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【ホンダ「CBR250RR」試乗レポート】 圧倒的な走りとグレード感の250ccスーパースポーツ

佐川健太郎モーターサイクルジャーナリスト
HONDA CBR250RR

先日開催されたホンダ「CBR250RR」国内メディア試乗会から、モーターサイクルジャーナリストでWebikeニュース編集長、ケニー佐川のインプレッションを動画付きでお伝えしたい。

「走りの質」や「操る楽しさ」を追及

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CBR250RRは“RR”シリーズ共通のコンセプト「トータルコントロール」を受け継ぎつつ、同クラスとして最も進化した「走りの質」や「操る楽しさ」を追及した250ccスーパースポーツとして開発された。

先端技術が注がれたショートストロークエンジン

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新開発の水冷4ストローク並列2気筒DOHC4バルブエンジンには、ホンダならではの先端技術が注ぎ込まれている。

トップスピードを稼ぐためには高出力化が必須だが、同じ排気量でパワーを稼ぐ最も有効な手段はエンジンの上限回転数を上げることだ。

そのためCBR250RRはショートストローク設定として高回転型のエンジン特性となっている。加えてバルブの大径化(吸気側φ24.5mm/排気側φ21.0mm)による吸排気効率アップやピストン形状の最適化、モリブデンコーティングによるフリクションロス低減などにより、38馬力/12500rpmというクラス最強の動力性能を実現している。

単気筒並みのスリムさを実現

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それだけではない。不快な振動を打ち消す、1軸1次バランサーやイリジウムプラグの採用などの他、パーツの配置変えや省スペース化など、エンジン内部のレイアウトを工夫することで、単気筒並みのスリム化に成功。

さらにダウンドラフト式吸気レイアウトの採用により、吸気効率をアップとともに、エアクリーナーを移設することで、シート高を抑えつつ足着き性の向上も同時に図られている。

軽さと剛性を両立した鋼管トラス構造フレーム

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フレームは一般的なスチール鋼管タイプだが、注目すべきはその構造だ。

CBR250RRには高い剛性を得られるトラス構造が採用され、メインフレームはまるで大排気量スーパースポーツに用いられるツインスパータイプのようなレイアウトになっている。

なお、鋼管トラス構造は強さとしなやかさを併せ持ち、高出力のパワーユニットにも対応しつつ、車体骨格としての美しさも兼ねている。

また、CAE解析により各部パイプ径や接合位置を最適化することで、軽さと剛性を高次元でバランスさせた。

最先端のフルデジタルメーターを装備

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コックピットもネガ液晶のフルデジタルメーターを採用するなど新しさを感じさせるデザインが印象的だ。

特にギヤポジションやラップ計測モードなどを備えるなど、サーキットを意識した装備となっていてグレードの高さを感じる。そして、ライディングモードの表示はCBR250RRならではだ。

「自分が本当に欲しいものを作った」

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CBR250RRの開発は、若手メンバーを中心に進められ、失敗を恐れずチャレンジする姿勢で貫かれた。

「ひと目見ただけで凄さが伝わるものを作りたい」というメッセージが込められたデザインとし、開発メンバー全員が「自分が本当に欲しいか!?」を突き詰めたのだとか。

スペックという定量的なモノサシだけでなく定性的、つまり感覚的なひらめきを大事にしたという。

本田技術研究所の「CBR250RR」開発チーム
本田技術研究所の「CBR250RR」開発チーム

開発は朝霞研究所、組み立てはホンダ熊本工場が担当

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CBR250RRの見た目やスペックはもちろん、実際に乗ってみて強く伝わってきたのは、「圧倒的にトップをとる」という執念のようなものだ。

開発は、主にホンダの朝霞研究所二輪R&Dセンターで行われたと聞く。車体を構成するパーツは主にインドネシアで生産されているが、組み立ては熊本工場で行われている。

通常エンジンなどはアッセンブリーで持ち込まれることが多いが、CBR250RRの場合はパーツひとつひとつから熊本工場の現場で組み上げているそうだ。

走りの質に直結する組み立て精度

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CBR250RRはインドネシアからの大きな期待とニーズに応えるかたちで開発が進められたが、今回の日本仕様はまさに国産モデルといっていいプロダクトである。

最終的には人の手によって組み立てられることを考えると、それを行う職人の技術が工業製品としてのバイクの性能に影響を与えることは容易に想像できる。

それは組み立て精度(公差)の違いとなって表れ、“走りの質”としてライダーに伝わっていく。

独自のセッティングが施された日本仕様

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事実、日本仕様は国内の交通環境に合わせて、サスペンションのバネレートや減衰特性をアレンジしてある。

アジアの荒れた路面に比べて、より平滑で高い速度レンジに合わせたセッティングが施されているのだ。コーナリング時の“踏ん張り感”と言ってもいいだろう。

前後タイヤをラジアルタイプ(GPR-300)に変更している点にも注目したい。

さらに塗装に関しても日本仕様は熊本工場で施工されており、よりハイクオリティな塗装環境で行われているとのこと。微妙な違いではあろうが、そのこだわりがユーザーにとっては嬉しいはずだ。

一体感のあるレーシーなライディングポジション

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見た目は彫りの深いシャープなデザインが印象的。エッジを効かせながらも暴力的ではない上品でエレガントなスタイルだ。

ライディングポジションについては、何も考えずに座っただけでしっくりくる一体感がある。セパレートハンドルがトップブリッジの下側にクランプされるなどレーシーな雰囲気だ。

上体はその分やや前傾気味になるが、車体がスリムなため足着きは良い。

タンクまわりが絞り込まれていて、スポーツライディング時にホールドしやすいのも利点だ。

圧倒的な高回転パワーとワイドなトルク

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CBR250RRの魅力といったら、やはり圧倒的な高回転パワーだろう。

加えてどの回転域からでも加速する豊かなワイドトルクにより、発進からピークエンドまできれいに伸び切る上昇感が持ち味だ。

クラス最軽量レベルのライトウエイトもこれに加勢している。ワイルドな鼓動とエモーショナルな官能が同居した、気持ちのいいサウンドにも魅せられる。

今回新たに導入された「ライド・バイ・ワイヤ」はよく調教されていて、右手に忠実なリニアなレスポンスが印象的。

自分が意図するパワーをそのまま取り出せるイメージだ。ちなみにライド・バイ・ワイヤは新型CBR1000RRに導入されたシステムと基本的に同じものだそうだ。

走りの懐を広げるライディングモード

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3種類のライディングモードについても、それぞれ違いは明確で、基本となる「Sport」はフラットな出力で扱いやすく、攻める走り用の「Sport+」はより俊敏なレスポンスと盛り上がるパワー感が際立っている。サウンドも一層パルス感が増してメリハリが効いた感じだ。

最も穏やかな「Comfort」はスロットルを開けやすく、多少ラフに操作しても電制がカバーしてくれるので神経を遣わず、結果的に疲れない。等々、パフォーマンスだけでなく、ライダーの気分やシチュエーションに応じてキャラクターを使い分けられる懐の深さも大きな魅力だろう。

クラスを超えた足まわり

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足まわりも充実している。

クラス唯一の倒立フォークとアルミ製スイングアームを装備し、高速・高荷重域でのしっかりとしたスタビリティと確保している。

ブレーキは大径φ310mmのペタルタイプシングルディスクを採用。ゴールドに輝くニッシン製のピンスライド式2ピストンキャリパーは高級感もある。

レバータッチはストローク感があって扱いやすく、ABS標準装備なので強くかけたときの安心感も高い。

リヤショックもホンダ十八番のプロリンクサスを装備し、上級モデル並みの優れた乗り心地と路面追従性を発揮している。

極めて高剛性なフレームも含め、きっと10馬力ぐらいパワーを上乗せされてもビクともしないシャーシ性能が与えられているようだ。

正確無比なハンドリング

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こうした足まわりに支えられ、ハンドリングもカチッとしていて曖昧さがない。

軽快なのに安定感があり、高剛性の車体とも相まって大型スポーツモデルにも通ずるグレード感がある。コーナーインでもフロントの接地感が豊富で安心できるフィーリングだ。

何というか、フレームのしなりで逃がすのではなく、追従性の高い前後サスペンションでしなやかな乗り味を出しているようだ。

狙ったところにラインを通していける、正確無比なハンドリングがCBR250RRの持ち味だ。

すべてが別格のスーパークォーター

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ディテールまで作り込まれた隙のないデザインと、そこに散りばめられた高品質なパーツの数々。

ライバルを圧倒するパフォーマンスとその対価として設定された高価なプライスなど、そのすべてが別格と言っても過言ではない。

まさに現代のスーパークォーターと呼ぶにふさわしいモデルだ。

出典:Webikeバイクニュース

モーターサイクルジャーナリスト

63年東京生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、RECRUITグループ、販促コンサルタント会社を経て独立。趣味が高じてモータージャーナルの世界へ。編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら、「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。㈱モト・マニアックス代表。「Webikeバイクニュース」編集長。日本交通心理学会員 交通心理士。MFJ認定インストラクター。

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