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東京モーターサイクルショー思考探索その1 CB1000Rに見る「シリーズ化」の狙いとは!?

佐川健太郎モーターサイクルジャーナリスト
HONDA CB1000R

先週の大阪に引き続き、今週末には東京でもモーターサイクルショーが開催される。会場となる東京ビッグサイトではきっとニューモデルが百花繚乱に咲き乱れることだろう。そこで、各メーカーの出展内容から最近のバイク業界のトレンドを読み解いてみたいと思う。

今年の東京モーターサイクルショーのテーマは「まるごとバイクざんまい!二輪祭2018」ということで、HPをリニューアルしたりSNSを使った情報発信やコミュニケーションの活性化を図るなど時代にマッチした新たな取り組みも行っている。

一方で出展モデルを見渡すと、既に発売がアナウンスされたモデルが中心で、ワールドプレミアのような大物の話題はあまり聞かず、全体としては比較的おとなしめの印象だ。見方を変えれば、ユーザーにとっては地に足が着いた現実感のある見本市ということで、じっくり品定めができるチャンスとも言えるだろう。

そんな中、自分が感じている最近のモーターサイクルの潮流を何回かに分けてキーワード的に思考したいと思う。今回のテーマは「シリーズ化」である。

原二からリッタークラスまでを同じスタイルで統一

今回のショーの目玉のひとつでもあるホンダの「CB1000R」は、新世代CBシリーズとして新販売チャネルであるHonda Dreamから発売される大型ネイキッドロードスポーツである。

CBR1000RR系の高性能な水冷並列4気筒1000ccエンジンを搭載し、軽量かつコンパクトな車体による上質な走りと操る楽しみを実現するなど、大人のライダーをターゲットとしたスポーツバイクとしての普遍的な魅力をアピールしている。さらに国内投入が始まっている250と125に加え海外仕様の300と150も含めると、異なる排気量帯に5つのラインナップを一気に揃えることになる。原二からリッタークラスまでを縦断する大胆なシリーズ戦略は今までになかったわけではないが、ポイントはそのすべてがほぼ同じスタイリングと装備で統一されていることだ。

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▲CB250R

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▲CB125R

ちなみに他メーカーでもヤマハの「MT」シリーズやスズキの「Vストローム」、カワサキの「ニンジャ&Z」などシリーズ化に注力している例が目立っている。海外ブランドでもBMWと言えばアドベンチャーの雄「GS」、KTMと聞けばオレンジカラーと過激さがウリの「DUKE」など、シリーズ展開は重要なマーケティング要素となっている。

「シリーズ化」の狙いはブランドイメージの確立か!?

シリーズ化の狙いはずばりブランディングだ。いろいろな製品が大量に出回る現代では、名前を聞いただけで誰でも「あのバイクね!」とピンとくる製品イメージを確立することが大事。そこに「性能や品質が高い」とか「高級感があってカッコいい」などのキーワードが一緒に想起されるようになれば、本物志向のユーザーは多少高いお金を払ってもそのモデルを求めるようになる。

あとは個人の経験やレベル、使える予算や所持している免許などの個別ニーズに応えるだけのラインナップをシリーズとして揃えておけば、一定の志向を持ったユーザー層をそのブランドに囲い込むことができるわけだ。

もちろん、メーカー側としても部品やデザインの共有化によるコストメリットも当然あるわけで、最近でいうとエンジン以外のほぼ全てのプラットフォームを共有化したニンジャ250と400などはその好例だ。

一方でユーザーにしてみれば、ブランドは所有欲を満たし、どこへでも乗っていける安心感をもたらすものであり、一度ファンになると愛着を持って乗り続けたいと思うようになる。それがブランドロイヤリティ(帰属意識)の確立へとつながっていくことは、腕時計やクルマなどを見れば分かることだ。

ユーザーとの直接接点である販売店の形態も最近大きく変わろうとしているが、それもブランド化と密接に関係している。そんな目をもって今回の東京モーターサイクルショーを探索してみると、また新たな発見があって面白いかもしれない。週末はぜひ会場へ足を運んでもらえたらと思う。

出典:Webikeバイクニュース

モーターサイクルジャーナリスト

63年東京生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、RECRUITグループ、販促コンサルタント会社を経て独立。趣味が高じてモータージャーナルの世界へ。編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら、「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。㈱モト・マニアックス代表。「Webikeバイクニュース」編集長。日本交通心理学会員 交通心理士。MFJ認定インストラクター。

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