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食を通して東北の魅力を世界へ/(株)ハミングバード・インターナショナル 青木聡志さん

岡沼美樹恵フリーランスライター/編集者/翻訳者
(株)ハミングバード・インターナショナル代表取締役の青木聡志さん

米大学卒業間近に受け取った連絡

そこから飲食の道へ―

今、仙台で最も勢いのある飲食チェーンとして知られる(株)ハミングバード・インターナショナル。始まりの店であるイタリアンレストラン「humming bird」、和食居酒屋の「炙屋十兵衛」のほか、うどんが絶品と評判の「うどん酒場 七兵衛」など、11ブランドを展開。2022年にオープンした揚げ皮串発祥の居酒屋「伝串 新時代」は連日大行列ができるほどの人気に。今回の物語の主人公は、「飲食は本当に楽しい」と語る(株)ハミングバード・インターナショナル代表取締役の青木聡志さんです。

(株)ハミングバード・インターナショナルが運営するブランドのひとつ「humming bird」(提供:(株)ハミングバード・インターナショナル)
(株)ハミングバード・インターナショナルが運営するブランドのひとつ「humming bird」(提供:(株)ハミングバード・インターナショナル)

ご両親がイタリアンレストラン「humming bird」を営んでいたことから、“飲食店の3代目”として育ったという青木さん。アメリカの大学に通い、卒業間近だったある日、両親から受けた連絡で人生が変わります。

「『3店舗目を出したけど、店を切り盛りする人がいなくなって会社もヤバそうだから帰ってきてくれ』と言われたんです。潰れちゃうのかなぁと心配しつつ帰国してそれからすぐ店長になって…という感じでした。その次に前社長だった親父からのオーダーで『大人が行く焼鳥屋をつくってほしい』ということで出したのが『炙屋十兵衛』。でも、当時は学生からすぐにイタリアンの店長をやって、焼鳥屋で一杯たしなむ…みたいなこともしたことがなかったから、東京とかでお店をいろいろまわって、勉強しました」。

経営の判断はスピードが命

その後も(株)ハミングバード・インターナショナルとして次々と新しいブランドを展開していきました。

「僕、経営判断はすごく早いんです。やると決めたらすぐやるし、やめるときめたらすぐやめる(笑)。中小企業はスピードが命だと思っているので」。

コロナ禍では、売り上げが大きく落ち込んだ飲食店を救うべく、同業の仲間と「愛する店ドットコム実行委員会」を結成。割増商品券のリターンを出してクラウドファンディングに挑戦しました。また、同じく大きく売り上げが落ち込んでいたタクシー会社とタッグを組んで、タクシーを利用したフードデリバリー「タクデリ」を始め、メディアでも大きく取り上げられました。また、最近では、売り上げが芳しくなかったうどん店を居酒屋「伝串 新時代」に。それが大当たりしたのは先述した通り。

飲食の魅力は「街をつくり、人をつくること」

青木さんに飲食業の魅力を聞きました。

「街をつくっているという感覚があるんですよね。たとえば国分町の通りに人があふれていると『最高だな』って思うし。あと、僕が持っている理念が『力を与えられる人間になりたい』ということなんです。うちは今学生さんのアルバイトも含めて600名くらいいるのですが、学生さんたちが社会人になる前に、接客などのアルバイトを通していろんなことを教えられると思っていて。そういう人を育てるというか、そういうことでお役に立てるのが、僕としてはやりがいになっています。本当にドラマみたいなお客さまとのエピソードがあったりして、そういうのを聞くとウルッとなるんですよね」。

全国にファンを増やすべく、クラファンに挑戦

「ラーメン☆ビリー」の看板メニューを再現した袋麺を発売。企画を担当した(株)ロルの代表と打合せに余念がありません
「ラーメン☆ビリー」の看板メニューを再現した袋麺を発売。企画を担当した(株)ロルの代表と打合せに余念がありません

今後、郊外店展開を拡大し、まだまだ成長のスピードは緩めないという青木さん。2023年には同じく代表を務める(株)情熱ノチカラの運営するチェーン店「ラーメン☆ビリー」の袋麺を開発。G系の看板メニュー「ビリーラーメン」を家で再現できるようにしました。現在先行販売のためのクラウドファンディングを行い、11月には一般販売する予定です。

「この袋麺をきっかけに、全国にビリリアン(=ビリーのファン)を増やしていきたいですね。そしてFC加盟店を増やしていきたいと思っているんですよ」。

東北を舐めるな―。仲間とともに、

食と音楽で世界に魅力を発信

順調に事業を広げていく青木さんですが、将来的な目標は何なのでしょうか。

「言葉が汚くなってしまうんですけれど、僕『東北を舐めるな』って思っていて。日本、そして世界に対して東北のよさを伝えていきたいんですよ。そしてその東北の魅力のひとつが『食』というコンテンツとして大きいと思うので、自社だけでなく同業の方々と盛り上げていきたいんです」。

キラキラした目で将来の夢を語ってくれた青木さん
キラキラした目で将来の夢を語ってくれた青木さん

そして、さらに街を巻き込んだ大きな構想についても話してくれました。

「仙台って、『楽都仙台』っていうじゃないですか。仙台ってジャズの街なんですよ。でもこれって、ジャズフェス(※)があるからじゃなくて、元々戦後米軍基地があったことから、ジャズバンドがいっぱい来ていて、ジャズ喫茶なんかもたくさんあった。超世界的なビッグネームが来ると、東京で公演後、必ず仙台に来るのが当たり前だったんです。今、仙台にもすごく有名なサックス奏者の熊谷駿さんという方がいて、その方が『仙台を日常でジャズができるような街に変えていきたい』という話をしていたと知人伝いに聞いたんです。これすごくいいなぁと思って。アメリカ・ミシシッピのニューオーリンズという街にちょうど国分町と同じくらいの大きさのフレンチ・クオーターという場所があるんですね。そこでは子どもがバケツを叩いたりひっくり返したりしてドラムとして演奏したり、サックス奏者がサックス吹いていたり、ストリートピアノを弾いている人がいたりして、みんなハット・マネーを稼いでいる。仙台をそういう特区にできないかと思っていて。やっぱり都市間競争に勝つには食も音楽もコンテンツに色づけすることが大事だと思うんです」。

仙台を代表する経済人である青木さん。個人的な夢はあるのでしょうか。

「青臭いかもしれないですけれど、海外に学校をつくりたいです。僕の学生時代の経験で、貧しい国の子どもたちはキラキラした目で夢を語るのに、なんで日本の子どもたちは自分の可能性に蓋をしてしまっているんだろうというのがあって。その原体験があるんですよね」。

そう語る青木さんの目は、少年のようにキラキラと輝いていました。

(株)ハミングバード・インターナショナル

仙台市青葉区本町2-6-16 青木ビル3F

TEL 022-225-0522

各店舗の情報は、上記ウェブサイトからどうぞ。

写真/株式会社SAND代表 佐藤啓之

フリーランスライター/編集者/翻訳者

大学卒業後、株式会社東京ニュース通信社に入社。編集局でテレビ誌の制作に携わり、その後仙台でフリーランスに。雑誌、新聞、ウェブでエンターテインメント、スポーツ、広告、ビジネスなど幅広いジャンルの執筆活動を行う。2016年よりウェブメディア「暮らす仙台」で東北のよいもの・よいことを発信。ローカルビジネスの発展に注力している。好きなものは、旅、おいしいものを食べること、筋トレ、お酒、こけし、猫と犬。夢は、クリスマスのニューヨーク・セントラルパークでスケートをすること。妄想は、そのスケートのお相手がジム・カヴィーゼルだということ。

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