保育園の兄弟別園問題。臨月のお腹を抱えて自転車3人乗り、3度目の転園申請も叶わず仕事復帰に不安

自転車での保育園送迎イメージ(写真:アフロ)

待機児童問題の方が大きく、保育園に入園できただけマシとして、あまり重きを置いてもらえないのが認可保育園の兄弟別園問題。

先日、神奈川県逗子市に住む女性から連絡をもらい、あまりに大変過ぎるその実態を聞いた。当事者から聞いた別園のデメリットや入園の選考基準、行政への取材を以下に綴る。

●臨月のお腹を抱えて自転車3人乗り、3度目の転園申請も叶わず

佐藤さん(仮名)は3年ほど前に、1歳、3歳の子どもを連れて横浜市から逗子市に引っ越した。年度内の認可保育園の入園は絶望的であることから、4月入園のタイミングを図り、少しでも優先してもらえるよう横浜市では認可外保育園に預けて、加点の対象となる準備をして逗子市に入園申請をした。

ところが、兄弟は別々の園となってしまった。2つの園は2駅分ほど離れた距離にあり、公共交通機関を使用するにも不便な場所だった。自宅→A園→B園→B園の最寄り駅より出勤(自宅→B園最寄り駅の距離4.6km)

車での送迎は、コインパーキングを使用と両園から言われているため、双方の駐車料金だけでも年間11万円ほどの費用となってしまう。ファミリーサポートの登録は済ませているが、2つの保育園が離れているため、支援がなかなか得られない。

夫は引っ越し当初は単身赴任で育児参加できず、実母は闘病中、義理の両親は地方在住で手助けを得られなかった。仕方なく佐藤さんは2人の子どもを自転車に乗せ、自宅からの送迎と子どもの園への引き渡しで片道1時間余りを費やすこととなった。

逗子市の場合、年度内での転園はできず、1年は同じ園に通わせるルールになっている。引っ越しから今年で3回目の申請をしたが、兄弟を同園にしたいという希望は叶わず、2人の子どもは3歳と5歳になった。

佐藤さんは現在臨月で、来月(3月)には第三子を出産予定。妊娠の早い段階から、産婦人科の医師には自転車の送迎をやめるように忠告を受けていたが、仕事を続けていく上で保育園の送迎をやめるわけにはいかず、今までやり過ごしてきた。(なお、現在は休業に入ったため車で送迎しているが、交通の利便性が悪く、車でも片道1時間かけている。)

第三子を出産したら、3人の子どもを連れてどうやって保育園の送迎をすればいいのか、頭を抱えて悩んでいるという。(※自転車の4人乗りは道路交通法違反になる)

佐藤さんも夫も医療従事者で、勤務日はシフト制。お互いの職場はコロナ禍で逼迫していて、夫は夜勤もあり、育児のウエイトは佐藤さんにかかっていた。認可保育園を退園して思い切って自宅近くの幼稚園に入園させようかとも考えたが、仕事がある土曜日の預かりを行っておらず、まさに八方塞がりの状態だった。

行政に相談したが、この状況を解決できるような現実的な提案は得られなかった。コロナで医療従事者が不足していて、職場も早期復帰を求めているにもかかわらず、休業後に仕事復帰できるのか、不安でたまらないと佐藤さんはいう。

●近隣自治体では兄弟を同じ園にするよう配慮

通常月齢の低い0歳、1歳児クラスは園の受け入れ定員も少なく激戦となる。しかし、月齢が上がるに連れ、幼稚園に移るケースなどもあり、空きが出ることがある。今年の申請(3回目の申請)では上の子の園(A園)には、下の子が入れる3歳児クラスの空きが7枠もあった(佐藤さんは自宅から近いA園に二人の子を預けたかった)。にもかかわらず、別々の園になってしまった。

この結果に驚いた佐藤さんは、横浜市、茅ヶ崎市、藤沢市、鎌倉市、横須賀市の近隣5市の場合はどのような対応をしているのか、調べることにした。

まず引っ越しした時の申請において、5市すべてが建築書類や賃貸契約書があれば調整加点がつくとの回答だったが、逗子市において佐藤さんの場合は転入予定者という扱いで加点が付けられていないと分かった(なお、佐藤さんは必要な書類は提出していた)。

兄弟が別園となった翌年の申請では、たとえば横浜市の場合は、基礎点自体をAからAAにランクアップさせ、調整加点以前に兄弟が同園に入所しやすい方法をとっていた。兄弟を同じ園にするための加点は5市すべてにあり、もっとも高得点に設定していたのが横須賀市だった。

今回の3度目の申請では、第三子出産で4月の入園時点で産休取得のため、逗子市では基礎点が35点と低く設定されている。(以下、資料1参照 令和3年度逗子市の保育所等利用案内)家庭外労働で週35時間以上の労働であれば基礎点が50点なので、35点では大幅に下がってしまい、3度目の申請でも叶わなかったのだと分かった。

産休で大きく減点するのは、逗子市・横須賀市・横浜市・鎌倉市だった。しかし、逗子市以外の3市では産休で減点はされるが、上述のようにそもそも兄弟を同じ園に揃えるための配慮があり、3回目の申請以前に同園になることがほとんどだった。

また、この5市は兄弟の転園申請は通年行えるが、逗子市だけが4月にしか転園はできず、空きが出たとしても待機児童が優先されているように思えた。

佐藤さんは、逗子市には選考基準を他市に見習ってもらいたい、と感じてしまったという。

資料1:令和3年度 逗子市の保育所等利用案内 15ページ
資料1:令和3年度 逗子市の保育所等利用案内 15ページ

●少子化対策を掲げるなら、兄弟別園問題にも目を向けて

私(筆者)が横浜市の保育教育運営課に問い合わせたところ、一次と二次の選考の結果、兄弟が別園になってしまったのが、全世帯のうち1割程度いるとのことだった(令和2年4月入園希望の場合)。

逗子市の保育課にも問い合わせたが、兄弟が別園になってしまった世帯がどれだけいるか、把握していなかった。産休を減点していることに関しては、産休明け、育休明けの復職時を加点対象としており、復帰の際に入所先がないという問題解決の方に重きを置いているとのことだった。

認可保育園の選考基準は、地域性を鑑みて公平になるよう各自治体に任せられている。自治体によっては、待機児童解消に重きを置き、兄弟別園問題を後回しにしてしまっている地域もあるかもしれない。待機児童解消ももちろん重要だが、兄弟別園問題が放置されたままだと、少子化対策にはなってはいかない

2人以上の子どもを育てていれば、下の子は保育園、上の子は小学校など、どこかのタイミングで兄弟が別の施設に通うことにはいずれなる。しかし、保育園だけは送り迎えという親への負荷がある。雨や雪の日の送迎は大変だし、イヤイヤ期を迎えた子どもの扱いには一苦労だ。緊急時や災害時のことを考えたら、幼いうちは兄弟同園の方がいいだろう。

少子化対策のためにも、多くの自治体で多子世帯にとっても不利のない保育園の選考基準を検討してもらえたらと願う。