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【YAMAHA MT-03 動画+試乗インプレッション】3割増しトルクが生み出す余裕と速さ

佐川健太郎モーターサイクルジャーナリスト
YAMAHA 「MT-03」

水冷直列2気筒エンジンを搭載するMTシリーズの最新作、「MT-25」「MT-03」が登場。先日、伊豆のサイクルスポーツセンターで開催されたプレス向け試乗会から、モーターサイクルジャーナリストのケニー佐川氏がインプレッションをレポートします。

「3割増しトルクが生み出す余裕と速さ。玄人好みのハンドリングも魅力だ」

「MT-25」とともに今回発表された「MT-03」は先にデビューしたフルカウルスポーツモデル、「YZF-R3」とプラットフォームを共有化したスポーツネイキッドモデルである。「MT-25」との違いは大まかに言うとエンジンの排気量のみ。つまり、同じ車体に320ccのエンジンを積んだモデルということになる。

ライポジや車体サイズだけでなく、重量さえも「MT-25」同様ということで、取り回しや跨った感じもまったく同じ。車体に描かれたロゴを見なければ、正直なところ見分けがつかない。細かく見ていけば、ヒールガードにホール加工がなかったり、速度レンジの違いからタイヤにミシュランを採用(MT-25はIRC製)していたりするのだが。

エンジンを始動、スロットルを煽ってみて初めておやっと思う。排気音がやや太いのだ。いざ走り出すと、その違いは明確になる。クラッチのつなぎ始めから、車体を前に進める力を感じる。試乗コースには直角に曲がる市街地のようなレイアウトが設定されていたが、一時停止から試しにアイドリングで発進してみてよく分かった。「MT-25」がつい半クラを使いたくなるシーンでも、「MT-03」は太いトルクに後押しされて自信を持ってクラッチを放していける。実際の公道でもトルクに余裕があるため、交差点の右左折やUターンでは楽なはずだ。スポーツモデルはパワーや運動性能に注目が集まりがちだが、自分で所有してみると案外こうした普段使いが気になったりするもの。その意味で、「MT-03」は排気量のアドバンテージを生かした低中速域での扱いやすさが強みでもあるのだ。

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とはいえ、やはり320ccに上乗せされたパワーも気になるところ。専用コースということで、アクセル全開での加速も試みてみた。最高出力は「MT-25」の36psに対して、「MT-03」は42psということだが、そのスペックを見るまでもなく明らかに全域でパワフルである。コース内の数百メートルの直線では、トップスピードで「MT-25」に対して10km/h近く速い。距離があれば、まだまだ伸びそうな雰囲気である。

パワーも凄いが、「MT-03」の真価はやはりトルクにある。コーナー立ち上がりで、スロットルを開けていくときの後輪が路面を蹴る勢いが違う。いわゆるトラクションの力強さが、リヤショックやシートを通じてひしひしと伝わってくるのだ。なにせ最大トルクは「MT-25」の3割増しである。エンジンブレーキもやや強めにかかるので、スロットルを閉じてフロントを沈めて倒し込み、スロットルを開けてリヤに荷重しながら立ち上がる、という一連の姿勢変化を作りやすい。つまり、よりビッグバイク的な走り方が楽しめるのだ。反面、パワフルで加速が鋭い分、特にウェット路面ではスロットルワークやブレーキングに気を遣う部分もあった。それらを含めて、玄人好みの乗り味とも言えるだろう。

扱いやすさとエキサイティング、「MT-25」「MT-03」ともに両方の良さを持っているが、その比重の違いがそれぞれの個性として際立っている。乗ってみれば、その意味がよく分かるはず。ぜひ機会をみて試乗してみてほしい。

出典:Webikeバイクニュース

モーターサイクルジャーナリスト

63年東京生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、RECRUITグループ、販促コンサルタント会社を経て独立。趣味が高じてモータージャーナルの世界へ。編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら、「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。㈱モト・マニアックス代表。「Webikeバイクニュース」編集長。日本交通心理学会員 交通心理士。MFJ認定インストラクター。

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