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グランパスの「ガッツポーズおねえさん」。SNSでバズった彼女はサッカー大好きタレントとして活躍中

大竹敏之名古屋ネタライター
「ガッツポーズおねえさん」城所あゆねさん。グランパスのホーム・豊田スタジアムにて

本気の応援ぶりがサッカーファンのハートをわしづかみ!

サッカーファンの間で昨年話題になった「ガッツポーズおねえさん」。時は2021年4月21日。Jリーグ、名古屋グランパスvsガンバ大阪戦で、グランパスの先制ゴールの瞬間、こぶしを突き上げて歓喜する女性サポーターが偶然中継カメラにとらえられました。

マスクごしにも興奮と喜びが伝わってくるこの姿は、たちまちSNSで注目の的に。翌日にはグランパスのTwitter公式アカウントも「私たちファミリーのすべてを代弁してくれたガッツポーズ」と、何とレジェンド、ストイコビッチ選手とコラボした特別編集動画とともに投稿。「#ガッツポーズおねえさん」がTwitterのトレンドワードに上がるなどし、動画は実に239万回再生されました(2021年時点)。

それから1年余。あのガッツボーズは彼女の人生を大きく変えるものとなっていました。何と動画がきっかけで各方面から引っ張りだこになり、女子大生からタレントに転身していたのです

しかも、グランパス主催のイベントに出演したり、サッカーをメインにすえたYouTubeチャンネルを開設するなど、熱烈なサッカーファンであることがタレントとしても最大のセールスポイントに。“好き”を追い続けて未来を切り拓いている城所あゆねさん(24歳)に、現在の活動や変わらぬサッカー愛についてお聞きしました。

偶然撮られた動画がまたたく間に拡散

――「ガッツポーズおねえさん」はタレントさんになっていたのですね。

城所あゆねさん(以下「城所」)「そうなんです! ガッツポーズの映像がバズったのが去年の4月で、その半年ほど後に名古屋のモデル・タレント事務所にお世話になることになりました」

ユニフォームやマスコットのバッグなど全身グランパス一色。「少しでもグランパスをアピールしたくて、観戦の時は家を出る時から帰宅するまでずっとこの格好。遠足と一緒です(笑)」
ユニフォームやマスコットのバッグなど全身グランパス一色。「少しでもグランパスをアピールしたくて、観戦の時は家を出る時から帰宅するまでずっとこの格好。遠足と一緒です(笑)」

――話題になったガッツポーズはどういう状況で撮られたものだったんですか?

城所「あの時は一度延期になった後、急きょ振り替えられた試合だったんです。平日のナイターだったので空席がいっぱいあって、せっかくだからとファンクラブの無料招待券で一番高いロイヤル席のチケットを取りました。いつもはゴール裏で観ているので、あんなふうに撮られることはなかったはずなんです」

――ガッツポーズした時の心境は?

城所「思わず出ちゃったものなので記憶にないんですよ。友達から『DAZNで映ってたよ!』とLINEが来て、しばらくしたら『Twitterがヤバいよ』と連絡が入ったんですが、自分では何のことだかよく分かっていない状況でした」

――その後も反響は続いたのですか?

城所「新聞、雑誌、CMといろいろなところからオファーがありました。でも基本的にほとんどお断りしてたんです。当時大学4年生で、高校での教育実習を直前に控えた時だったんです。だから、ネットで話題になっていることが今どきの高校生にばれたら大変だ…と心配で、“やめてくれ~”と思ってました。とにかくばれないようにしなくちゃ、と思って髪の毛も切ったんですが、それでも電車で声をかけられたりして、“うわ、ばれとるやん!”と焦りました」

――本当は学校の先生になるはずだったのですか?

城所「保健室の先生=養護教員だった母の影響で、私も同じ道へ進むつもりでした。教育実習が終わった後も絶対に教員になる!と思っていました」

――気持ちが変わったのは何かきっかけが?

城所「実習後も試験などで忙しくしていたのですが、秋ごろに、大手ハウスメーカーのCMとテレビ東京『FOOT×BRAIN』の出演依頼が同じ日にあったんです。それまでもSNSで、私のガッツポーズに『元気をもらいました』『観ると笑顔になる』などのコメントをたくさんいただいていました。実はミュージカル女優を目指していた時期があって、元気や笑顔を人に与えられる存在になれたら、という思いはあったんです。ガッツポーズのおかげでそれができている。SNSの声に後押しされて、せっかくのチャンスなんだから芸能の世界で頑張ろう!と決心しました」

大学1年でグランパスにハマり熱狂的サポーターに

――グランパスの熱狂的なサポーターであることが思わぬ転機につながったわけですが、サッカーファンになったきっかけは?

城所「高1の2014年にサッカーW杯・日本vsコートジボワール戦をテレビ観戦したのがきっかけです。中学では吹奏楽部、高校では生徒会と茶道部。スポーツとは全然縁がなくて、その時もサッカー部のマネージャーをやっている友達に誘われて、最初は『え~ッ?』って思ってたんです。でも世界の強豪を相手に必死でゴールを守るGKの川島永嗣さんがとにかくカッコよくて! それ以来、川島さんを応援するために日本代表の試合を観に行くようになりました」

――最初は日本代表のサポーターだったんですね。グランパスに興味を持ったのは?

城所「大学1年の時にバイト先の友達に誘われて、瑞穂陸上競技場での開幕戦を初めて観に行きました。それまでも観たら絶対ハマるだろうなと思っていて、でもJリーグは試合数も多いし、高校生で毎回行くのは金銭的に大変だからあえて避けてたんです。思っていた通り生で観たらスゴい熱気で、やっぱりハマりました(笑)。その日のうちにファンクラブに入会して、そこからはホームの試合はカップ戦なども含めて全部足を運んでいます!

――タレント活動をすることになった際も、グランパスサポーターという立ち位置は重要なものだったのでしょうか?

城所「サッカーにかかわるようなお仕事もしたかったし、何よりグランパスの魅力を多くの人に広める活動をしたいという思いがありました。だから、東京へ行くという選択肢もあったんですが、グランパスの本拠地でもある名古屋の事務所にお世話になることにしたんです」

今年6月に開催されたイベント「グランパスガールズフェスタ2022」ではMCを務めた。(C)N.G.E.
今年6月に開催されたイベント「グランパスガールズフェスタ2022」ではMCを務めた。(C)N.G.E.

――今季はグランパスのイベントでMCも務めました。

城所「まさかグランパスからお仕事をもらえるなんて!と驚きました。でも、ファンだからという軽い気持ちじゃできないし、本当にやっていいのかな?とちょっと悩みました。それでもすごくうれしかったし、楽しくやらせていただきました。グランパスのお仕事でいただいたお金は試合のチケットやグッズに消えていくので循環してるんです(笑)」

――仕事でチームと関わる機会ができても、一サポーターとしてのスタンスは変わりませんか?

城所「はい! グランパスの応援は私にとっての生きる希望、最高のストレス発散、エネルギーの源です。だから今も変わらず、ホームは毎試合ゴール裏の最前列で応援しています!」

――こうしてスタジアムの前でお話を聞いている間も、サポーターからひっきりなしに声をかけられていますね。顔が知れ渡ったことで観戦しにくくはないですか?

城所「声をかけていただくことはすごくうれしいです。でも試合中は本当に集中して観ているので、それが伝わるのか皆さん声をかけずにいてくれます(笑)」

スタジアムではひっきりなしにサポーターに声をかけられ写真撮影に応じる
スタジアムではひっきりなしにサポーターに声をかけられ写真撮影に応じる

サッカー&グランパス応援YouTuberに

――今年5月にはYouTube『コロころあゆねちゃんネル』の配信が始まりました。

城所「サッカー、Jリーグ、グランパスの魅力を知ってもらいたい!と思って始めました。ただ、専門的なことをしゃべっても観てもらえない…というかそもそも難しい話はできないので、サッカーのことを知らない女性にもスタジアムへ来てもらうきっかけになるようなチャンネルにしたいと思っています。だからいろんな質問に答えたり、持ち物を見せながら観戦に必要なアイテムを紹介したり、観てくれる人も一緒に楽しめる動画を心がけています」

YouTubeの城所あゆね公式チャンネル『コロころあゆねちゃんネル』
YouTubeの城所あゆね公式チャンネル『コロころあゆねちゃんネル』

――YouTubeではサッカーの審判4級取得の報告もありました。

城所「はい。女性のサッカーファンに対して“サッカー応援している私ってかわいい”ってアピールするために観てるんでしょ?みたいな意見があると感じるんです。“そうじゃない。純粋にサッカー好きで観てるんだよ!”といいたくて、だったらまず自分のサッカーに対する思いを証明しようと審判の資格試験を受けました。それにサッカーって審判の判定にすごく左右されるスポーツで、審判は批判の対象にもなりやすい。審判の気持ちや立場を知ることで、サッカーに対する見方も深まるとも考えました。次の目標は3級! 昇格資格として10試合の審判実績も必要なので、ランニングや縄跳びで体力づくりをしています。でも、試合の応援でずっとジャンプしているのが一番トレーニングになってるんじゃないかな(笑)」

活躍の場を広げてグランパスのファン拡大にも貢献

――毎試合応援している城所さんから見て、今季のグランパスは?

城所「なかなか勝ち切れない試合が多くて悔しい思いをすることも多いんですけど、一試合一試合にそれぞれいいプレーはあるし、チームの雰囲気もいい。毎試合すごく楽しく観ていますし、変わらず大好きです!」

――これからの仕事の抱負は?

城所「サッカーにかかわるお仕事でサッカーを盛り上げたいのはもちろんですけど、サッカーとは関係のない雑誌やCMなどのお仕事もたくさんやっていきたいです。グランパスのファンの方はガッツポーズおねえさんとして私のことを知ってくれている方もたくさんいらっしゃるんですが、それ以外では城所あゆねを知らない人の方がずっと多いじゃないですか。例えば名古屋駅に私のポスターが貼ってあって、そこから私のことを知って、それを入口にしてグランパスにも興味をもってもらえる、そんな風になったらいいな、と思っています!」

――これからもたくさんガッツポーズを見せてください。

城所「ガッツポーズ=点が入る=グランパスが勝つ!なので、たくさんガッツポーズしていきたいです!!」

◆◆◆

グランパスを本気で応援していたら、いつの間にかグランパスを応援する人にパワーと笑顔を与える存在になっていた。そんな城所あゆねさんのガッツポーズがサッカーファンの間で支持されたのは、魂のこもったサッカー愛が無意識のうちに表現されていたからにほかなりません。スタジアムで彼女が多くのファンと温かく交流しているのも、タレントである以前に純粋なサポーター仲間であると受け入れられているからでしょう。

今シーズンは残りわずかですが、グランパス、そしてサッカーへの興味や愛情をより深めてくれるガッツポーズおねえさんと一緒に、スタジアムで熱い思いをたぎらせてみてはいかがでしょうか。そしてもちろん一緒に勝利のガッツポーズを!

(写真撮影/筆者 ※ガールズフェスタの画像は名古屋グランパス提供)

名古屋ネタライター

名古屋在住のフリーライター。名古屋メシと中日ドラゴンズをこよなく愛する。最新刊は『間違いだらけの名古屋めし』。2017年発行の『なごやじまん』は、当サイトに寄稿した「なぜ週刊ポスト『名古屋ぎらい』特集は組まれたのか?」をきっかけに書籍化したもの。著書は他に『サンデージャーナルのデータで解析!名古屋・愛知』『名古屋の酒場』『名古屋の喫茶店 完全版』『名古屋めし』『名古屋メン』『名古屋の商店街』『東海の和菓子名店』等がある。コンクリート造型師、浅野祥雲の研究をライフワークとし、“日本唯一の浅野祥雲研究家”を自称。作品の修復活動も主宰する。『コンクリート魂 浅野祥雲大全』はその研究の集大成的1冊。

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