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【改題】シーズン中止が資格に影響 Bリーグ新人賞はどうなるか?

大島和人スポーツライター
河村勇輝(三遠/右)は高校在学中ながらB1で活躍。写真=B.LEAGUE

※2019-20シーズンの新人王資格に合わせて内容を修正しました。(2020.4.20)

Bリーグのレギュラーシーズンは全60試合のうち、おおよそ3分の2を終えた。3月15日の無観客試合開催後は中断期間に入っている。新星やベテランの活躍を楽む日々を、我々は唐突に奪われてしまった。

新型コロナウイルスの感染が拡大している現状を見ると、4月末まで予定されているレギュラーシーズン、その後のポストシーズン開催が取り止めとなる場合もあるだろう。シビアに考えると、影響が2020-21シーズンまで残る可能性も否定できない。

優勝と昇格、残留をどう決めるのか。賞金や個人タイトルをどう扱うのか。Bリーグの理事会、実行委員会はそのような問題を議論する必要が出るかもしれない。

新人賞の対象は?

規定が複雑で、分かり難い個人タイトルが新人賞だ。まず選ばれる可能性がある選手の範囲が広い。対象はリーグ登録1季目と2季目の選手。2季目も「1季目に1試合でも登録から外れた」選手には資格がある。

また大学在学中の特別指定などで初登録が22歳以下の場合、所属チームへの登録が半分以下の試合数ならば、翌年も新人賞の対象となり得る。なお外国籍選手は2018-19シーズンから「対象外」と明文化された。加えて海外リーグの在籍経験があると選考の対象とならず、仮に八村塁や渡邊雄太がBリーグに凱旋しても新人賞の資格はない。

河村にも新人王の資格あり

「2019-20シーズンにB1初出場を飾り、もっとも大きなインパクトを残した選手」は河村勇輝(三遠ネオフェニックス)だろう。18歳の今季は特別指定登録で11試合に出場。1試合平均22.2分のプレータイムを任された。1試合平均12.6得点、3.1アシスト、1.5スティールと見事な数字を残している。

河村は昨年12月の全国高等学校バスケットボール選手権大会(ウィンターカップ)で福岡第一高校を優勝に導いたポイントガードだ。1月下旬にチームへ合流すると、172センチの高校生が大人や外国籍選手に混ざって堂々とプレー。Bリーグが選ぶ「ベスト・オブ・タフショット」に入るような絵になるプレーも連発した。三遠戦はチケットが次々に完売。SNSやYouTubeチャンネルの登録者を急増させるなどコート外の貢献も大きかった。

河村は3月24日に特別指定選手契約を終え、この春から東海大に入学する。新人賞には昨年ならば「4月8日時点で契約解除/満了、特別指定選手の活動期間終了選手は除く」という条件があり、所属校のチームに戻る選手を選考対象から外していた。しかし今季は3月15日のシーズン終了時点で所属していた選手に新人王の資格があり、河村も受賞の可能性がある。

条件を満たせば3季目以降も受賞可

繰り返しになるが特別指定登録を経ていると、3季目以降も新人賞の資格が残る場合がある。例えば盛實海翔(サンロッカーズ渋谷)は2018-19シーズンに20試合、2019-20シーズンは18試合に出場しているが、このままなら2020-21シーズンの資格を残す。

河村が東海大で4年までプレーし、仮に特別指定で通算5季プレーしたケースを考えると、「登録6季目」に新人賞を獲得する可能性もある。

富山の前田悟が台頭

今季は富山グラウジーズの前田悟が素晴らしい成績を残した。青山学院大を2019年3月に卒業した23歳だ。192センチ・88キロのスモールフォワードで、昨季も特別指定選手として7試合プレーしている。今季は出場が1試合あたり27.4分で、平均11.5得点。シューターとしての貢献が大きく、3ポイントシュートの成功率は39.9%を記録した。

前田悟(富山)写真=B.LEAGUE
前田悟(富山)写真=B.LEAGUE

滋賀のシェーファーも要注目

タイプの違う選手を挙げると、シェーファーアヴィ幸樹(滋賀レイクスターズ)も面白い。ジョージア工科大学を中途退部して、2018年12月にアルバルク東京と契約。2019-20シーズンは滋賀に期限付きで移籍している。彼も新人賞候補のひとりだろう。

シェーファーは現在22歳で、205センチ・106キロのインサイドプレイヤー。今季は1試合あたり15.2分のプレータイムを確保し平均4.1得点、4.5リバウンドを記録している。ポジション的に強力な外国籍選手とマッチアップする機会も多く、昨年9月には日本代表としてワールドカップ本大会も経験した。新人賞を選考する上で、そんな事情を汲んでいいかもしれない。

シェーファーアヴィ幸樹(滋賀)写真=B.LEAGUE
シェーファーアヴィ幸樹(滋賀)写真=B.LEAGUE

京都の中村太地は資格なし

ぎりぎりで資格を得られなかった有力選手もがいる。京都ハンナリーズの中村太地は、この3月に法政大を卒業するポイントガードだ。今季はプロ契約を結んだ上で1試合あたり23.5分のプレータイムを確保。6.3ポイント、2.7アシストを記録した。

ただし彼は2016-17シーズンから3季連続で特別指定選手を経験し、昨季は横浜ビー・コルセアーズで43試合に出場している。つまり半数以上の試合に登録されており、今季は資格が残っていない。もっとも大学4年にして3クラブの特別指定と1クラブのプロ契約を経験している事実は、新人賞と同じくらい貴重な財産だろう。

今季の続行は不透明だが、まずは世界が平穏を取り戻すことを願いたい。ファンが気兼ねなくBリーグ、オリンピックを堪能し、若武者たちが躍動する姿を楽しむ日がとにかく待ち遠しい。

スポーツライター

Kazuto Oshima 1976年11月生まれ。出身地は神奈川、三重、和歌山、埼玉と諸説あり。大学在学中はテレビ局のリサーチャーとして世界中のスポーツを観察。早稲田大学を卒業後は外資系損保、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を始めた。サッカー、バスケット、野球、ラグビーなどの現場にも半ば中毒的に足を運んでいる。未知の選手との遭遇、新たな才能の発見を無上の喜びとし、育成年代の試合は大好物。日本をアメリカ、スペイン、ブラジルのような“球技大国”にすることを一生の夢にしている。21年1月14日には『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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