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【2輪駐車場問題】その解決は意外と簡単かもしれない

佐川健太郎モーターサイクルジャーナリスト
交差点付近の路上に設置されたバイク専用駐車スペース(バルセロナ市内)

スペインで、ふと再考。日本の交通事情

仕事柄、海外へ出かけると現地の交通事情についてつぶさに観察してしまうクセがある。「日本の常識は世界の非常識」ではないが、国によって、人もルールも様々なので、見ているだけでとても興味深い。

先日も海外試乗会でスペインへ行ったときのこと。空港からバルセロナ市内へ向かっていくに従い交通量も増えていき、その中でバイクが占める割合も多くなってくる。 市街地では125cc~300ccぐらいのスクーターが、幹線道路から路地裏まで元気に走り回っている姿が目立つ。ざっと見て、日本の都市部よりバイクは多いぐらいだ。

無料で利用できる「バイク専用駐車スペース」

それだけの台数がどこに駐車しているのだろうと、ふと疑問に思い目を凝らすと、広めの道路のあちこちにバイクが密集して、停め置いてある場所があることに気づいた。道路の一部を利用してバイク専用駐車スペースが設けられているのだ。車線に対して直角に並べるかたちで、バイク1台分ごとに白線で区画されている。

道路上に設置されたバイク専用駐車スペース(バルセロナ市内)
道路上に設置されたバイク専用駐車スペース(バルセロナ市内)

ライダーたちはどこからともなくやってきては、その区画に整然とバイクを停めて用事を済ませ、戻ってくるとまたどこかへと走り去っていく。誰もが太いチェーンロックを持参しているのは海外ならではの風景だが、施錠する作業を含めてもとても手軽で効率的な駐車システムだと思った。皆があまりに簡単に利用しているので、今まさにスクーターで乗りつけたサラリーマン風の男性に聞いてみたところ、バイクなら誰でも無料で利用できる公共スペースとのこと。特に事前登録などもいらないらしい。

道路脇や歩道にもびっしり駐車。日本との違いは?

市内をよくよく見てみると、道路だけでなく歩道の上にもバイク駐車スペースを設けている場所もある。もちろん、歩行者の妨げになりにくい広い交差点の近くなどだが、けっこう大きなスペースを確保してあったりする。東京に例えるなら、2輪の駐車違反取締りが厳しくなる前の渋谷のような感じで、場所によっては道路脇や歩道にもびっしりバイクが停めてあったりするのだが、違うのはそれが向こうでは合法であること。

路上駐車が法的に認められ、バイクが市民権を得ているからこそ、ライダーたちは堂々と道路や歩道にも好きな時間に停められるし、そういうことが心の余裕にもつながって、きっと整然ときれいにバイクを駐車させることができるのだと思った。

歩道上に設置されたバイク専用駐車スペース(バルセロナ市内)
歩道上に設置されたバイク専用駐車スペース(バルセロナ市内)

駐車環境を改善していくことが、さまざまな2輪問題解決の糸口か

バルセロナも東京も街の混みようは似たり寄ったり。であれば、日本の都市部でもそのまま使えそうなアイデアだと思うのだが。新たに施設を作ったり、法律を大きく変えたりしなくても、ちょっとした機転ですぐ実行できそうではないか。

クルマ用の路上パーキングの一部を流用して白線で区切ればいいだけのことだ。それだけで、元々手軽で便利な乗り物であるバイクの利用者は増えるのではないだろうか。

先日、日本自動車工業会から、「自治体における二輪車駐車場事例集2016」という資料が発表された。日本においても、道路を駐車場所として整備する動きが、自治体を中心に少しずつ増えてきている。今後この資料をもって、自治体へと更なる働きかけをしていくそうだ。

色々な方法や取り組みはあるが「駐車環境の改善」が、2輪に関するいろいろな問題解決の近道のような気がするのだ。

出典:Webikeバイクニュース

モーターサイクルジャーナリスト

63年東京生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、RECRUITグループ、販促コンサルタント会社を経て独立。趣味が高じてモータージャーナルの世界へ。編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら、「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。㈱モト・マニアックス代表。「Webikeバイクニュース」編集長。日本交通心理学会員 交通心理士。MFJ認定インストラクター。

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