Yahoo!ニュース

『オモウマい店』の中京テレビが連ドラに挑戦! 名古屋発グルメドラマは「食べたい!」魅力がてんこ盛り

大竹敏之名古屋ネタライター
『君が、おにぎり好きだから。』は2023年3月4日夜11時30分スタート

グルメ番組でヒット飛ばす中京テレビが連ドラに挑戦

名古屋の中京テレビ制作のドラマ『君が、おにぎり好きだから。』が3月4日(土)にスタート。夜11時30分~の深夜25分枠で4週連続放送となります。

中京テレビは『ヒューマングルメンタリー オモウマい店』『PS純金(ゴールド)』が今、絶好調。人気の理由は、どちらもグルメ情報番組でありながら店主らのキャラクターに過剰にフォーカスする熱量の高さ。『オモウマい店』は、地元放送である『PS純金』の全国版ともいえ、地方局制作の番組としては異例の全国区ゴールデン進出を果たしています。

(関連記事:「名古屋ローカルから全国ゴールデンへ!中京テレビ『PS純金』『オモウマい店』はなぜ面白い?」 2022年8月31日)

両作に代表されるように、“中京テレビといえばグルメとバラエティ”というイメージが地元では浸透しています。一方、連ドラはこれまでほぼ未開拓のジャンル。連ドラは、予算も時間も人材も必要なため、地方のテレビ局にはきわめてハードルが高いのです。

池田CPインタビュー!「PSの30年のノウハウを活かしたドラマを」

そんな状況下にあって、同局はなぜ今、連ドラにチャレンジするのでしょうか? そしてローカル局制作の連ドラにはどんな可能性があるのでしょうか? チーフプロデューサーの池田京平さんに、今回のドラマの見どころを含めてお聞きしました。

主要キャストは山崎樹範、磯山さやか、宮﨑優。名古屋へ単身赴任したアウトドア用品メーカー社員の夫が愛する妻のごきげんをとるために東海地方のおいしいものを探し回る。(C)中京テレビ
主要キャストは山崎樹範、磯山さやか、宮﨑優。名古屋へ単身赴任したアウトドア用品メーカー社員の夫が愛する妻のごきげんをとるために東海地方のおいしいものを探し回る。(C)中京テレビ

――『君が、おにぎり好きだから。』(以下)「君おに」はどんなドラマ?

チーフプロデューサー・池田京平さん(以下、「池田」)「ひと言でいえば“グルメドラマ”です。名古屋に単身赴任している男性が、おにぎりが大好きな妻のためにおにぎりに合う東海地方の食材を見つけて贈る、というのが毎回の基本的なあらすじです」

――ドラマの中にグルメ情報番組の要素も取り入れている?

池田「その通りです。食材は東海地方に実際にある、本当においしい逸品をセレクト。買い物や食べ歩きをしながらお店をめぐり、視聴者がお取り寄せできる通販情報、さらにはよりおにぎりに合う調理法のレシピも紹介します」

グルメ情報番組のノウハウを活かし、登場する飲食店のメニューなども随所に盛り込まれる。番組の最後には、おにぎりの具となるグルメの通販情報を含めたお店のガイドも。(C)中京テレビ
グルメ情報番組のノウハウを活かし、登場する飲食店のメニューなども随所に盛り込まれる。番組の最後には、おにぎりの具となるグルメの通販情報を含めたお店のガイドも。(C)中京テレビ

――このような内容になった理由、狙いは?

池田「看板番組の『PS』シリーズは1994年スタートで30年の歴史があり、うちの制作マンのほとんどは『PS』を通ってきている。中京テレビらしいドラマをつくろう、と考えた時に、グルメ情報番組で培ってきたノウハウ=“おいしいものを見つけ出す”“それをおいしく見せる”を活かさない手はないと考えました。また、今回は『孤独のグルメ』の監督、脚本家と共同で制作しているのですが、あの番組もリアルに存在する飲食店が登場し、視聴者が追体験できるという点でグルメ情報番組と共通点がある。この手法ならうちのよさを活かせる、と思ったのです」

――『孤独のグルメ』は飲食店が舞台ですが、『君おに』ではお取り寄せグルメがメインですね

池田「コロナ禍になって以降、おいしいものを届けて大切な人を笑顔にしたい、自分へのごほうびでいいモノを取り寄せてでも食べたいというニーズが高まったと感じます。また、配信で全国の人にも見てもらおうと考えた時、名古屋や東海地方の飲食店へ食べに行きたい!と思ってもらうだけでなく、お取り寄せ情報があればより追体験しやすくなるのです

お取り寄せグルメをアレンジするる料理番組的な魅力もあり、つくって食べてみたくなる。磯山さやかの食べっぷりがとにかくおいしそう。“日本一のおにぎり女優”認定!(C)中京テレビ
お取り寄せグルメをアレンジするる料理番組的な魅力もあり、つくって食べてみたくなる。磯山さやかの食べっぷりがとにかくおいしそう。“日本一のおにぎり女優”認定!(C)中京テレビ

――ネット配信も行う?

池田「TVer、Locipo、Huluで見逃し配信を行います。今やドラマは、配信での再生回数が評価の基準になっている。そして、配信であれば地方局の番組でも全国、全世界の人に見てもらうことが可能です。一方で、配信では連ドラやシリーズ物でなければ見てもらいにくく、東京のキー局や海外ドラマも横一線でライバルになるという厳しさもある。だからこそ中京テレビの強みであるグルメを活かしたドラマで勝負しようと考えたんです」

――これを機に今後もドラマ制作に力を入れていこう、と?

池田「『君おに』は全4話。今年中に10話連続の本格的な連ドラ制作を計画していて、その試金石という位置づけです。これを機に年に何本かずつ連ドラを手がけていきたい。行く行くは“中京テレビ=グルメドラマ”というイメージをつくっていきたいと考えています

池田京平さん。「私は関西出身で、名古屋へ来て初めてあんかけスパや台湾ラーメンを食べた時、“こんなにおいしいもの隠してたのか!と思いました。東海地方にはまだまだ隠れたおいしいものがいっぱいあるんです」
池田京平さん。「私は関西出身で、名古屋へ来て初めてあんかけスパや台湾ラーメンを食べた時、“こんなにおいしいもの隠してたのか!と思いました。東海地方にはまだまだ隠れたおいしいものがいっぱいあるんです」

◆◆◆

筆者はひと足先に『君おに』のパイロット版を視聴しました。『孤独のグルメ』にも通じるオフビート感のあるドラマでありながら、情報番組の町歩きロケのようでもあり、さらには料理番組の要素もあり。ゆる~く安心して楽しめつつ、“行ってみたい!”“食べてみたい!!”と思わせる見せ方はさすが! なるほど、中京テレビらしいグルメドラマなのです。

地元を知り尽くしたローカル局だからこそできるドラマづくり。今後、どう発展し、全国の視聴者に受け入れられていくか、大いに楽しみです。

(写真/池田さんの写真は筆者撮影、番組関連画像は中京テレビ提供)

名古屋ネタライター

名古屋在住のフリーライター。名古屋メシと中日ドラゴンズをこよなく愛する。最新刊は『間違いだらけの名古屋めし』。2017年発行の『なごやじまん』は、当サイトに寄稿した「なぜ週刊ポスト『名古屋ぎらい』特集は組まれたのか?」をきっかけに書籍化したもの。著書は他に『サンデージャーナルのデータで解析!名古屋・愛知』『名古屋の酒場』『名古屋の喫茶店 完全版』『名古屋めし』『名古屋メン』『名古屋の商店街』『東海の和菓子名店』等がある。コンクリート造型師、浅野祥雲の研究をライフワークとし、“日本唯一の浅野祥雲研究家”を自称。作品の修復活動も主宰する。『コンクリート魂 浅野祥雲大全』はその研究の集大成的1冊。

大竹敏之の最近の記事