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拡大するBリーグ 気になる「B3以下」の動きとトレインズの快進撃

大島和人スポーツライター
アウェイ小豆沢体育館で熱い応援を見せる八王子ファン 撮影=大島和人

岐阜の加盟より来季はB3が拡大

Bリーグは順調に観客数を伸ばしているが、来季はついにB3以下の大改革がスタートする。B1、B2、B3という三層構造の中で、B3は「一般社団法人ジャパン・バスケットボールリーグ」という別組織が運営している。B1とB2は「プロリーグ」だが、B3はプロアマ混成という立ち位置の違いがある。東京海上日動ビッグブルーのような純企業クラブは別だが、プロクラブにとっては一番下カテゴリーで、「可能なら抜け出したい」リーグだ。

しかしB3も徐々に活性化していくだろう。2018-19シーズンからは実業団連盟、クラブ連盟など4つに分かれていた男子の青年カテゴリーが「一般社団法人日本社会人バスケットボール連盟」に統合される。「地域リーグ」として再編され、Bリーグ入りを目指すクラブが通過する道が整備された。これによって下からの押し上げが強まる。

18-19シーズンからは「岐阜スウープス」のB3参入が決まっており、これがBリーグ3季目にして初の新規参入。佐賀や静岡にもBリーグ入りを目指しているクラブがあり、リーグ統合以前に全国リーグへ参加していなかったクラブが少しずつ「B」に絡んでくるようになるだろう。

今季はB2・B3の入替戦が初開催か

さかのぼるとbjリーグ、NBL、NBDLの計45クラブが合流して新リーグを発足させたのは2015年の4月。同年8月に1部から3部の「振り分け」が完了した。bjリーグとNBLの実力を比較するのが難しかったということもあるが、カテゴリー分けは経営基盤や成長性と言ったコート外の側面を重視して行われた。振り返ると当時の“目利き”は的確で、Bリーグの一季目で実力と経営規模の両面でB1とB2以下の「格差」は開いている。

今季は鹿児島レブナイズが経営問題、東京エクセレンスがアリーナ問題でB2ライセンスを得られず、B3に降格した。一方で15年にオーナーチェンジがあり、先行きを危惧されたライジングゼファー福岡はB3を1年で突破し、18-19シーズンのB1ライセンス獲得に成功。今季のB2でも快進撃を見せ、「B3出身クラブの星」となっている。

昨季は2クラブの自動降格(退会)があったため、B2入会は自動昇格で決した。しかし今季はB2に在籍する全クラブがB2以上のライセンスを付与された。またB3に所属する9チームのうち、八王子トレインズと埼玉ブロンコスの2クラブがB2ライセンスを得ている。したがってこのどちらかがB3の優勝クラブとなれば、B2・B3の入替戦が行われることになる。

B3は「ファーストステージ(10試合)」「レギュラーシーズン(32試合)」「ファイナルステージ(20試合)」の3ステージ制が導入されており、優勝は少し複雑な形式で争われる。ファーストステージなら1位が3点、2位が2.5点、3位が2点という「勝ち点」が与えられる。ファーストステージ、レギュラーシーズンをいずれも制して勝ち点「8」を得ているのが八王子。しかし昨季はB2だった東京エクセレンスも勝ち点「6.5」を確保している。

●B3レギュラーシーズン終了時点の上位

1位 東京八王子トレインズ 8点(ファースト3/レギュラー5)

2位 東京エクセレンス 6.5点(ファースト2.5/レギュラー4)

3位 大塚商会アルファーズ 5.5点(ファースト1/レギュラー4.5)

4位 埼玉ブロンコス 5.0点(ファースト1.5/セカンド3.5)

5位 鹿児島レブナイズ 4.5点(ファースト2/レギュラー2.5)

※ファイナルステージは1位が4点、2位が3.5点、3位が3点、4位が2.5点、5位が2点、6位が1.5点

八王子と東京エクセレンスの直接対決は?

4月1日の1位2位対決はエクセレンスが79-73で勝利していた。4月2日の再戦は劇的な展開となる。エクセレンスが第1クォーターから順調にリードを広げ、第4クォーター残り5分37秒の段階でスコアは52-65と八王子が13点ビハインド。昇格を目指す八王子にとっては影の差す展開だった。

八王子の強みはインサイドだ。チームは208センチ・127キロのジョエル・ジェームスを筆頭に2メートル超の外国籍インサイドプレイヤーを4人擁している。B3の外国籍選手オン・ザ・コート(同時起用)数は第1クォーターから「1-2-1-2」となっているが、帰化申請中の選手をB1やB2の「帰化選手」と同じように扱える特例がある。これにより帰化申請中のエドワード・モリス選手を活かして「オン・ザ・コート1」の時間帯にアドバンテージを作ることができる。

一方でこの試合はインサイドの強みを活かそうとするあまり、攻撃が「重くなる」傾向があった。しかし2日の第4クォーターは大金広弥、亀崎光博と言った日本人のアウトサイドプレイヤーがゴール下へドリブルで切れ込むプレーを増やし、一気に流れを変えた。

エクセレンスの石田剛規ヘッドコーチはこう展開を振り返る。「僕たちは八王子の外国籍選手をどう止めるかを意識してやっていて、そのローテーションは問題なかったと思う。でも4クォーターの終盤に流れを作ったのは大金選手と亀崎選手。彼ら二人までDFのローテーションが間に合わなかった」

第4クォーターには亀崎が11点、大金は8点という活躍を見せる。八王子は一気に追い上げたが、残り39秒で3点のビハインドが残っていた。そこでタイムアウトを取った石橋貴俊ヘッドコーチは、オフェンス2回分の時間が残っていることを考えて「2点狙い」のオプションを選択。アレクサンダー・ジョーンズからのパスを受けたブレナン・マッケルロイがフリースローを獲得して2本成功し、69-70と1点差になった。

続くシリーズは八王子がハードな守備で相手のシュートミスを誘い、ジョーンズがリバウンドを確保。亀崎が残り12秒でフリースローを獲得する。1本失敗しても同点、2本決めれば逆転という状況だったが「練習のイメージで、自信をもって打つだけでした」という亀崎はしっかり2本を成功。八王子は71-70とリードを得る。

最終的に八王子は72-70と逆転勝利を挙げた。優勝のライバルから勝ち点を「奪う」という意味でも、昇格に向けて大きな勝利だった。

B2昇格を視野に入れる八王子の可能性

2日の試合は平日にもかかわらず623人の観客が来場し、八王子のファンもアウェイで熱のこもった応援を見せていた。八王子が主に使用する「エスフォルタアリーナ八王子」は築3年半の新施設で、京王線・狭間駅から徒歩1分の超好立地だ。東京はB2以上のクラブがまだ3つしかなく、八王子市は58万人という鳥取県と同等の人口を擁している。ファンの熱、クラブの営業力がついて来れば、B2でやっていく底力は間違いなくあるだろう。

B3のファイナルステージはまだ14試合を残しているが、仮に八王子がB3王者となれば、B2最下位(最低勝率)のクラブと入替戦を戦うことになる。試合は5月27日に「一発勝負」として行われる予定で、外国籍選手のオン・ザ・コート数などのルールはB2の規定が採用される。

昇格と降格は表裏一体で、勝負にはある種の残酷さも伴う。しかしそんな悔しさがあるから、勝利の喜びも増す。新規参入や下からの押し上げが無ければ、そのカテゴリーはなかなか活性化しない。B3、地域リーグの充実があるから、B1も盛り上がる。そういう意味でB2・B3入替戦、B3以下の動きも要注目だ。

スポーツライター

Kazuto Oshima 1976年11月生まれ。出身地は神奈川、三重、和歌山、埼玉と諸説あり。大学在学中はテレビ局のリサーチャーとして世界中のスポーツを観察。早稲田大学を卒業後は外資系損保、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を始めた。サッカー、バスケット、野球、ラグビーなどの現場にも半ば中毒的に足を運んでいる。未知の選手との遭遇、新たな才能の発見を無上の喜びとし、育成年代の試合は大好物。日本をアメリカ、スペイン、ブラジルのような“球技大国”にすることを一生の夢にしている。21年1月14日には『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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