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コーナー進入は「超アウト」からが常識!? 海外で感じたライダーの意識の違いとは

佐川健太郎モーターサイクルジャーナリスト

先頃、海外メーカーの試乗会があり欧州に行ったときのこと。海外のライダーの走り方について思うところがあったので留めたいと思います。

公道試乗会のため、先導ライダー付きでワインディングを走ったのですが、まずとてもライディングが上手でした。まあ、メーカーのテストライダー達が先導を務めるわけですから巧くて当たり前ですが・・・。

速度にメリハリ

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ひと口に言うと、メリハリがあるんですね。良い悪いは別にして、直線で視界が開けた場所では相当飛ばします。往々にして欧州の道路は制限速度も高めで、一般道であっても所によっては100km/h近く出せる道もあります。

一方で市街地は30km/h程度まで落とす必要があり、街の入口では皆きっちり速度を落とします。田舎の街では信号が少なく、人が急に横切ってくることも茶飯事だからでしょう。

強制的に減速させるハンプ

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また、ほとんどの横断歩道がハンプと呼ばれる盛り上がった構造になっていることも要因と思われます。

速度を出したまま通過すると路面からの突き上げで腰が痛くなるからです。これに気付かず進入すると、ハンドルを取られてけっこうドキッとすることもあります。

日本ではここまで盛り上がったハンプはあまり見かけませんね。市街地でのクルマやバイクの暴走を抑制するためには、荒業ですがこれは効果的と思いました。

「超アウト・イン・イン」のライン取り

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もうひとつ驚いたのはライン取りです。右側通行なので、ちょうど日本と逆の感覚で右コーナーはタイトなブラインドになっていることが多く、気を遣います。

そこで彼らが取る戦法は「超アウト」から入るライン取り。コーナーの入口では反対車線まで使って大きくアウト側から進入し、倒し込みつつ自分の車線に戻ってきて、立ち上がりでははみ出しません。極端な「アウト・イン・イン」のようなライン取りなのです。

見ていると、たしかにRを緩くできるので曲がりやすく、特にタイトなヘアピンなどでも極端に速度を落とすことなくスムーズに走れるようです。今回に限らず、往々にして欧州などではこうした走り方に出会うことが多いです。

状況に合わせた臨機応変な走り

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ただ、やはり無謀にも見えるので聞いてみたところ、彼らの言い分としては「ブラインドコーナーで対向車を早く発見できるし、ワイドラインのほうが曲がりやすい。もちろん、危険な場所ではやらないよ(笑)」とのことでした。

ちなみに左コーナーではショートカットする場面はほとんど見られませんでした。右側通行の左コーナーでの場合、対向車がセンターラインを割ってくる場合も多く、ただでさえバイクは反対車線側に車体を傾けて曲がっていくので、より危険な感じがするためでしょうか。

さらに観察していると、クルージングしているときは自分の車線内を走っていますが、ペースが上がってくるとこのライン取りになっていくようです。ある意味、状況に合わせた臨機応変な走り方と言えないこともないでしょう。

自分の車線内で完結するライン取りをモットーとする私はやりませんが、念のため・・・。

淀みなく交通を流すという発想

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また、海外を走るといつも思うことですが、欧州でよく見かけるラウンドアバウト(環状交差点)では、他のクルマとの阿吽の呼吸で止まらずに入っていくし、鉄道の踏切も一時停止せずに通過するなど、「いかにして交通をスムーズに流していくか」という発想が根底にある気がします。

国が違えば交通環境やルールも違って当たり前ですが、あらためて交通や安全について考える良い機会になりました。皆さんはどう考えますか。

出典:Webikeバイクニュース

モーターサイクルジャーナリスト

63年東京生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、RECRUITグループ、販促コンサルタント会社を経て独立。趣味が高じてモータージャーナルの世界へ。編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら、「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。㈱モト・マニアックス代表。「Webikeバイクニュース」編集長。日本交通心理学会員 交通心理士。MFJ認定インストラクター。

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