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福岡第一の同期もBリーグで大活躍 プロ挑戦中の日体大・小川麻斗が「河村のおかげ」で得たもの

大島和人スポーツライター
小川麻斗選手(福岡)写真=B.LEAGUE

小川はB2福岡でリーグ戦に出場

Bリーグの山場はポストシーズンのビッグゲームが開催される5月だろう。一方で自分が好きな時期は1月、2月の中盤戦だったりする。学生が特別指定選手として各チームの試合や練習に参加し、未来への期待を高めてくれるからだ。

大学や高校のシーズンが終わる12月末から有望株が各チームに合流し、2月末から3月上旬に所属校へ戻る。そんなサイクルだ。

2月21日の越谷市立総合体育館では、ライジングゼファー福岡の小川麻斗が思い切りのいいプレーを見せていた。福岡は越谷アルファーズに77-90で敗れたが、彼は第2クォーターの追い上げで攻守の先頭に立つなど持ち味を発揮。19分のプレータイムで5得点を挙げている。

河村とともにウインター杯を連覇

小川は176センチ・77キロのガードで、日本体育大の1年生。福岡第一高時代は河村勇輝(現東海大)とコンビを組み、2018年・19年のウインターカップ連覇にシューターとして貢献した。

福岡のジョゼップ・クラロスHCは、そのメンタリティを評価する。

「シュートを打つ強気なメンタリティを評価している。プロはお金がほしい、いい車に乗りたいというところを気にする選手が多いけれど、小川はシンプルに(競技を愛して)プレーしている。若手は試合で怯えてしまいがちだけど、そういうこともない」

クラロスHCは若手を積極的に使う方針の持ち主で、秋田ノーザンハピネッツ時代は現役大学生を平気で元NBAプレイヤーのマークにつけていた。福岡でも昨季は拓殖大(当時)の平良彰吾を合流直後から主力として起用した。日体大の1年生ガードも、そんな指導者のお眼鏡にかなっている。

練習から貴重な経験

クラロスHCから「打ち切る勇気」を称賛されたものの、小川自身は満足している様子がない。21日の越谷戦後にはこう述べていた。

「チームの決まり、フォーメーションがある中で、打てるところで打てず、後から後悔するのはよくある。いつでも準備して、打つだけでなく決められる準備をしたい。オフェンスは得点力が持ち味なので、早くコーチにアピールしないといけない」

3月7日付の特別指定選手の活動終了がその後クラブから発表されているが、福岡での活動についてはこう述べる。

「ライジングでは練習から熱くやりあっているけれど、自分しか経験できていないこと。そういったことをチームに持ち返って、(下級生でも)チームを引っ張っていけるくらいやらないといけない。ディフェンス面もライジングで成長して帰りたい」

自粛期間は地元でワークアウトに参加

2020年はスポーツ界にとどまらない全世界にとって災厄の1年だった。小川も福岡第一高は卒業して日本体育大に進学したものの、新型コロナウイルスの蔓延による活動自粛期間は上京できなかった。しかし彼はプロ選手も参加するバスケどころ・福岡のワークアウトで、技を磨いた。

「高校のときはシューティングを多くやったんですけど、ハンドリングのスキルをやらないと成長しないなと思いました。大学でも1番ポジション(ポイントガード)をする中でドリブル、コントロール、ピック&ロールが必要になる。そういったところを教わりたいなと考えて高校を引退してからワークアウトに行っていて、自粛期間もやっていました」

合流後すぐ迎えた関東大学バスケットボール連盟の「オータムリーグ2020」だが、小川は各試合で20分以上のプレータイムを得ている。プロの舞台でも悪くない評価を受け、コートに立つ時間も与えられている。ただ彼はもっと上を見ている。

同期、後輩は既にB1デビュー

現状に満足せず、モチベーションを押し上げられている理由は、高校時代の仲間たちが見せている活躍だ。

同級生の河村は1年早く三遠ネオフェニックスでセンセーショナルな活躍を見せ、今季も横浜ビー・コルセアーズの主力として起用されていた。

小川は言う。

「B1のレベルであれだけ活躍しているのを見て悔しいというか……。自分のモチベーションが余計上がりました。河村のおかげで自分も早くBリーグに行きたいという気持ちが強くなったし、努力をしなければいけないなと改めて感じられています。自分ももう少しプロとして必要なことをできれば、Bリーグでも活躍していけると思うので、河村の活躍があったからこそ自分も負けない心を持てます」

今季は福岡第一高の1学年後輩となるハーパーローレンスジュニアも、琉球ゴールデンキングスで「B1最年少得点」を挙げている。つまり一緒にプレーしていた仲間が既にふたりもB1でプレーしている。

仲間の活躍から得たリアリティ

そこに多少の悔しさはあるだろうが、小川にとっては間違いなく前向きな刺激だ。今の彼はB1を想像できない、手の届かない別世界でなく、努力すれば手が届く現実的なカテゴリーとして捉えられるはずだ。

東海大でキャプテンを務め、2月24日に三遠ネオフェニックス入りを決めた津屋一球も「(大学のチームメイトで新潟アルビレックスBB入りした)西田優大の活躍が気になる」と口にしていた。

選手のステップアップには才能、指導だけでなく、チャンスを与える指揮官と競い合える仲間が欠かせない。そんな真理に改めて気付かされる、小川のプレーと言葉だった。

スポーツライター

Kazuto Oshima 1976年11月生まれ。出身地は神奈川、三重、和歌山、埼玉と諸説あり。大学在学中はテレビ局のリサーチャーとして世界中のスポーツを観察。早稲田大学を卒業後は外資系損保、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を始めた。サッカー、バスケット、野球、ラグビーなどの現場にも半ば中毒的に足を運んでいる。未知の選手との遭遇、新たな才能の発見を無上の喜びとし、育成年代の試合は大好物。日本をアメリカ、スペイン、ブラジルのような“球技大国”にすることを一生の夢にしている。21年1月14日には『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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