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本当に必要? 保護者が払った4500万円でPTA組織が学校に体温計を「寄付」

大塚玲子ライター
物的体制を整備する費用は、各校に100~300万の予算がつく見込みです(写真:アフロ)

 この6月からの学校再開に伴い、PTAが消毒液や体温計を購入して、学校に「寄付」する・した、という話がちらほら聞こえてきます。

 筆者は基本的に、現状のPTAが学校に「寄付」を行うことには問題が多いと考えていますが、 正直なところ、いまは少額であれば目をつぶっておきたい気持ちもありました。

 しかし先日、神戸市PTA協議会(自治体ごとにつくられるPTAのネットワーク組織、P連と同じ)で、繰越金(積立金)の4,500万円を使って非接触型体温計を大量購入し、各校に配布しようとしているという話を聞きました。これはさすがにどうなのか。

 そもそもP連にそんな額のお金があるのも驚きですが、じつはそう珍しい話ではありません。都道府県や政令市などの大きなP連は、各市区町村のP連から分担金を徴収しているほか、保険・共済事業を手掛けており、その手数料で毎年かなりの額の収入を得ていることがあります。分担金も手数料も、どちらもお金の出どころは我々一般の保護者会員です。(*1)

 いま、PTA関係者や校長先生たちに、是非知ってほしいことがあります。それは、先週27日に閣議決定された第二次補正予算案(*2)のなかで、学校再開のため、物的体制整備の予算として405億円が計上されていることです。

 学校の種類や規模に応じて、1校あたり100~300万円程度の予算が見込まれており、消毒液や非接触型体温計の購入にはこの予算をあてることが可能です。

「消毒液や非接触型体温計等の保健衛生用品」という用途もはっきりと書かれている
「消毒液や非接触型体温計等の保健衛生用品」という用途もはっきりと書かれている

 文部科学省に確認したところ(5月29日時点)、この件は既に学校設置者(市町村の教育委員会)に案内しているそうですが、まだPTAにまで情報がおりていないのでしょうか。文科省は近日中に詳細を決定のうえ、学校設置者に知らせる予定ということでした。

 念のため、学校への寄付が全部ダメというわけではありません。ただ、これまでに何度も書いてきた通り、加入意思確認を行っていないPTAによる「寄付」は、本当の「寄付」とは言い難いということは、よく考えてもらいたい点です。

 「いいことに使うんだから、いいじゃない」と言いたい気持ちはわかるのですが、みんながみんな余裕のある生活をしているわけではありません。学校への「寄付」にあてられる、そのお金(PTA会費)を払ったなかには、一日の食事回数を減らし、食費を切り詰めている家庭もあるでしょう。

 実際のところ、繰越金を貯めすぎて持て余しているPTAやP連は、非常にたくさんあります。貯め込んだお金を減らすには何かに使わざるを得ませんが、それより先に、今すぐやるべきことは、会費(分担金)や手数料の減額でしょう(*3)。

 そして既に溜まってしまった分は、今年度くらい徴収を休むことで調整してはどうでしょう。

 学校教育にかかるお金は社会全体で負担するものであり、保護者だけで負担する性質のものではありません。この当たり前のことを、みんなの常識にしていきたいものです。

  • *1 P連がほぼ自動的に大きな手数料を得られるこの保険・共済事業の仕組みについて、あるビジネススクールの教授は「これ考えたやつマジ天才」と話していました。なお、手数料や分担金の額は、P連によってだいぶ異なります。分担金は、各PTAの会員家庭の児童生徒数(たまに家庭数)に応じて払われますが、なぜか非会員家庭までカウントするところもあります
  • *2 第二次補正予算案の歳出総額は31兆9114億円で、このうち文部科学省の予算総額は計1617億円(0.5%)です
  • *3 神戸市PTA協議会は、保険・共済事業の手数料を今年度より値下げするということです。なお今回は、非接触型体温計の大量購入を決める経緯が非常に不透明だったため、多数の関係者から反対の声があがっています
ライター

主なテーマは「保護者と学校の関係(PTA等)」と「いろんな形の家族」。著書は『さよなら、理不尽PTA!』『ルポ 定形外家族』『PTAをけっこうラクにたのしくする本』『オトナ婚です、わたしたち』ほか。共著は『子どもの人権をまもるために』など。ひとり親。定形外かぞく(家族のダイバーシティ)代表。ohj@ニフティドットコム

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