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「最高の舞台で届けたい感謝と元気」 阪神・原口選手がオールスター出場

岡本育子フリーアナウンサー、フリーライター
9日、試合前練習が終わって会見に応じた阪神・原口文仁選手。

 プロ野球は今、1軍もファームもオールスター前の変則日程を消化しているところ。8日の月曜日も試合がありました。阪神ファームは6日と7日に埼玉県戸田市でイースタン・ヤクルトとの交流試合を行って、そのまま名古屋へ移動し、翌8日から中日との3連戦に臨んでいます。8日は6対3とリードして迎えた9回に、1点差まで詰め寄られながら何とか逃げ切って先発の秋山投手が8勝目です。9日は4対2で9回裏に3点を失ってサヨナラ負けでした。

 10日はナゴヤドームで中日の“親子ゲーム”となるため、10時20分に試合開始。そして11日には仙台でフレッシュオールスターゲームが行われます。10日の試合が終わって1時間後くらいに、スターティングメンバーが発表されるでしょう。

 フレッシュオールスターゲームに続いて、オールスターゲームが12日に東京ドームで、13日は阪神甲子園球場で開催されます。甲子園球場でオールスターが行われるのは2014年以来、5年ぶりですね。その時は阪神から、ファン投票で鳥谷選手、選手間投票でマートン選手、監督推薦で藤浪投手が出場しました。

最後の1人を選ぶ『プラスワン投票』

 さて、ことしのオールスターゲームの出場選手はファン投票、選手間投票、監督推薦(監督選抜)により7月1日に出場選手が決まっています。そのあとに行われた『プラスワン投票』で選ばれた“最後の1人”が、9日の16時に発表されました。セ・リーグは阪神の原口文仁選手、パ・リーグは日本ハムの大田泰示選手が最多得票です。

 『プラスワン投票』は2010年、60回大会の特別企画として設けられた出場選手枠で、それ以降も2013年までありました。昨年、5年ぶりに復活したもので、ことしもファン投票と選手間投票、監督選抜の各枠の出場選手が決まったあと、選ばれていない選手の中からセ・パ両リーグ1選手ずつを再びファン投票で選んでいます。ことしは新たにTwitterでの投票も実施されました。時代は移り変わっていくんですねえ。ハガキにせっせと名前を書いて、ポストに投函していた昭和は遠い昔に…。

 話を令和に戻しましょう。ことしの『プラスワン投票』は1日の16時から3日の15:59まで開催され、9日の16時に発表された結果は以下の通り。投票の延べ人数は68950人で、得票総数が115412票だったそうです。

セントラル・リーグ

1 原口文仁(神) 6662票

2 小林誠司(巨) 6277票

3 中川皓太(巨) 5167票

4 西 勇輝(神) 3839票

5 青木宣親(ヤ) 3609票

パシフィック・リーグ

1 大田泰示(日) 15048票

2 源田壮亮(西)  5652票

3 ブラッシュ(楽) 3844票

4 中川圭太(オ)  3699票

5 杉谷拳士(日)  2526票

 セ・リーグの方は原口選手と2位の小林誠司選手の差が385票。かなり際どかったんですねえ。なお断トツの票数を集めた日本ハムの大田選手は腰部周囲筋筋挫傷のため出場を辞退、補充選手として2位の西武・源田壮亮選手が選出されました。

矢野監督「甲子園でホームランを」

 では9日の練習後に行われた原口選手の会見の模様をお伝えします。その前に、先だって取材を受けた矢野監督の談話をご紹介しましょう。

 戻ってきてから頑張ってきたことをファンも見ていたわけですね?「もちろん、もちろん。素晴らしいことやと思うし、まあ甲子園やしね。ファンの皆さんの思いがそうならないと選ばれへんことやったと思うし、うん。すごく光栄なことやと思う。まあそういう姿を見ることで励まされるとか、『フミのことを応援したい!』とか」

 「オールスターってやっぱり特別な場所なんでね、そういうところでまた原口を見られるっていうのは、俺ももちろん楽しみにしているし。まあ普段しぶといバッティングを見せてると思うけど、甲子園でホームラン狙えばいいんじゃない? それが一番。フルスイングしてもらって、うん」

 この時点では本人と会話はしていなかったそうですが、矢野監督も嬉しいでしょうね。もし原口選手の今季1号が甲子園のオールスターで出たら、さらに嬉しいと思います。でも本人は、そこまでの“欲”はなさそうな感じでした。内心はどうか、わかりませんけど。

縁の深い球場で味わえる夢舞台

テレビカメラも記者もかなり多かった会見。ライトに汗をかきながら答えます。
テレビカメラも記者もかなり多かった会見。ライトに汗をかきながら答えます。

 次に、原口選手の会見です。まずテレビのインタビューがありました。その質疑応答を書いておきます。

★今の気持ちは?

 「ほんっとに、嬉しい気持ちでいっぱいですね」

★3年ぶり2度目のオールスター、対戦したい投手、受けてみたい投手があれば教えてください。

 「そうですねえ、誰っていうわけじゃないんですけど、本当にトップレベルの選手が集まる舞台なので、できるなら全員捕ってみたいですし、全員打ってみたいですね」

★3年前は帝京高校の後輩である山崎康晃投手(DeNA)とのバッテリーで話題になりましたが、再び組みたい?

 「まあ特に意識はしていないですけど、そういう機会があるとすれば嬉しい気持ちでいっぱいですし、やっぱり母校の後輩たちはこれからの励みになると思うので、そういう部分では機会があれば嬉しいと思います」

★打席ではどんな姿を見せてくれますか?

 「そうですね、数少ない打席だと思うんですけど、まあ…うーん…そうですね。自分のスイングを3球できるぐらい、しっかり振っていきたいと思います」

★矢野監督から、普段はしぶといバッティングの原口選手ですけど、ホームランを狙ってほしいという話も。

 「なかなか狙っても打てないので、偶然を期待したいと思います(笑)」

★ことしのオールスターは原口選手の地元・関東の東京ドームと本拠地の甲子園。縁のある場所での開催となりますが、そのあたりはいかがでしょうか?

 「小さい頃から東京ドームは父に手を引っ張って連れて行った思い出がある球場。そこでオールスターという舞台に立たせていただいて、小さい頃は夢にも思っていなかったような現実が今あるので、それはすごくファンの皆さんには感謝の気持ちと、嬉しい気持ちです。甲子園球場はタイガースのホームグラウンドで、日本一きれいな球場だと思って日々やっているので、またそういう大きな舞台で甲子園でプレーできるってのは、すごく嬉しいですね」

★夢にも思っていなかった舞台、というお話でしたが、原口選手はことし1月に大腸ガンを公表して、手術もあって、そこから半年も経たずしてオールスター出場をつかんだ。当時、今のご自身の姿はイメージされていましたか?

 「オールスターまではイメージしていなかったので、ほんと多くの方々に支えていただいてサポートしていただいて、またこういう大きな舞台にファンの方々が選んでくださって。本当に感謝の気持ちと幸せな気持ちと、ありがたい気持ちでいっぱいですね」

★支えてくれたご家族には、どのように報告されたんですか?

 「事前に話をいただいた時にLINEですぐ連絡を入れました。(返事は)おめでとうって、ひとことでした」

「欲は出さずに」と言って微笑む原口選手。でもちょっと期待してもいいですかね?
「欲は出さずに」と言って微笑む原口選手。でもちょっと期待してもいいですかね?

★オールスターは全国が注目します。原口選手のように小さい時からプロ野球に憧れる子も、また同じように病気と闘う子も見てくれると思います。改めてどういう姿、プレーを見せたいですか?

 「その期間中は(1日で)1試合だけということもあって、日本中の人たちが注目すると思うので、元気な姿を見せること。結果はあとからついてくるものだと思って、全力で思い切り野球をやっている姿を見てもらいたい」

★ファンの皆さんへメッセージを。

 「こうやって多くの方に票を入れていただいたことに、まず感謝の気持ちで。本当にありがたいです。自分自身は久しぶりのオールスターなので、いい機会に勉強をさせてもらいながら、野球を思い切り楽しめたら最高の結果になるんじゃないかなと思っています」

「半年前を考えたら誰も想像していなかった」

 このあとカメラマンさんの要望で、左手で「プラスワン」の1を、右手でガッツポーズをしての撮影タイム。続いて囲み取材となりました。

★監督推薦の前回とは違う嬉しさがある?

 「そうですね、違う形で選んでいただいて、また嬉しい気持ちですね。シーズン最初から出ている選手もいる中で、こうやって少ない期間に出ただけで選出していただいて、本当にたくさんの方に感謝の気持ちでいっぱいです」

★矢野監督も「特別な場所」での原口選手のプレーを楽しみにしていると。

 「もちろんやっぱりオールスターって、リーグを代表する選手がたくさん集まる中、ちょっと…あまりいい数字ではないのに選んでいただいて。本当に嬉しい気持ちと何とか結果で応えられるように。少ない機会ですけど、元気に楽しんで思いきりやりたいなと思います」

★初めての時は緊張したと思うが、2回目ということで、いろんな選手との話もできそう?

 「いろんなすごい選手がいるので、話をたくさんして。プレーするよりもそういう時間の方が長くなると思う。本当にいい経験と勉強を、またしてきたいと思います」

★前回はフェンス直撃のタイムリー二塁打でしたけど、今回は(フェンスを)越えたい気持ちも?

 「そんな気持ちはないです(笑)」

★全力で楽しんでいる姿を見せることが、原口選手にとって恩返し?

 「本当に半年前を考えたら、誰も想像していなかったと思うので。こうやって元気なところが(テレビに)映ればね、それだけでいいと思うんです。そこまで欲は出さず、元気にやっているところを見てもらえれば、それだけで嬉しいので。そういう気持ちで楽しみたいと思います」

★甲子園で活躍すれば、またお立ち台に立ってパフォーマンスができますね。

 「あれはもうね、1人の時だけ。周りに人がいる時にはあまり出したくないので。1人で最高の時に出せたら」。最後はちょっと苦笑いの原口選手でした。

球宴出場はファンの皆さんからの贈り物

「プラスワン」のポーズで、しっかり目線をいただきました!
「プラスワン」のポーズで、しっかり目線をいただきました!

 病気を公表してから、原口選手が絶対に戻りたかった“場所”はいくつかあったと思います。それはもちろん1軍であり、甲子園のお立ち台もしかり。とはいえ、オールスターゲームに出られるとは思っていなかったでしょうね。だから、最後の最後に届いた『プラスワン投票』での出場切符は、まぎれもなくファンの皆さんが贈ってくださったプレゼントです!頑張る原口選手へのプレゼント。それに対する感謝の思いは、3年ぶりの夢舞台で必ず見せてくれると思いますよ。

 ただ、複雑な心境で結果発表をご覧になったファンの方もいらっしゃるんですね。投票はしたけれど、もしかしたら少しでも休ませてあげた方がよかったのでは…と。わかります。私もそう思いました。でも、これは本人にとって何よりのお薬なんですよ、きっと。会見で何度も口にした「元気で野球をする姿を見てもらえたら嬉しい」という思い。それですべてが伝わるような気もします。感謝も、エールも。だから力いっぱいバットを振って、必死で走って、ベンチで笑う原口選手を、ぜひご覧になってください。

 最後に、3年前のこんな記事を貼っておきます。ものすごい投票数に感謝の言葉を伝えたいので、記事を書いてほしいと原口選手自ら言ってきたもの。あの時、本人は監督推薦で出られると思っていなかったんですよね。→阪神・原口文仁選手から「ファン投票で僕に入れてくださった皆様へ」

    <掲載写真は筆者撮影>

フリーアナウンサー、フリーライター

兵庫県加古川市出身。MBSラジオのプロ野球ナイター中継や『太田幸司のスポーツナウ』など、スポーツ番組にレギュラー出演したことが縁で阪神タイガースと関わって約40年。GAORAのウエスタンリーグ中継では実況にも挑戦。それからタイガースのファームを取材するようになり、はや30年が経ちました。2005年からスポニチのウェブサイトで連載していた『岡本育子の小虎日記』を新装開店。「ファームの母」と言われて数十年、母ではもう厚かましい年齢になってしまいましたが…1軍で活躍する選手の“小虎時代”や、これから1軍を目指す若虎、さらには退団後の元小虎たちの近況などもお伝えします。まだまだ母のつもりで!

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