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日本選手権代表をかけた3年ぶりの阪神OB対決、今度はコーチ同士でした。

岡本育子フリーアナウンサー、フリーライター
カナフレックスの藤井宏政コーチ(左)と、パナソニックの阪口哲也コーチ(右)。

 プロ野球シーズンは終盤を迎えていますが、社会人野球も10月に京セラドーム大阪で行われる『第45回社会人日本選手権』で今季の全国大会は終了です。開催中の地区最終予選で9月20日すぎには代表が出揃うでしょう。このところ阪神ファームの試合から遠ざかっていて申し訳ないのですが、きょうもまた社会人野球の話題で…ご了承ください。

 元阪神選手の中で、日本製鉄鹿島4年目の玉置隆投手兼任コーチ(9月11日で33歳)は今季もしっかり投げています。都市対抗の様子はこちらでどうぞ。なお日本製鉄鹿島はJABA東北大会で優勝し、都市対抗が始まる前にもう日本選手権出場を決めました。これは本当に大きいですね。

 <日本製鉄鹿島の玉置投手が都市対抗初勝利!>

 <高校&阪神タイガースOB対決は、後輩側に軍配!>

 近畿では、カナフレックスの藤井宏政コーチ(29)、パナソニックの阪口哲也コーチ(27)がいます。藤井コーチは2017年途中から兼任コーチ、2018年から専任コーチになりました。肩書はヘッドコーチです。阪口コーチは2018年途中から守備走塁コーチとしてノックバットを振る日々。2人とも試合ではサードコーチですね。

 日本選手権に向けて、近畿は今月1日から8日まで最終予選が行われました。ことしは12チームが参加して、2つのやまがたで2チーム、敗者復活戦で残り2チームの計4チームが本戦出場です。その代表決定戦2試合が6日にわかさスタジアム京都で行われ、第1試合でパナソニックが、第2試合で大阪ガスが、それぞれ本戦に駒を進めています。

 この時、第1試合でパナソニックと対戦したのはカナフレックスで、藤井コーチと阪口コーチのサードコーチ対決も見られたわけですが、実は3年前の日本選手権最終予選でも直接対決していました。2人とも現役選手で!その記事はこちらでご覧ください。→<社会人日本選手権地区最終予選 近畿では藤井、阪口の虎OBが代表決定戦で対決!>

3年前と同じく軍配はパナソニックに

※わかさスタジアム京都が決戦の地。
※わかさスタジアム京都が決戦の地。

 ことし、パナソニックは2日の初戦(2回戦)でミキハウスと対戦して7回コールド勝ち。またカナフレックスも、2日の初戦(2回戦)で日本製鉄広畑に7対5で勝っての決定戦進出でした。では6日の試合を振り返ります。

《第45回日本選手権 近畿最終予選》

代表決定戦-1  9月6日

パナソニック-カナフレックス

 パナ 110 003 000 = 5

 カナ 000 011 200 = 4

◆バッテリー

【パナ】城間-鈴木-○庄司-藤井聖-小屋-北出 / 三上

【カナ】●大西-青山-山田-黒岩 / 福田

◆三塁打 パ:松根

◆二塁打 パ:井上 カ:青木、新谷

◆盗塁 カ:山崎

《パナソニック》

◆打撃   (打-安-点/振-球/盗/失)

1]二:法兼  (2-1-0 / 0-1 / 0 / 0)

2]三:松根  (3-2-1 / 0-0 / 0 / 0)

3]中:藤井健 (3-0-1 / 1-0 / 0 / 0)

4]一:片山  (4-1-0 / 1-0 / 0 / 0)

5]右:井上  (4-2-1 / 0-0 / 0 / 0)

6]左:上田  (4-1-0 / 0-0 / 0 / 0)

7]指:田中  (2-0-0 / 0-1 / 0 / 0)

〃打指:坂田 (1-0-0 / 0-0 / 0 / 0)

8]捕:三上  (4-1-0 / 1-0 / 0 / 0)

9]遊:諸永  (4-2-0 / 0-0 / 0 / 0)

   

◆投手    (安-振-球/失-自)

城間  4回 60球 (5-4-2 / 0-0)

鈴木 0.2回 23球 (3-0-0 / 1-1)

庄司 1.1回 23球 (2-1-1 / 1-1)

藤井聖 1回 24球 (3-0-0 / 2-2)

小屋  1回 10球 (0-1-1 / 0-0)

北出  1回 6球 (1-0-0 / 0-0)

《カナフレックス》

◆打撃  (打-安-点/振-球/盗/失)

1]二:武田 (2-1-0 / 0-3 / 0 / 0)

2]左:山崎 (4-1-0 / 0-0 / 1 / 1)

3]指:前出 (4-2-1 / 2-0 / 0 / 0)

〃走:年綱 (0-0-0 / 0-0 / 0 / 0)

4]三:吉田 (5-3-0 / 0-0 / 0 / 0)

5]一:北川 (5-1-0 / 1-0 / 0 / 0)

6]中:新谷 (5-1-1 / 2-0 / 0 / 0)

7]右:青木 (4-4-1 / 0-0 / 0 / 0)

8]捕:福田 (2-0-1 / 0-1 / 0 / 0)

9]遊:高畑 (4-1-0 / 1-0 / 0 / 1)

◆投手    (安-振-球/失-自)

大西 5.1回 74球 (3-3-2 / 3-2)

青山 0.1回 12球 (2-0-0 / 2-1)

山田 2.1回 28球 (4-0-0 / 0-0)

黒岩  1回 7球 (1-0-0 / 0-0)

《試合経過》※敬称略

カナフレックスの青木選手は7回、再び1点差に迫る右前タイムリー!
カナフレックスの青木選手は7回、再び1点差に迫る右前タイムリー!
この日は4打数4安打と大当たりの青木選手でした。
この日は4打数4安打と大当たりの青木選手でした。
パナソニックの井上選手は二塁打とタイムリー。
パナソニックの井上選手は二塁打とタイムリー。

 パナソニックは1回、ヒットと犠打で1死二塁となり、相手エラーで1点先制。2回は井上の二塁打と田中の四球などで1死一、三塁として三上の三振で併殺となる前に三塁走者が生還。2点目が入りました。カナフレックスは1回に2安打、2回は二塁打や四球、3回も四球と犠打、暴投で三塁まで進みますが還れず。4回も2安打しながら無得点と、連打や決定打が出ません。しかし5回、高畑の左前打などで1死一、三塁として前出が中犠飛!

 1点差とされたパナソニックは6回、諸永が左前打し、犠打で1死二塁となって松根が左翼線へタイムリー三塁打!次の藤井健が右犠飛。片山は左前打とエラーで二塁へ進み井上が左前タイムリー。この回3点を加え、5対1と差を広げます。しかしカナフレックスは6回裏に先頭の新谷が右翼線二塁打で出ると、青木の右前打で無死一、三塁として福田が右犠飛。7回は前出と吉田の連打、北川は一ゴロで1死二、三塁となり青木の二ゴロで前出が生還。この回2点を返して5対4と再び1点差!

 その後は互いに追加点なく、9回裏のカナフレックスは先頭の前出が左前打で出たものの後続を断たれて試合終了。パナソニックの出場が決定しました。

パナソニックは25大会連続40回目の出場

パナソニックの小屋投手。こうやって帽子が飛ぶのもおなじみです。
パナソニックの小屋投手。こうやって帽子が飛ぶのもおなじみです。

 1点及ばなかったカナフレックスですが、パナソニックの10安打を上回る14安打(5回までに8安打)を放ち、しかも三者凡退は一度もなし。8回が併殺により唯一、3人で攻撃を終えたイニングで、パナソニックの小屋裕投手(25)が1球投じるごとに「ヨシッ!」と大きな声を出し、帽子を飛ばす気迫で抑えたものです。

 では試合後に聞いたコメントをご紹介しましょう。まずパナソニックの田中篤史監督は「最後まで集中して勝ち抜いてくれました」という言葉。引き離したと思ったら再び追い上げられる展開でしたが「一番難しい試合を想定して練習をやってきたので、想定内と言えば想定内でしょうか」とのことです。

 

北出投手(中央)のところへ駆け寄る小屋投手(右)。このあとガッチリ抱き合いました!
北出投手(中央)のところへ駆け寄る小屋投手(右)。このあとガッチリ抱き合いました!
先発した城間投手(右)とタッチ。城間投手は高校で阪神・北條選手と、大学で長坂選手と同級生です。
先発した城間投手(右)とタッチ。城間投手は高校で阪神・北條選手と、大学で長坂選手と同級生です。

 「うまくピッチャー陣が粘ってくれた。ただ三者凡退を作れなかったので、攻撃のリズムを作ってあげられなかったかなと。粘りながら1点取られ、チームがマイナスな雰囲気になるところで3点取れたから、ホッとしたのかも。そこにつけ込まれたのかなと思います。それも野球ですね」

 6回は松根優選手の三塁打からでした。「スリーボールから、打ってもいいですよというサイン。彼は都市対抗の本戦で(他の選手の座を奪われて)出られなかった。その悔しさを持って夏を過ごしたでしょう。(全体)練習後にコーチをつかまえて、個別に練習していましたよ。(きょうは)狙っていたんじゃないですかね。自信を持ってバットを振ったはず」。この試合、3打数2安打1打点でした。

 日本選手権に向けて「バントを決める、エンドランを決める、ピッチャーは代わりっぱなを抑えるという課題がある。本戦まで逆算して、詰めていきたい。京セラでいいものを出せるように。本戦でも集中していければ結果はついてくると思います」と話す田中監督です。

 

1点差を守っての勝利に安堵と笑顔

9回1安打無失点で1点差を守り切った北出投手。
9回1安打無失点で1点差を守り切った北出投手。

 選手に話を聞けなかったのですが、北出浩喜投手(26)だけコメントをもらえました。1点差の9回に登板したことに「緊張しましたねえ!」と真顔。そんなに?「メチャクチャ緊張しましたよ」と繰り返します。「1点差で、しかも先頭にヒットを打たれて…終わったと思いました」。冗談のように苦笑するけど、本当に疲れた様子。

※左は柳田コーチ。阪口コーチとの2ショットなら、と撮影に応じてくれました。
※左は柳田コーチ。阪口コーチとの2ショットなら、と撮影に応じてくれました。

 でも抑えましたからね。「よかったあ!」。声が裏返っていますけど(笑)。「あ~よかった」。もう一度、声を引っくり返して言いながら笑います。試合終了時、みんなとタッチをする時にホッとしていたでしょう?と聞いたら「わかります?背中に安堵が出ていた?」と言って、また白い歯を見せる北出投手でした。本戦もしっかり抑えてきてください。

 なお阪口コーチは、2つ勝って決められたことを喜んでいて「よかったですねえ」とニコニコ。それから「カナフレックス、めっちゃ打ちますね。三者凡退がないですよ」と。確かに私も久々に驚いたくらいです。すると柳田一喜コーチから「ことしバッティングがいいと聞いていたので、警戒していたんですよ」という情報も。なるほど、そのあたりをカナフレックスの藤井コーチに聞いてみないといけませんね。

決定打不足とミスを反省のカナフレックス

カナフレックス・3番の前出選手は犠飛の後も2安打。
カナフレックス・3番の前出選手は犠飛の後も2安打。
4番の吉田選手はルーキー。この日は3安打しています。
4番の吉田選手はルーキー。この日は3安打しています。

 ではカナフレックス側のコメントです。まず河埜敬幸監督は「ここというところの1本がね」と渋い表情。「最初に要らん点をやっている。あれがなければ、おもしろいゲームになったんだけど」と1回、2回の失点を振り返りました。結果的には接戦で終わったものの「10点差でも1点差でも、負けたら同じ」と。それが社会人野球ですね。「あとはバントの失敗が大きい。流れがこっちに来ないから」とのこと。

 藤井コーチは「うちのミスで負けたので」と、いつものように静かな口調でした。それにしても打ちますね。「まあ今、感じがいいので。バッティングはタイミングですね。三塁コーチをしているとわかるんですよ。間が取れているかどうか。そこだけ。気づいたら言います」

 パナソニックの田中監督が「カナフレックス、いいバッティングしていましたね。粘り強かった。追い込まれても簡単にアウトにならない」と、打線を評価していたことを伝えたら「粘り強く、アウトでもつなぐ、そういう方針でやっています。ただ…」と藤井コーチ。「得点圏を作るけど、そこからが問題。相手もピッチャーを代えてくるので、そういう時の考え方ですね。あとはバント。速い球で練習しないと」

投手陣を引っ張る5年目の右腕

カナフレックスの大西投手。降板後もベンチで声を出し、攻守交代時には選手を迎えます。
カナフレックスの大西投手。降板後もベンチで声を出し、攻守交代時には選手を迎えます。

 最後は先発した大西健太投手(26)です。1回にヒットで出した先頭を味方エラーで還し、2回の失点も先頭を二塁打で出したところからでした。そして6回もやはり先頭のヒット。「6回に先頭を出したのも代えられる要因であり、突き放された敗因にもなる」。6回って大事なイニングなんですね。「はい。1回と6回は大事です」

 とはいえ3回は死球のみ、4回と5回は三者凡退で計2安打ですからね。「全体的には悪くなかったので、正直1点2点を取られてもいけるかなと。3回、4回、5回はいい感じでした。配球を考えながら投げた。ツーシームを打たれたので、緩い球をタイミングずらしながら工夫をすると、スイングさせなかった」

※冒頭は試合中の2人で、これは試合後に先輩と後輩に戻った藤井コーチ(左)と阪口コーチ(右)。
※冒頭は試合中の2人で、これは試合後に先輩と後輩に戻った藤井コーチ(左)と阪口コーチ(右)。

 ことし5年目で、投手陣の柱。後輩に声をかける姿も板についていますね。敗者復活戦であり、勝てば3番目の代表となる8日の試合は「宮城が投げる予定ですけど、僕もいくつもりで」と話していた大西投手。結局、出番なく試合は負けてしまったのですが、その言葉通り途中から肩を作って準備していました。

 8日の試合結果は次の記事でご紹介します。

    <無印の掲載写真は各チーム提供、※印は筆者撮影>

フリーアナウンサー、フリーライター

兵庫県加古川市出身。MBSラジオのプロ野球ナイター中継や『太田幸司のスポーツナウ』など、スポーツ番組にレギュラー出演したことが縁で阪神タイガースと関わって約40年。GAORAのウエスタンリーグ中継では実況にも挑戦。それからタイガースのファームを取材するようになり、はや30年が経ちました。2005年からスポニチのウェブサイトで連載していた『岡本育子の小虎日記』を新装開店。「ファームの母」と言われて数十年、母ではもう厚かましい年齢になってしまいましたが…1軍で活躍する選手の“小虎時代”や、これから1軍を目指す若虎、さらには退団後の元小虎たちの近況などもお伝えします。まだまだ母のつもりで!

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