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【進む自動運転化に対応できるか】ホンダ、ヤマハ、BMWが二輪用「C-ITS」車載システムの開発で協業

佐川健太郎モーターサイクルジャーナリスト
二輪の安全性向上のため、HONDA、YAMAHA、BMWが協業する

先月、ホンダ、ヤマハ、BMWの3社は、二輪車の安全性を飛躍的に向上させると期待されている「協調型高度道路交通システム(C-ITS)」の強化を図るための共同体制を発表。「Connected Motorcycle Consortium」を創設し、二輪用車載システムの早期実用化を目指す。

今回の発表は10月6日にフランスのボルドーで開催された「ITS世界会議」で発表されたもので、今後は他の二輪車メーカーにも参加を呼びかけていく。提携3社はすでに欧州でのフィールドテストを実施するなど、C-ITS技術の分野で経験を積んでいることもあり、まずは欧州で二輪車向けC-ITS車載機の共同開発を行っていく計画だ。

ITS(Intelligent Transport Systems:高度道路交通システム)とは、人と道路と自動車の間で情報の受発信を行い、道路交通が抱える事故や渋滞、環境対策など、様々な課題を解決するためのシステムのこと。中でも協調型(Cooperative)ITSは先進国を中心に世界で研究が進められている21世紀の交通インフラである。C-ITSが実用化されることで、あらゆる交通手段の安全性や効率が向上し、特に二輪車にとって際立った安全上のメリットをもたらすと期待されている。たとえば、二輪車にとって大きなダメージとなりがちな「右直事故」や「左折巻き込み」、「出会い頭」などの事故を、車両間の相互通信や路上カメラと連動して運転者へ伝えることで、未然にアクシデントを防ぐことが可能になるという。その意味でC-ITSはアクティブセーフティ(予防安全)の一環とも言える。

一般財団法人 日本自動車研究所の平成26年度資料によると、ITSの先駆けとも言えるETC車載器の新規セットアップは2014年1月時点で累計約4500万台と高速道路利用者の約9割が利用している状況である。政府としては次の段階として、2013年発表の「世界最先端IT国家創造宣言」の中で、車・道路・人のタイムリーな情報交換や地図情報、ビッグデータ活用などを統合したITS技術の活用により「世界で最も安全で環境にやさしく経済的な道路交通社会」を実現するとしている。そのために、府省横断ロードマップを策定して高度運転支援技術・自動走行システムの開発と実用化を推進するとしている。

一方、欧州においては統一的なITSサービス展開を目指す計画が2008年に立ち上げられ、域内の交通統合を目指した2011年3月の交通白書において、道路事故死傷者を2020年までに半減、2050年までに死者を限りなくゼロにすること。都市交通における従来燃料車を2030年までに半減し、2050年までに段階的にゼロにすることが謳われている。そのための手段として特にC-ITSにフォーカスした開発が積極的に進められている。

こうした背景の中、同コンソーシアムでは二輪メーカーが主導となり、二輪に特化した安全で実用的なシステムの開発を加速させ、車載器の標準化を進めていく計画と見られる。

四輪の自動運転化もC-ITSの中核となる技術であるが、そこで問題となるのが二輪の運転特性の違いである。二輪は加速性と機動力に優れる反面、安定性とパッシブセーフティ(衝突安全)に劣るなど、四輪とは特性が異なるため同じシステムに組み込むのが難しい。ただ、今後ますます進んでいく自動運転化の中で、二輪だけがその波に乗れないとなると、もはや同じ車線を走れなくなる可能性もある。高度にロボット化するクルマと、今後も人間主体でいくであろうバイクとの接点を見つけていくことも課題になりそうだ。

二輪をC-ITSに組み込むためには、専用のソフトウェアやアルゴリズム開発が必要ということだが、それをまさに日本と欧州を代表する二輪トップメーカーが手を携えて進めていくということで大きな期待が持てる。今後の動向に注目していきたい。

出典:Webikeバイクニュース

モーターサイクルジャーナリスト

63年東京生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、RECRUITグループ、販促コンサルタント会社を経て独立。趣味が高じてモータージャーナルの世界へ。編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら、「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。㈱モト・マニアックス代表。「Webikeバイクニュース」編集長。日本交通心理学会員 交通心理士。MFJ認定インストラクター。

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