Yahoo!ニュース

「PTAのTはどうした」問題 学校の先生たちはPTA活動に参加すべきか?

大塚玲子ライター
職場で無償労働を求められたら、みなさんはどう感じるでしょうか(ペイレスイメージズ/アフロ)

 「PTAはペアレンツ(親/保護者)とティーチャー(先生)の会なのに、一般の先生たちが活動していないのは、おかしいんじゃないか? PTAの“T”はどうしたんだよ」

 そんな不満の声を、保護者から聞くことがときどきあります。気持ちはわかるのですが、筆者はこの考え方には賛同しません。

 もともとPTAは任意で加入・活動する団体ですから、T(先生)もP(保護者)と同様に、本人の意思で加入・活動するのが原則です。誰に対しても、加入や活動を強制できるような法的根拠はありません。

 現状のPTAでは、先生たちも自動強制加入で、会費を給与から天引きされることが多いようですが(学校事務、用務、給食スタッフなど職員の方たちも同様です)、それも気の毒ですし、問題があるやり方です。

 保護者にも、教職員にも、加入意思を確認したうえで、入りたい人に入ってもらい、またお金(会費)を払いたい人に払ってもらう必要があります。

 活動についても同様です。

 そもそも先生たちは、毎日朝から晩まで“仕事”として「子どものため」に働いています。近年は、教員の時間外労働の増加や、過重負担が大きな社会問題になっており、そこへさらに、PTAでのタダ働きまで求めるのはどうなのか。

 先生たちも、あくまで本人が自ら望んだ場合にのみ、PTA活動をやってもらうべきでしょう。これ以上先生たちが疲弊して、子どもたちにいい影響があるとは思えません(子育て中の母親・父親たちも同様ですが)。

 校長先生の声かけで、一般の先生たちが休日に開催されるPTAイベントに参加していることもありますが、勤務先でボランティアを求められるのは辛そうです。先生たちにだって自分の生活があるわけで、わが子の学校のPTA活動がある先生もいるでしょう。

 一般の先生たちにとって、校長は直属の上司であり、力関係に圧倒的な差があります。上司から頼まれたタダ働きを断るのは、現実的にとても難しいはずです。それは、もはや「ボランティア(自主的な活動)」とはいえないのでは。

 筆者も勤め人時代、仕事のクライアントからプライベートで仕事の手伝いを頼まれたことがあります。感謝の気持ちもあり引き受けましたが、断れない関係のなかでタダ働きを頼まれたことに対しては、もやっとした気持ちがありました。

 一方では校長先生のほうも、一般の先生たちに「ボランティア」を頼むのを、心苦しく感じている場合があります。

 以前筆者が取材したある校長先生は、「休みの日に、PTAのイベントの手伝いを先生たちにお願いするときは、僕がポケットマネーでご飯代を出してあげたりしているんだよね。校長もね、大変なんですよ……!」とぼやいておいででした。

 ですからやはり、一般の先生たちも保護者と同様、PTAへの加入・参加は、任意にしていく必要があるでしょう。

 「いやいや、保護者だって我慢しているんだから、先生だって我慢すべきだ!」という声が聞こえてきそうですが、もうそろそろ、こういった発想はやめにしたいところです。

 保護者同士にしろ、保護者と先生にしろ、互いに泥沼で足をひっぱりあって苦労を拡大させるやり方では、誰も幸せになれません。

 「みんなでラクになれるやり方」を探す方が、ずっといいでしょう。

 なお、校長・教頭(東京都は副校長)など管理職の先生については、PTAにおける立場がやや異なるため、一般の先生たちとは分けて考えたほうがいいかもしれません(会費や活動については、管理職の先生ももちろん任意なのですが)。

 この問題については、また別の機会に書きたいと思います。

ライター

主なテーマは「保護者と学校の関係(PTA等)」と「いろんな形の家族」。著書は『さよなら、理不尽PTA!』『ルポ 定形外家族』『PTAをけっこうラクにたのしくする本』『オトナ婚です、わたしたち』ほか。共著は『子どもの人権をまもるために』など。ひとり親。定形外かぞく(家族のダイバーシティ)代表。ohj@ニフティドットコム

大塚玲子の最近の記事