Bリーグ大河チェアマンが語る「伸びるクラブ」「伸びないクラブ」の差

大河正明チェアマン 写真:加藤誠夫

■「2~3億」から広がった格差

Bリーグの正式名称は「公益社団法人ジャパン・プロフェッショナル・バスケットボールリーグ」だ。B1、B2の計36クラブが社団法人の会員で、一つの運命共同体となっている。そのトップである大河正明チェアマンに、クラブとリーグの運営について話を聞いた。

千葉ジェッツは2019年6月期の営業収入が17億円に届く見込みで、来季の富樫勇樹選手は基本報酬だけで1億円を超える契約を結ぶ。しかし36クラブの経営がすべて順調かと言えば、それはもちろん違う。B2には2018年6月期の段階で債務超過のクラブが7つ残り、そういったクラブは総じて売り上げも伸びていない。

振り返ると2015年夏にNBL、NBDL(NBLの下部リーグ)、bjリーグのクラブを、B1からB3に振り分ける審査が行われた。当時は「年間売上2億5000万円以上」がB1入りの可否を決める一つの条件だった。ただし大企業がオーナーについているクラブを除けば、経営規模にそう大きな違いがあったわけではない。

大河チェアマンはこう説明する。

「新潟アルビレックスBB、富山グラウジーズ、滋賀レイクスターズは(15年)当時の売り上げが2億~3億強。それがほぼ6億近くまで行っているんです。ということは大体2~3倍になっていますね。一方で同じ2億前後だった青森ワッツ、岩手ビッグブルズ、福島ファイヤーボンズ、群馬クレインサンダーズ、信州ブレイブウォリアーズ、バンビシャス奈良、香川ファイブアローズは苦戦している」※6/11 9時コメント修正

■低迷するB2のbj組

チェアマンはさらに踏み込む。

「山形ワイヴァンズ、茨城ロボッツ、アースフレンズ東京Z、広島ドラゴンフライズ、熊本ヴォルターズは伸びている。全てB2スタートだから、(15年時点の売り上げは)2億5千万に届かないし、アリーナがないケースも多かった。それが広島、茨城はもう5億くらいまで行っているし、東京Zや山形や熊本も4億近い」

つまり残念な傾向としてbjからB2に移ったクラブが成長できていない。一方でNBL、NBDLからB2に移ったクラブは総じて伸びている。すべて実業団を母体としないプロチームで、違いは経営力だ。

旧bjリーグは戦力均衡を志向し、年間の売上が2億円程度でも成り立った。今のBリーグと経営思想が違い、選手保有の仕組みが違ったため「引き抜き競争」がなかった。その発想や手法から切り替えられていないクラブが低迷している。

大河チェアマンはB2の成長クラブについてこう評する。

「Bリーグになったことでエンタメをやらなければいけないとか、こうやるんだという部分で、知見を得ながら伸ばしてきています。山形、茨城、広島はオーナーも付いている」

茨城ロボッツはグロービス、広島ドラゴンフライズはNOVAホールディングスが新オーナーに入っており、Bリーグ発足後に大きな投資を呼び込んだ。来季からB2に昇格する東京エクセレンスも東証一部上場の加藤製作所がオーナーとなり、アリーナの建設に向けた動きを進めている。経営サイドが変化を前向きに受け止めて動いたマインドの成果だ。

茨城は5000人が来場した試合も 写真:B.LEAGUE
茨城は5000人が来場した試合も 写真:B.LEAGUE

■スタッフへの投資が成長の決め手

チェアマンは成長に苦戦するクラブに共通する問題として「チームスタッフへの投資不足」を挙げる。2017-18シーズン時点でコーチなどの「現場組」ではないB1クラブの平均スタッフ数が約20人。それに対してB2は約10人となっている。

彼はこう述べる。

「bjの雄だった琉球ゴールデンキングスが、4年前は11人でやっていたんです。bjの中では最も人に投資していたクラブだった。それがもう倍以上になっていると思います」

幸いBリーグになって、多くのクラブは精力的にスタッフを採用している。

「投資して稼いで、選手にお金が行く流れを生み出している代表例が千葉ですよね。一方でB2には5,6人で回しているクラブがまだ残る。B1でも京都ハンナリーズは7名しかいない」

京都はB1で唯一1試合の平均観客数が2千人を割っているクラブだが、その背景には人員不足がある。

チェアマンはかなり大胆で手厳しい一手も念頭に入れている。

「(クラブの成長のために)B1ライセンスの取得条件に、クラブスタッフの人数も入れることが必要ではないかとも思います」

■社員20人超なら営業は5名必要

バブル崩壊後の日本は人材をコストと受け止める発想が強く、リストラと称する人員整理が社会を騒がせた。Bリーグに起こっている現実はそれと逆で、成長産業特有の「スタッフ不足」だ。人を採れない、採らないことがクラブの低成長に直結している。シンプルにスポンサーやファンのサービスレベルを上げなければ収入は増えない。そのためには人への投資が不可欠だ。

大河チェアマンは「プロスポーツ不毛の地」に根付いて成功したJリーグのファジアーノ岡山を例に挙げる。

「木村(正明・前社長)さんはJFLからJ2に上がった時に、いきなり法人営業を10人近い体制にしました」

法人向け(B to B)、個人客向け(B to C)にどう人をつければいいのか?チェアマンはおおよその規模感をこう説明する。

「B to Bの法人営業、いわゆるスポンサーを取ってくる部隊がまずいます。B to Cのプロモーションをして集客、おもてなし、演出も含めた試合運営をするスタッフも必要です。広報、チケット、プロモーション、マーケティング……。ここにどれだけ人を張れるかだと思います。20人超えてくるクラブならば、営業なら5人前後はいたほうがいい。B to Cはそれ以上に必要だと思います。フェイス・トゥー・フェイスのマーケティングがあるし、SNSなどのプロモーションもある。来た人が次にまた来たいと思うフォローも大事です。そういうことを本当に繰り返してできるかがカギになります」

写真:加藤誠夫
写真:加藤誠夫

■「官」の協会にBリーグの文化を

リーグの側も7月に大きな組織変革がある。それはバスケットコーポレーション株式会社(通称Bコーポ)の設立だ。協会、リーグ、Bマーケティング、B3の職員全員が新設のBコーポに転籍し、各部署へ出向する仕組みになる。

大河チェアマンは言う。

「協会が付き合っている都道府県協会の方には先生が多く、これは官なんです。Bリーグが付き合うのはみんな株式会社だから、こちらは民。このカルチャーを融合させたいと考えています。僕らはサービス業だから、自分たちからオープンに開示する代わりに、きちんと見どころを取材してくださいというスタンス。この感覚は(協会も)失っちゃいけない」

既に先行して日本代表の広報グループにBリーグのスタッフが参加していた。チェアマンは代表効果を強調する。

「2月24日のワールドカップ出場が決まった後、水曜日に1節だけ2,900人があったけれど、他は全節で平均観客数が3,000人を超えました。これを見ても分かるように、代表の活躍とBリーグの発展には絶対つながっている。もう少し言うと、今は3×3も始まりましたが、あそこにBリーグの選手が売り込みに出ているのもいいこと。フル代表だけでなく3×3の代表も含めて、代表の活躍をメディアで取り上げていただく、それがBリーグへの効果だし、今はいい循環で回っていると思います」

もっとも代表の躍進を生んだのはBリーグで、二つはいわば「車の両輪」だ。

「『BREAK THE BORDER』(ブレイク・ザ・ボーダー)なBリーグができて、派手な開幕戦から始まった。それが代表のこうなるきっかけとなったことも、間違いないと思います。代表が今度強くなって、代表のメリットが今はBリーグに生きている」

■ソフトバンクとのパートナー契約は?

最後に事情通が注目するソフトバンクとのスポンサー契約問題について尋ねてみた。ソフトバンクはスポナビライブを2018年に休止したものの、現在バスケットLIVEがB1とB2の全試合を中継している。DAZNやスカパー!などへのサブライセンスもあるが、ソフトバンクグループはBリーグのトップパートナーであり、なおかつ放送権を持つ主体だ。

大河チェアマンはこう述べる。

「スマホで試合を見る文化は、サッカーや他のスポーツも含めて定着しつつあるから、これがなくなることはないと思います。ただB2、将来的にB3も含めて全試合の中継を維持できるかどうかは、これからまさに勝負どころです。ソフトバンクさんにやっていただいていて、せっかくここまで来ている。この延長線上で拡大均衡していくのが一番いいとはもちろん思っています。そのために代表とBリーグ、あとウインターカップとか、こういうコンテンツの価値を磨くことが僕らの今の仕事です」

成長、成功している組織でも、足元を見れば必ず課題や懸念がある。そして「現状維持」は未来の衰退につながる。過度な自己否定は逆に毒となる場合もあるが、安易な楽観や不作為は許されない。大河チェアマンの取材を通して、Bリーグのトップが「影」にもしっかり向き合い、取り組んでいる現状は伝わってきた。