アレンジういろうのTwitter投稿に「いいね」+リツイートが5万件以上!

「ういろうは焼いてください!」

こんがり焼き目がついて上にはバターがとろり。見るからにおいしそうな写真とともに投稿された“焼きういろう”のレシピ。ちょうど2か月前の9月下旬、名古屋めし料理家・Swindさんのツイートに、3・6万件の「いいね」と1・4万件のリツイートが寄せられました。

これはういろうの老舗、青柳総本家のレシピにのっとったもの。同社から教わった通りに調理してみるとあまりにおいしく、その感動を率直に投稿したといいます。

「ういろう、焼いていいんですか!?と最初はびっくりしました。ういろうを温かくするという発想がまずなかった。油をしいて焼くと表面がパリッとして甘みも増し、予想外のおいしさにさらに驚きました」(Swindさん)

これまでにも名古屋グルメに関する投稿でしばしばバズっているSwindさんですが、Twitter上の反応にはある傾向が見られるといいます。

あくまで名古屋ローカルのネタだとバズっても2000~3000リツイートくらい。一方、コメダ珈琲店など全国的な知名度があるものだと万単位で反響が広がります。ういろうのレシピなので数千行けばいいかな、と思っていたんですが、反響もまた予想以上でした。ういろうは名古屋名物ではありますが、全国に名産地があるので、広く関心を持たれたのだと思います」(Swindさん)

無料試食会に大行列が! 1日で約1000人が焼きういろうに舌鼓

青柳総本家大須本店(名古屋市中区)の店頭に焼きういろうを求める人がズラリ。無料大試食会は11月27(土)・28日(日)にも開催される(両日とも10~11時、14~16時)
青柳総本家大須本店(名古屋市中区)の店頭に焼きういろうを求める人がズラリ。無料大試食会は11月27(土)・28日(日)にも開催される(両日とも10~11時、14~16時)

このSNSでの反響の大きさが、当の青柳総本家を動かすことにつながりました。

「昨年10月にTwitterの公式アカウントを立ち上げ、焼きういろうもアレンジレシピのひとつとして何度か投稿していたんです。その都度それなりに反響はあったのですが、バズるほどではなかった。Swindさんが作り方などしっかり紹介してくれたところ思いもよらなかったほど話題になったので、当社としてももっと注力していこうと考えたのです」と同社取締役の後藤稔貴さん。

そこで企画したのが無料試食会。第1弾を11月23日(祝)に大須の店舗で開催すると、たちまち行列ができるほど多くの人が殺到しました。

「最近あまり食べていなかったけど斬新でおいしいわね」(名古屋市内の60代のご夫婦)、「お正月に集まった時に焼いて食べたら、楽しいし子どもたちも喜びそう!」(愛知県内の小学生の子どもたちと母親のグループ)、「和菓子感がなくてこれならまた食べてみたい」「きな粉、あんこ、わさび醤油などいろんなものをつけてみたい」(市内の20代の男女グループ)と、試食した人たちの反応は軒並み好評。1日で実におよそ1000食が提供されました。

「もちもち!」「パリパリ!!」「おいしい!!!」 焼きういろうは子どもたちにも大好評
「もちもち!」「パリパリ!!」「おいしい!!!」 焼きういろうは子どもたちにも大好評

筆者も実食。焼き目をつけた表面はパリッと香ばしく、中は温かくてもちもち、甘みはより濃厚に。アレンジの方法自体はシンプルなので、ういろう本来の米粉の風味もちゃんと活きています。それでいてアレンジという枠を超え、ひとつの完成された和スイーツとして独自の美味しさがあると感じました。

コロナ禍で需要が激変。自分で楽しむニーズの掘り起こしに

今年に入って、ういろうの珈琲・ゆずの復活(「名古屋名物・ういろう。幻だった『7つの味』が13年ぶりに復活!」)、カエルまんじゅうのアレンジ版・ケロトッツォの発売(「カエルまんじゅう『ケロトッツォ』。名古屋銘菓の進化版が大ヒット、その秘密とは?」)、そして今回の焼きういろうと、創業約140年の老舗ながら新展開に果敢に取り組んでいる青柳総本家。その背景には、コロナ禍による和菓子・お土産需要の変化がありました。

「ういろうはお土産としての需要が中心で、地元の人にもっと食べてもらいたいとかねてより考えていました。そこに来て昨年からのコロナ禍でお土産市場が縮小し、一方でお家時間が増えて、自家需要の掘り起こしがいっそう重要になりました。ケロトッツォが好評を得て、ういろうでも同様に、名古屋の人がお家で楽しみながら食べられる提案ができないかと考えたんです」(前出・後藤さん)

焼きういろう無料大試食会の告知ポスター。発案からわずか10日ほどで実施に踏み切ったスピード感も、同社の近年の柔軟で大胆な企画・実行力を象徴している
焼きういろう無料大試食会の告知ポスター。発案からわずか10日ほどで実施に踏み切ったスピード感も、同社の近年の柔軟で大胆な企画・実行力を象徴している

ういろうは本来切り分けて食べる棹菓子のため、それが近年の核家族化によって食べ切りにくいと敬遠される要因にもなっていました。そこで同社では、今年から半分のサイズに分けた2本入りタイプに切り替えました。これもアレンジういろうにはマッチするといいます。

「あらかじめ2本に分けてあるため、1本はアレンジし、もう1本はそのまま食べていただきやすい。そうすることで新しい味わいを楽しんでいただくと同時に、あらためて“ういろうっておいしい”と感じていただければ」と後藤さん。

「米油を使うのがポイント。他の油と違ってベタつきません。厚みは半棹を四等分。焦げ目がしっかりつくくらい焼くと香ばしさが出ます」と焼きういろう発案者の広報・木下美幸さん(右)。左は取締役の後藤稔貴さん
「米油を使うのがポイント。他の油と違ってベタつきません。厚みは半棹を四等分。焦げ目がしっかりつくくらい焼くと香ばしさが出ます」と焼きういろう発案者の広報・木下美幸さん(右)。左は取締役の後藤稔貴さん

安心感+わくわく感。アレンジで広がる伝統銘菓の可能性

名古屋めし料理家のSwindさんは、焼きういろうをきっかけにさらなるアレンジのアイデアもわいてきたといいます。「秋限定のお芋ういろうも焼いたらすごくおいしかった。以前、青柳総本家さんでいただいたういろうぜんざいもおいしかったし、ういろう天ぷらを出すお店もあると耳にしました。ういろうはまだまだ可能性を秘めています!」

後藤さんもまた、今後さらにういろうの活躍の場を広げたいといいます。「ういろうを求めるお客様でこんな行列ができるなんて、それだけでものすごくうれしい。当社のういろうは定番で7種類あるので、それぞれスパイスで違うアレンジをしたり、当社が運営する喫茶に合うメニューにするなど、いろんな提供法にチャレンジしてみたいと思います!」

ういろうは名古屋名物として全国に知られる存在で、そのメジャーさゆえに地元では近年ありがたみがやや薄れている傾向にありました。しかし、本来のおいしさを活かしつつ新たな魅力や驚きもある焼きういろうは、安心感とわくわく感を同時に満たしてくれるものといえるでしょう。

伝統銘菓の魅力と可能性を広げるアレンジは、全国の銘菓銘品にとっても気づきとチャレンジ精神をもたらしてくれるものになるのではないでしょうか。

(写真撮影/すべて筆者)