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PTAは学校のお手伝いをする団体か? そもそもPTAとは何か

大塚玲子ライター
主目的がなんであれ、参加者の意思が尊重される組織になってほしいものです(写真:アフロ)

 先日、ある場でPTAのことをお話しした際、「PTAは学校のお手伝いをするためのものですよね?」といった質問を受け、ちょっとまごついてしまいました。

 実際のところ、いま現在ほとんどのPTAは「学校のお手伝い」をしているでしょう。地域やPTAによって度合いはまちまちですが、保護者も学校の先生たちも「PTAは学校のお手伝いをする団体だ」と認識していることが多いと思います。

 しかし、実はPTAは、公的には「社会教育関係団体」と考えられています。

 社会教育関係団体とは、社会教育法(第10条)で「公の支配に属しない団体で社会教育に関する事業を行うことを主たる目的とするもの」と定義されており、子ども会や婦人会、PTAなどが該当するといわれています。

 日本PTA全国協議会が平成29年度に作成した「はじめましてPTA」という冊子でも、冒頭に「PTAは社会教育団体です」と見出しが打たれ、「PTAは成人教育の場」「幅広い活動を通して、共に学び、成長していける組織」と説明されています。

 つまりPTAは、学校のお手伝いがメインの団体ではなく、保護者が学び合うことが主な目的の団体だ、と考えられているのです。

 ただ、これも実は、若干根拠がはっきりしないところがあります。

 以前筆者が文部科学省に「PTAが社会教育関係団体である根拠」を問い合わせたところ、「そのように書かれている資料等が存在するわけではない」とのこと。

 ただし「(ほとんどの)PTAは『公の支配に属さない』、且つ『社会教育に関する事業を行うことを主な目的とする』という定義にあてはまると(文科省は)認識しているので、社会教育関係団体だと考えている」ということでした。

 たしかに、おそらくいま大概のPTAは、講演会や講習会などの企画・運営を行っています。その意味では、社会教育的な活動を行っているといえるでしょう。が、それが「主な目的」とまでいえるのか? というと、ちょっと考えてしまいます。

 もしかすると「社会教育が主な目的」とまではいえないPTAもあるのでは? と尋ねたところ、「そういう場合には、そのPTAは社会教育関係団体には該当しないかもしれないですね」とのこと。

 つまり、個々のPTAによって、社会教育関係団体といえるか否かは、異なる可能性があるのです。

*主目的がなんであれ

 そもそものところ、「PTAとはこういう団体だ」という具体的な定義は、実はありません。「Parent(保護者)とTeacher(先生)が協力していて、みんながそれをPTAだと思っていれば、PTA」というのが現実でしょう。

 そんなあいまいなものながら、それでもなぜPTAは「社会教育関係団体」として位置づけられているのでしょうか?

 戦後、日本にPTAが導入されてから約70年の歴史のなかで、さまざまな経緯があったのでしょうが、筆者としては、これは戦前の「学校後援会」に戻らないための歯止めのようなものと受け止めています。

 保護者が学校のサポートをするのはいいことでしょうが、ただしやりすぎてしまうと公教育の意味がなくなってしまいます。そこで、保護者が学校のお手伝いをしすぎないようにするため、そして学校が保護者のお手伝いを当てにしすぎないようにする歯止めとして、PTAは「社会教育関係団体」とされているのかもしれません。

 といった感じで、PTAの主な目的が「学校のお手伝い」なのか、「保護者の学び(社会教育)」なのか、はっきりしないところはあるのですが、筆者としては正直なところ、それはどちらでもいいのです。

 主目的がなんであれ、参加者の意思が尊重される組織、団体になってほしい。それが一番の願いです。

 PTAで学校のお手伝いをしたい人はすればいいし、PTAでみんなで学びたい人は学べばいい。入りたくない人を無理やり入れたり、参加したくない人を、無理に参加させることさえしなければ、どちらをやってもいいのではないかなと、現在のところは考えています。

ライター

主なテーマは「保護者と学校の関係(PTA等)」と「いろんな形の家族」。著書は『さよなら、理不尽PTA!』『ルポ 定形外家族』『PTAをけっこうラクにたのしくする本』『オトナ婚です、わたしたち』ほか。共著は『子どもの人権をまもるために』など。ひとり親。定形外かぞく(家族のダイバーシティ)代表。ohj@ニフティドットコム

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