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【国産電動バイクの挑戦】テラモーターズが電動3輪でバングラデシュに進出!

佐川健太郎モーターサイクルジャーナリスト
TERRA MOTORS 「R6」

電動バイク国内最大手のテラモーターズがバングラデシュで電動2輪、電動3輪車の販売を本格化する。現地のトップバイクメーカーであるランナー社(Runner group of companies)とのジョイント・ベンチャー設立により、共同で電動車両の製造、販売を行うとしている。

製品組み立ては現地で行い、ランナー社の保有する約400店舗のディーラーにて販売。電動3輪車「R6」からスタートし、秋には電動2輪の新製品を投入する予定だ。販売目標は2015年度中に5000台、2016年度中には10,000台と大きく掲げているが、今回のバングラデシュ市場進出には3つの背景があるとのこと。

ひとつは中国製電動3輪車市場の拡大である。同国では2010年より中国製の電動3輪車が進出。これまで主流だった既存のCNG(天然ガス)3輪車に対して大きなコストメリットが得られるため瞬く間に普及したが、その一方で故障などの頻発により3輪タクシードライバーの間では不満も多く、より高品質なモデルが求められている。

二つめは大気汚染の問題。バングラデシュはWHO調査によるとPM2.5濃度世界ランキングで第4位にランクされる大気汚染により多くの健康被害が出ている模様。人口増加とともに増加し続けるガソリンバイクやCNG3輪車がこの問題に深く関わっているという。

三つめは天然ガスの枯渇と値段上昇。バングラデシュでは天然ガスの需要に供給が追いつかず年平均15%の価格上昇が続いており、また国内のガス田は2020年をピークに減少していくと予想されている。既存のCNG3輪車の燃料価格が数十円値上がりすることも、平均月収1万円以下のバングラデシュでは生活に直接打撃を与えることが予想される。

こうしたバングラデシュの現状への打開策として、CNG3輪車に代わる高品質な電動バイクや電動3輪車へのニーズが高まっており、そこにテラモーターズが進出する理由があるわけだ。

テラモーターズは近年、アジア諸国への進出を加速している。昨年7月にはベトナム法人で世界初のスマホとつながる電動バイクのフラッグシップモデル「A4000i」を生産開始し、同時にフィリピン法人ではアジア開発銀行のファイナンスによる3輪タクシー10万台電動化プロジェクトに参加。今年1月にもカンボジアの正規代理店1号店を首都プノンペンに開設したばかりだ。

平均年齢が若く経済発展も著しい成長するアジアでは今後、本格的なモータゼーションの普及期に差しかかる。その中で慢性化した渋滞と大気汚染に苦しむアジアの都市部では、政府主導の環境対策などによる電動バイクの税制優遇措置なども加わり、ますます電動2輪・3輪への需要が高まっていくことが予想される。

「EVでイノベーションを興し、クリーンで持続可能な社会を創造する」というテラモーターズが掲げる創業理念が国境を超えて浸透し始めている。

出典:Webikeバイクニュース

モーターサイクルジャーナリスト

63年東京生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、RECRUITグループ、販促コンサルタント会社を経て独立。趣味が高じてモータージャーナルの世界へ。編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら、「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。㈱モト・マニアックス代表。「Webikeバイクニュース」編集長。日本交通心理学会員 交通心理士。MFJ認定インストラクター。

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