いつも通り、全員で戦って獲った日本一!「楽しかった」と矢野監督《阪神ファーム》
きょう8日から宮崎県各地で『第15回みやざきフェニックス・リーグ』が始まります。ことしもNPB12球団(ウエスタンとイースタン)、四国アイランドリーグplus選抜、韓国の3球団(ハンファ、斗山、サムスン)の合わせて16チームが参加し、29日まで計144試合が行われる予定。阪神は南郷スタジアムでの西武戦からスタートです。
その前に、きょうもまた6日に開催されたファーム日本選手権の続きで、今回は矢野監督が語られた話をドーンとご紹介しましょう。胴上げのあと行われた勝利監督インタビュー、表彰式や記念撮影などのセレモニーが終わってから室内で受けたテレビのインタビュー、そして記者陣による囲み取材での談話と続きます。
なお試合結果や選手コメントは、こちらからご覧いただけます。→<12年ぶりのファーム日本一!仙台育英OBが独占した表彰式>
「うちらしい野球ができた」と誇る指揮官
では最初に、グラウンド上での勝利監督インタビューをどうぞ。監督なのに、なぜユニホームが汚れているのか?理由は写真でご確認ください。
★おめでとうございます。
「ありがとうございます!」
★優勝を決めた今の気持ちを教えていただけますか?
「本当にね、1年間戦った選手たちがいいプレーを見せてくれたので、心の底から嬉しいです。ありがとうございます!」
★まず打線、4回の逆転劇はお見事でした。
「そうですね、うちが勝つのであれば接戦になるかなと勝手な予想をしていたんですけど、本当にみんながよくつないで、ことしは“超積極的”にやろうということで、みんなボールに食らいついていってくれました」
★ファーム日本一を賭けた。この試合でもいつも通り、ことし取り組んできたことを出せたのでは?
「そうですね。その試合をやりながら勝てたってのが本当に嬉しいです。一塁までもしっかりと走ってくれましたし、盗塁も見事に決めてくれましたし。本当にうちらしい野球ができました」
★ピッチャーでは、ルーキーの馬場投手が6回から見事なピッチングを見せてくれましたね。
「中継ぎってあまりやっていないので、イニングの頭から、打たれても抑えても馬場にはいい経験になると思っていたけど、そこまでのピッチャーがいい形でつないでくれましたね」
この選手たちを信じて、強いチームを!
★タイガースからすると久しぶりのウエスタン優勝、そこからジャイアンツを倒してのファーム日本一です。改めて今シーズンを振り返っていかがですか?
「僕はね、選手たちの可能性を広げることを意識して1年間やってきたんですけど、ここにいる選手たちがすごく可能性を持った選手たちだと、きょうファンの皆さんに見ていただいたと思います。1軍は苦しんでいますけど、ここで野球をやるためにみんな阪神に入ったわけじゃないので近い将来、ここで頑張っていた選手が1軍で頑張っている姿をファンの皆さんにも見ていただいて、一緒に喜びあいたいなと思います」
★リーグ制覇の時は相手(マジック対象)チームが敗れての胴上げでしたが、しっかり勝っての胴上げ。宙を舞った感想は?
「前回はやらせのような胴上げだったので(笑)、今回は本当に気持ちいい胴上げでした」
★今後について、ファンの皆さんへ。
「1軍は本当に今、苦しいチーム状況ですけど、将来を見据えた時に楽しみな選手がたくさん出てきていると、僕は信じています。ファンの人もこの選手たちを信じてもらって、一緒に強いチームを作っていきましょう!よろしくお願いします」
出場しない選手も含め、全員で勝ち取った日本一
続いて、テレビのインタビュー。これはすべての行事が終わってから室内で行われたものです。
★優勝おめでとうございます。「ありがとうございます。本当にメチャクチャ嬉しいですし、うちの野球がしっかりできて勝てたっていうのが、より嬉しいですね」
★胴上げされた気分は?
「リーグ優勝はね、相手が負けての優勝なので微妙な感じだったんですけど、きょうは勝って胴上げしてもらえて、なんていうんですかね、もう最高の胴上げになりました」
★きょうの試合を振り返って、監督の求めていた野球とリンクする部分はありますか?
「ピッチャーはどんどん向かっていって、バッターは初球から振る準備して、次の塁を狙って。ことしやってきたことを、みんなそのままやってくれました。試合前もチームとして恒例なんですけど、小豆畑がベンチ前で声を出してくれて、あまりウケないんですけど(笑)。そのあと西田が入って、今度はおもしろい話をしてくれて、チームのムードを作ってくれて。そこからスタートして、そういう流れでチーム全員で戦えた。本当にみんなの力で勝てたかなと思います」
★“超積極的”というテーマでやってきた今季。きょうの試合でも?
「(熊谷)敬宥が走ったのもそうですし、タイムリーもそうですし。荒木もそうですし、名前を挙げればきりがないんですけど。それはもう今の選手にとっては、ある程度当たり前ぐらいのレベルに、この1年でなってくれましたし。だから、きょうの日本選手権で何か特別にやろうとするのではなくて、そういうことが当たり前のレベルにまで上がった試合を見せられたと思うので。本当にみんな超積極的にやってくれました」
★1年かけてやってきたことが、きょうの試合に出せた?
「そうですね。本当に思っている以上の試合ができましたし、1軍はちょっと苦しい状況の中、少しだけですけどタイガースファンの人に喜んでもらえるようなことができたんで。それも含めて、いい試合だったと思います」
★小豆畑選手、西田選手の名前が出てきましたが、MVPを挙げるとしたら?
「MVPはその2人でしょう。それが、うちらしい野球というか。打って走って投げて、そういうのも、ことしのタイガースらしいと思う。そういう選手がムードを作ってくれて、それも大きな原動力なので、ある意味その2人が一番。試合に出たいと思うんですけどね、そういう部分をやってくれたっていうのは本当にチームにとっては中心的だった」
“嬉しい”連発の囲み取材でした
最後は、新聞などの記者陣による囲み取材での話です。
★いつも通りの野球をしてくれた選手たち。それが本当の強さでは?
「当たり前のレベルを上げようぜ!と言ってきて、ここでそれをちゃんとやってくれたというのは、そういうレベルが上がった部分でもあるだろうし。一塁まで走ること、初球から打つこと、次の塁を狙うこと、盗塁すること。すべてが1年間やって、みんなの中では当たり前のレベルまで上がってきているので。特別にきょう、ファーム日本選手権やから何か違うことをやろうってのはなかったと思う。そういうふうに、みんなが思ってやってくれた、証明してくれたのは俺もすごく嬉しい。それが選手の可能性を広げることだと信じて1年間やったので。俺が感謝っておかしいけど感謝しているし、可能性があるとつくづく思うね」
★現役時代になれなかった日本一、監督として達成しましたね。
「なあ、ビックリするやろ?ほんと大学も準優勝やし、(プロで)リーグ優勝2回やし、日本一は一回もなかったから。まさか2軍監督をやって1年目に、こんな経験をさせてもらえるなんて。またそこを目標にはしていなかったけど。その部分でスタッフも、特にコーチも、本当にやりやすかった。それも俺の中ではすごく嬉しい。さっきも小豆畑や西田の話を出したけど、なんかこうチームから外れてしまうことがなく、ディレクターやトレーナーを含め、みんなで戦えたっていうので、たまたまかもしれんけど結果が出たのは、さらに嬉しい。メチャクチャ充実してる」
★4回の大逆転は、1軍から落ちたばかりの高山選手が初球を打って作ったチャンス。
「それまでもいい当たりを打っていたしね。俊自身も今までの野球人生で経験したことがない、苦しい悔しいシーズンだったと思う。その中でもう一度、奮い立たせるのは簡単なことじゃないと想像できる。落ちてきて話をした時、俺はそこにもすごく(高山選手の)成長を感じて。落ちてきた時は、ガックリして試合にもあまり使わん方がいいのかなと思ったけど、前に向いているというか。俺も頑張って1年間伝えてきたつもりだったんだけど、前にちゃんと向けているのは嬉しかった」
「だから、もちろんプロは結果だけど、そういう気持ちでやっていたら、俊も間違いなくうまくなる方向にいくと思う。そういうのが嬉しいやん。結果として勝つのも嬉しいんだけど、みんなが成長しているなと思って。後ろ向きにならずにね。俺もずっと『終わったことより、これからやで』『三振して引きずられて次の打席に向かってもよくない』『フォアボールを出して次のバッターを迎えるのもよくない』と、終わったことは反省なりをして、今は前に向かっていかないと。それで俊を心配していたんだけど、そんなことなかった。ヒットも嬉しいし、そういうのも嬉しい」
「こんなにいいシーズンになるとは夢にも思わなかった」
★中堅選手の頑張りも勝因?
「本当にね、感謝しかないのよ。中堅、ベテランには。リーグ優勝でも言ったように、そこらへんが腐るとチームとしてすごくマイナスなんだけど、みんな率先してやってくれたし、俺が直接『頼むぞ』と(西岡)剛や荒木に言ったわけではないのよ。こうやって可能性を広げていくぞ、と話している中で、みんなが本当にやってくれた。チーム内で、一塁までしっかり走ったら『ナイスラン!』とか、しっかり振れたら『グッドスイング!』とかさ。結果もだけどプロセスも大事で、そういうのを中堅、ベテランが率先してやってくれた。若手は絶対それについていくしね。だから本当にみんなが、かかわってくれた。うん、楽しかった」
★MVPの熊谷選手、改めてこういう舞台で輝く選手だと思いますが。
「もちろん、もちろん。いい盗塁もしたし。でもまだまだプロの中でレギュラーとしてやっていくには、力不足な部分がはっきり見えたと思うから。この秋でさらに成長してね。ショートは北條がケガしたり、植田海も今苦しんだりしているので、この秋でしっかり競争の中に入っていって。顔もいいし!足もいいし。あとは打って守っての部分をしっかりやっていければ勝負できると思う」
「浜地にしたって、表に闘志が出ないんだけど、内面は結構燃えてるのよ。だからケガで苦しんだけど、まだまだレベルの上がるピッチャーやし、馬場にしてもそう。楽しみな選手がたくさんいる」
★勝って実現した胴上げですが、最後は落とされたんですか?
「俺はわからん(笑)。落とされたんか落ちたんか知らんけど。いやもう何してくれても嬉しいもん!」
★マウンドに立った時は?
「ユニホーム汚れると思ってなかったよ。監督で」という答えで、みんな大笑い。「でもいい思い出になったし、最後は(長坂)拳弥がウイニングボールもくれたり。1つ1つがすべていい思い出になった。こんなにいいシーズンになるとは夢にも思わなかった。結果だけじゃなく中身が。それは本当に嬉しいし、何回も言うけどすごく感謝してる」
自分の可能性を広げることだけ考えて
★全日程が終わり、8日からフェニックス・リーグが始まります。改めて、と話を振られ「なあ…どうしよう?」と矢野監督。笑いが起きたあと、いつもの監督らしい言葉が続きました。
「まあやることは変わらへんねん。いつも選手に言ってきたけど、1軍やから、2軍やから、雨が降っているから、球場が変わるから、お客さんが入っているから、入ってないから。そんなこと関係なく、いつも俺らのやることをやろうぜって。それが一番強いやろ?って。そういうのに流される選手にならず、逆にお客さんが入ってない時に燃えてやったらすごいやん。それを伝えてきたつもりやから、フェニックス・リーグになったって、そんなに心配していない。選手たちのモチベーションが下がるとか、それが隙になるとか、そういうことはないなと俺は思っている」
「ことしやってきたことを、さらに明確に自分がこうやってやるんだとチャレンジできる場やと思うから、自分の可能性を広げることだけ考えて。チームのためになろうなんて、今の選手は思わなくていい。レギュラーになってから考えりゃいいので。今はどれだけ自分をアピールするか。俺ってこんな選手やねん!って、俺を使ってくれ!って、どんどん自己アピールできるようなフェニックスにしてくれたらいいと思う」
★いろんな境遇で臨む選手がいますね。
「監督としては、みんなを頑張らせるのが俺の仕事やから。誰か1人頑張れよではないねん。もちろん藤谷はピッチャーから野手になって、多くチャンスを与えてやりたいと思うけど。監督としては全体を見て、コーチに守備だったりバッティングを見てもらいながら全体を上げるのが俺の仕事やから。みんなの競争が激しくなれば、どっちも生きるはず。みんなを底上げできるように頑張ります」
以上が6日の矢野監督の談話集です。
フェニックス・リーグに関しての話は、何だか惜別のエールみたいに思えて寂しかったんですけど、最後は「監督として」という締めでホッとしました。そういえば昨年のフェニックス・リーグも、10年ぶりに優勝したんですよね。まあ矢野監督が合流した終盤は雨天中止も多く、その間に決まった優勝ですけど…。そして今季はリーグ優勝と12年ぶりの日本一!ことしのフェニックスも楽しみにしましょう。締めくくりも超積極的野球で。
<掲載写真は筆者撮影>