ擦りしやすいバイクは何ですか?」というご質問がありました。その方は社会人になってから免許を取り、これからサーキット走行を楽しみたいのだとか。ただ、自分のバイク(スーパースポーツ)でいきなりヒザ擦りにトライするのは難しいし危険だと思っているとのこと。練習用としておすすめのバイクがあれば知りたいということでした。

極めて正しい考え方だと思います。どんなスポーツでも、いきなりプロ用の道具で練習すれば失敗してケガをしてしまう。それと同じでレーシングマシンに匹敵するよう高性能なバイクで、いきなりサーキットでヒザ擦りしようというのは無謀以外の何物でもありません。そこでアドバイスさせていただいたのが次の3つのことです。

まずミニモトで練習する

ひとつは「小さなバイク」で練習すること。50ccから125ccクラスのいわゆるミニモトで、しかも12インチの小径ホイールが最適でしょう。具体的な車種としては「エイプ」、「グロム」、「KSR」、「Z125PRO」など。理由は単純で、軽くてコンパクトでパワーが低いのでまず扱いが容易。そして最大のポイントは、12インチはシートが低いこと。バンクさせたときに恐怖感が少なく、実際に路面との距離も近くなります。何よりも転んでも人もマシンもダメージが少なく、財布にも優しいことが挙げられます。

ミニモトは4輪で言えばゴーカートのようなもので、「DE耐」や「レン耐」など最近ではこのクラスによるイベントレースが大人気。サーキットは週末ともなると大人のサンデーレーサーで大変な賑わいです。ちなみに小排気量でもスクーターはハングオフ(腰をイン側にずらしたフォーム)したときにホールドするための燃料タンクがないのでヒザ擦り練習マシンとしては逆に難しいです。

正しいフォームを身につける

2つめは「正しいフォーム」をマスターすること。これもどんなスポーツでも共通ですが、最初に正しいフォーム(武道なら「カタ」)を習得しないことには、どんなに練習しても我流になってしまいます。それでも抜群の才能を発揮する個性派ライダーもときにはいますが、長い目でみればリスクを負ったり伸び悩んだりと損なことが多いかと。

ヒザ擦りもまったく同じで、見よう見まねで雰囲気だけ真似たり、気合と根性でいたずらに車体をバンクさせても必ず失敗してしまいます。これはミニモトでも例外ではなく、ナメてかかると大ケガの元。フォームというのは体の使い方、動かし方の作法なので、これを最初にきちんと習得することでバイクの操り方も分かってくるというメリットにもつながります。その意味ではやはりスクールや実績のあるコーチについて学ぶのが早道と言えるでしょう。

ヒザ擦りの意義を知る

ライダー/筆者
ライダー/筆者

3つめは「ヒザ擦りの意義」を知ってほしいこと。何のためにヒザを擦るのか、擦りたいのか……。ここでは語り尽くせないので詳しくは別の機会にしたいのですが、ひと口に言えば「安全にスポーツライディングを楽しむため」だと思います。

コーナリング中にヒザを路面に当てることでバイクが今どんな状態で走っているかを把握しやすくなり(単純にバンク角だけではない)、バイクとの一体感が生まれ、タイヤやサスペンションをきっちり使って操っている感覚をより鮮明に受け取ることができるようになります。ライディングをスポーツとしてより高い次元で楽しめるようになると言ってもいいでしょう。これは速く走ることと必ずしもイコールではありませんが、安心してスムーズな走りを再現できるようになることで結果的に速さも後から付いてくるはずです。ただし、ヒザ擦りはスポーツなので、トライすべき場所は当然サーキットなどの専用コースに限られますし、もちろん一般公道でやることは断じておすすめできません。

以上3つのポイントですが、本来ならば逆の順番であることはお分かりですよね。

それで結論は!?

だいぶ引っ張ってしまいましたが、ヒザ擦りしやすさナンバーワンバイクは何かというと、それはずばりホンダの「エイプ100」です。

画像

▲参考画像:ホンダ「エイプ100」

ミニモトの中でもとびきり扱いやすい低速トルク型の出力特性と低いシート高。転んでも転んでも壊れない頑丈な車体とエンジン(笑)。アップハンドル&フラットシートでライポジ的にもゆとりがあり、どんな体格の人にもフィットします。

エイプ50も悪くないですが、ある程度パワーがあったほうがバンク角をコントロールしやすいメリットがあります。これまで古今東西、新旧大小あらゆるバイクでヒザ擦りしてきた自負がありますが、その経験からの結論です。

ということで、すでに絶版車なのが残念ですが、中古車もまだ豊富にあるようなので練習用マシンをお探しの方にはおすすめです。繰り返しになりますが、ヒザ擦りはくれぐれも安全なクローズドコースでお願いしますね!

出典:Webikeバイクニュース

モーターサイクルジャーナリスト

63年東京生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、RECRUITグループ、販促コンサルタント会社を経て独立。趣味が高じてモータージャーナルの世界へ。編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら、「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。㈱モト・マニアックス代表。「Webikeバイクニュース」編集長。日本交通心理学会員 交通心理士。MFJ認定インストラクター。

佐川健太郎の最近の記事