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ホンダ「スーパーカブ」がついに世界生産累計1億台に 生誕60周年を記念した特設サイトは見どころ満載!

佐川健太郎モーターサイクルジャーナリスト
HONDA Super Cub

ホンダの名車、「スーパーカブ」シリーズの世界生産累計台数が2017年中に1億台に達する予定だ。この快挙に加え、2018年が生誕60周年であることを記念した特設サイト「Super Cub Anniversary Portal Site」が公開された。

ここではスーパーカブの記念コラボ企画やコンテンツを随時紹介していく予定で、カブの歴史と魅力や、開催されたカブ関連イベントのレポート、スーパーカブと撮ったユーザー写真をつないでいく「Love Cub Snap」や期間限定公式インスタグラム「スーパーカブ部」など、様々なコンテンツが用意されている。

特におすすめは「誕生編」ストーリー

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その中でも今回注目したのは、スーパーカブの歴史と魅力を紹介した「SUPER CUB STORY」のコンテンツ。現在、Vol.4「国内製品編」までアップされているが、まず読んでいただきたいのはカブのルーツを探る「誕生編」だ。

そこに綴られているのは、創業から10年足らずの若いホンダの夢と情熱、そして「今までにないモノを作ろう」という生みの苦しみの物語だ。

いまの日本人が本当に求めているものを作れ

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高度成長時代を迎えようとする当時の日本はまだまだ貧しく、全国の道路の舗装率はわずか1割という状況の中、欧州視察から帰った創業者の本田宗一郎と後に二代目社長となる専務・藤沢武夫の両氏が侃々諤々の議論の末に達したひとつの結論がスーパーカブの原点だ。

欧米の模倣では駄目だと気付いた2人は開発陣に向けて、「いまの日本人が本当に求めているもの。日本ならではの、ホンダならではの、まったく新しい使い勝手とスタイリングを目指せ!」と言い放つ。

そして、いたずらにエンジンの大型化を目指すのではなく、「手のうちに入るもの」という要件が出されたという。

不可能をやり遂げるホンダ魂が熱い

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その結果、新たに開発される車両には「エンジンは高出力と燃費に優れた4ストローク」、「女性も乗り降りしやすいカタチとサイズ」、「クラッチレバーを必要としないギア操作」、「親しみやすく飽きのこない先進的デザイン」などの具体的なリクエストが出された。

特にエンジンに関しては、従来の同排気量車のなんと4倍の馬力を達成するという法外な目標だった。宗一郎氏自らが開発現場に入ってくるのは日常茶飯事だったが、理想を実現するためには担当、年功を超えて胸襟を開いて徹底的に議論したという。

部署も担当も関係なく、互いに意見を交わし合う中で徐々にアイデアが形になっていく「ワイガヤ」は、今に続くホンダの自由闊達な社風を現すものとして知られる。

閃いたアイデアをその場で黒板にチョークで描き始めたのはいいが、いつしか白熱して黒板からはみ出して床面へ達していったという宗一郎氏らしいエピソードや、『そば屋の出前持ちが片手で運転できる』というコンセプトから生まれた自動遠心クラッチの開発秘話なども綴られ、心躍る楽しい読み物になっている。

ホンダ創業期の躍動感が心を揺さぶる

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本田宗一郎、藤沢武夫といった創業メンバーの躍動感あふれる活躍ぶりは、まるで再現ドラマを見ているように頭の中にその情景が浮かび上がってくるから不思議なものだ。「モノ」を作って売るという「実業」が、それだけ夢に満ちた時代だったのだろう。

途方もなく度量の大きな人々が、天にも届くような高い志を以って起業し、今までにない製品を作り、それが世の中のためになっていく。まだ戦後が残る貧しかった昭和の日本が復興していく原動力として、スーパーカブが果たした役割はけっして小さくはなかったはずだ。

バイクに親しんだベテラン世代だけでなく、まだバイクを体験したことがない若い世代にも是非読んでもらいたい心揺さぶるストーリーになっている。

出典:Webikeバイクニュース

モーターサイクルジャーナリスト

63年東京生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、RECRUITグループ、販促コンサルタント会社を経て独立。趣味が高じてモータージャーナルの世界へ。編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら、「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。㈱モト・マニアックス代表。「Webikeバイクニュース」編集長。日本交通心理学会員 交通心理士。MFJ認定インストラクター。

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