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足着きが良いだけじゃない「新型ストリートトリプルR Low」試乗レポート【トライアンフ】

佐川健太郎モーターサイクルジャーナリスト
トライアンフ 新型「ストリートトリプルR Low」

ストリートトリプルはデイトナ675ベースの強力な3気筒エンジンを搭載するスポーツネイキッドである。2017モデルは排気量を拡大し、電子制御を投入した完全新設計のニューモデルに進化。「S」、「R」、「RS」の3バージョンに加え、今回ローシート仕様の「R Low」が国内デビューしたので早速チェックしてみたい。

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「R」ベースのローダウン仕様

新型ストリートトリプルには3グレードが設定されている。「RS」がサーキット前提の最強バージョン、「R」がワインディング向けのスポーツ仕様、「S」が幅広く使えるオールラウンダーの位置付けだ。そして、今回新たにRのシート高を45mm下げた「R Low」が国内投入された。

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90cc増の新型エンジンを搭載

新型エンジンはデイトナ675系の水冷並列3気筒DOHC4バルブをベースに排気量を90ccアップした765ccで、内部パーツの見直しなどにより「R Low」の最高出力も従来比11%強の118psに高められている。また、新設計のスリップアシストクラッチの採用や新設計アルミダイキャスト製フレームの投入などによりハンドリングも磨かれ、車重も166kgに軽量化された。電子制御の進化も著しい。ライド・バイ・ワイヤによる4種類のライディングモードを搭載し、スロットルレスポンスとABS、トラコンなどの各レベルを自動的に最適化してくれる他、TFTフルカラーディスプレイに表示された各種情報を手元のジョイスティックで簡単に操作できるシステムになっている。

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▲デイトナ675ベースに排気量を765ccに拡大した並列3気筒エンジンは新設計部品の大量投入によりピークパワーは従来比11.3%アップの118ps/12,000rpm、最大トルクも13%高められている。

ローダウン化に合わせてサスペンションも専用設定に

さて、「R」と「R Low」は共にショーワ製前後サスペンションを採用しているのだが、異なるのはストローク長だ。「R Low」は車高を下げるため前後のスプリングを変更してユニット全長を短縮しつつ、リヤ側に関しては伸び側調整機構も省略することで車高を下げている。加えてシートを若干下げることでトータル45mmという大幅なローダウンを実現したのだ。

ローダウンというと、リアショックのリンク自体を変更して車高を下げる方法が一般的だが、手軽ではあるがハンドリングに悪影響を与えてしまうことも少なくない。これに対して「R Low」は前後サスそのものを作り直して最適化しているので完成度が高い。

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▲フロントフォークはショーワ製φ41mmBPF(ビッグピストン・フロント・フォーク)だが、スプリング径・有効巻き数を約20%減少させてホイールトラベル比で20mm少ない95mmに設定。ブレーキはブレンボ製4ピストンラジアルモノブロックキャリパーでもちろんABS標準装備。

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▲新設計ガルウイング型スイングアームに、ショーワ製モノショックを装備。リンクはそのままスプリング有効巻き数を約1回転減少、伸び側減衰調整を省略することでユニット全長を短縮。ホイールトラベル比で36mm少ない98mmに設定。

跨ってみると、スリムな車体と相まって足着き性は抜群に良い。たぶん、平均的な日本人サイズであれば問題なく両足が着くはずだ。車体も軽いので女性ライダーでも安心して取り回しもできると思う。

ハンドリングも自然だ。車体トータルでバランスを調整しているため、基本的には「RS」と同じようなフィーリングで走ることができる。キャスター角やトレール量などのディメンションがより安定性重視の方向性になっているためか、乗り味は穏やかだ。

ただし、「RS」と乗り比べてしまうと、フロントで20mm、リヤで30mm以上少ないホイールトラベルが故に路面追従性という点で不利は否めない。それは乗り心地にも言えることだが、足着き性の向上とはトレードオフの関係にあるからだ。その意味では今回のサーキット走行でしかもウェット路面という条件は酷だったかも。逆に言えば、サーキット走行用にセッティングされた「RS」は、より高性能なサスペンションやブレーキ性能の優位性もあってさすがにここでは走りやすかった。

ともあれ、新型スピードトリプルはよりパワフルに軽量化され、電子制御も進化するなど走りは確実にアップグレードされていた。その中で「R Low」はパフォーマンスをより身近に味わえるモデルとして、幅広いライダーにおすすめできる。

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▲伝統のツインヘッドライトは角のとれた逆三角形にリニューアル。レンズ内側部分にはLEDポジションランプも新設された。

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▲新型のシートはワンピース型から前後独立タイプへと変更。クッションは10mm削られ、トータルで45mm低いシート高を実現。

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▲ウインカースイッチを挟んで上が「モード」切り換えスイッチで下が「5方向ジョイスティック」。4種類のライディングモードを簡単に切り替えられる。

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▲見ているだけで美しい角度調整式5インチTFTディスプレイ。スタイルと呼ばれる3種類のレイアウトがモードによって切り替わる。

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出典:モーターファンWEB

■諸元一覧■

トライアンフ「ストリートトリプル R LOW 」 1,250,000円

●エンジン、トランスミッション

・タイプ:水冷DOHC12バルブ並列3気筒

・排気量:765cc

・ボア/ストローク:78mm / 53.4mm

・圧縮:12.65:1

・最高出力 118PS / 116bhp (87kW) @ 12000rpm

・最大トルク 77Nm @ 9400rpm

・システム マルチポイントシーケンシャル電子燃料噴射SAI付、電子制御スロットル

・エグゾーストシステム ステンレス製3-INTO-1エキゾーストシステム、ロータイプステンレス製シングルサイレンサー

・駆動方式 Oリングチェーン

・湿式多板、スリップアシストクラッチ

・トランスミッション 6-speed

●シャシー

・フレーム フロント:アルミニウムビームツインスパー、リヤ:2ピース高圧成型ダイキャスト

・スイングアーム:両持ち式、鋳造アルミニウム合金

・フロントホイール:3.5インチ x 17インチ、鋳造

・リヤホイール:5.5インチ x 17インチ、鋳造

・フロントタイヤ:120/70ZR17

・リヤタイヤ:180/55ZR17

・フロントサスペンション:Showa製41 mm径倒立式セパレートファンクション・フルアジャスタブル・ビッグピストンフォーク(SF-BPF)、フロントホイールトラベル95 mm。コンプレッションダンピング、リバウンドダンピング、プリロード調整可能。

・リアブレーキ:220 mm径固定式シングルディスク、Brembo製シングルピストンスライディングキャリパー、切り替え式ABS

・インストルメントディスプレイとファンクション:フルカラー5インチTFTディスプレイ

●寸法、重量

・ハンドルを含む横幅:735mm

・全高(ミラーを含まない):1060mm

・シート高:780mm

・ホイールベース:1410mm

・キャスターアングル:24.9度

・トレール:105.6mm

・車両重量:166kg

・燃料タンク容量:17.4l

モーターサイクルジャーナリスト

63年東京生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、RECRUITグループ、販促コンサルタント会社を経て独立。趣味が高じてモータージャーナルの世界へ。編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら、「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。㈱モト・マニアックス代表。「Webikeバイクニュース」編集長。日本交通心理学会員 交通心理士。MFJ認定インストラクター。

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