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12年ぶりのファーム日本一!仙台育英OBが独占した表彰式《阪神ファーム》 

岡本育子フリーアナウンサー、フリーライター
MVPの熊谷選手(中)、優秀選手の馬場投手(右)と橋本到選手(左)。

 きのう6日、台風25号の影響が心配された宮崎は朝から青空となり、阪神タイガースが8年ぶりに進出した『ファーム日本選手権』は、予定通り宮崎県総合運動公園のKIRISHIMAサンマリンスタジアムで開催されました。ただし練習は前日と同じく、運動公園内の木の花ドームで行われ、打撃練習の終盤には矢野監督と高橋投手コーチが並んで打撃投手を務めました。なかなかお目にかかれない光景です。

 矢野監督いわく「コーチ陣がみんな疲れて、ヒジが上がらへんから。マシンがないので、2か所で打つには2人ずつで投げんとあかんやろ?去年のフェニックスで投げて以来かなあ」とのこと。確かに、もともとファームは打撃投手の人も少ないうえ、今回のように打撃用のマシンがないと大変ですね。

 サンマリンスタジアムへ移動すると、サイン会を待つ方々や地元の野球チームに所属する少年少女たちで、入口付近は大にぎわいでした。打撃練習はなかったものの、シートノックはグラウンドで行われたので、早くから詰めかけたお客様もご覧になれてよかったですね。開会セレモニーでは、恒例のアオダモの植樹があり、阪神は熊谷選手、巨人は松原選手の"仙台育英"コンビが担当しています。

《ファーム日本選手権》10月6日

ファーム日本選手権の開会式。
ファーム日本選手権の開会式。

阪神-巨人 (宮崎サンマリン)

 巨人 000 120 001 = 4

 阪神 000 602 00X = 8

◆バッテリー

【阪神】浜地-○飯田-尾仲-馬場-伊藤和 / 長坂

【巨人】●高田(3回0/3)-戸根(1回)-大江(2回)-桜井(2回) / 田中貴

◆本塁打 神:江越2ラン(大江) 巨:増田ソロ(伊藤和)

◆二塁打 神:高山 巨:和田恋、橋本到

◆盗塁 神:熊谷

◆打撃  (打-安-点/振-球/盗/失) 打率

1]中:江越  (3-1-2 / 0-1 / 0 / 0) .333

2]二:荒木  (3-0-0 / 1-1 / 0 / 0) .000

3]左:高山  (3-1-0 / 1-1 / 0 / 0) .333

4]右:板山  (4-1-1 / 0-0 / 0 / 0) .250

5]三:今成  (4-1-0 / 0-0 / 0 / 0) .250

6]指:緒方  (2-0-0 / 2-1 / 0 / 0) .000

〃打指:西田 (1-0-0 / 0-0 / 0 / 0) .000

7]一:山崎  (3-0-1 / 0-1 / 0 / 0) .000

8]捕:長坂  (4-1-0 / 2-0 / 0 / 0) .250

9]遊:熊谷  (3-2-1 / 0-0 / 1 / 0) .667

◆投手 (安-振-球/失-自/防御率) 最速キロ

浜地 3.1回 47球 (4-1-0 / 1-1 / 2.70) 147

飯田 1.1回 33球 (2-3-2 / 2-2 /13.50)144

尾仲 0.1回 2球 (0-0-0 / 0-0 / 0.00) 145

馬場  3回 40球 (0-3-1 / 0-0 / 0.00) 146

伊藤和 1回 25球 (1-1-0 / 1-1 / 9.00) 144

《試合経過》※敬称略

熊谷選手は4回にタイムリー!
熊谷選手は4回にタイムリー!
荒木選手がレフトへ大きな当たり!これで3人が生還しました。
荒木選手がレフトへ大きな当たり!これで3人が生還しました。
荒木選手も三塁へ。この時点では“エラー”だと気づいていない?…幻の3打点ですね。
荒木選手も三塁へ。この時点では“エラー”だと気づいていない?…幻の3打点ですね。

 浜地は3回まで2安打無失点、巨人の高田も3回を終えて1安打1四球(3回2死から熊谷が中前打して盗塁成功)で無失点という序盤。しかし4回に試合が動きました。まず浜地が先頭の橋本至に中前打され、続く4番・和田恋に左中間への二塁打を浴びて1点を失います。1死を取ったところで降板。代わった飯田が宇佐美に四球を与え1死一、三塁とするも北村は三振、宇佐美を長坂からの送球で挟んで刺し併殺!最少失点でとどめました。

 するとその裏、先頭・高山が初球を打って右翼線二塁打、板山の中前タイムリーであっさり同点。今成も初球を右前打して板山は三塁へ。緒方は四球を選び満塁となって山崎が押し出しの死球。これが勝ち越し点です。ここで高田から戸根へスイッチしますが、1死後に熊谷が左前タイムリー!なおも満塁で2死後となったあと、荒木がレフトへ大きな当たりを放って走者一掃!一気に三塁を陥れた荒木ながら…スコアボードには「E」の表示。

 レフトの石川が何とかグラブに当てた、という打球だったんですけど記録はエラーのようで。チェンジで戻り、それを今成に説明された荒木は苦笑いでした。大きな大きな追加点なのに、幻の三塁打と3打点となっています。いや~気の毒すぎますよね。

江越選手がセンターバックスクリーンへの2ラン!
江越選手がセンターバックスクリーンへの2ラン!
引退を表明している巨人・脇谷選手は9回に代打で登場。一ゴロに倒れ、ベンチへ戻る際に深々と一礼。ブルペンの阪神投手陣も拍手を送ります。
引退を表明している巨人・脇谷選手は9回に代打で登場。一ゴロに倒れ、ベンチへ戻る際に深々と一礼。ブルペンの阪神投手陣も拍手を送ります。

 6対1と大逆転した阪神ですが、5回に飯田は連続三振から松原に四球を与えると若林の中前打、橋本到の一塁線を破るタイムリー二塁打で2点を返されて交代。尾仲が2球で抑えたものの、6対3と微妙な点差に変わりました。しかし6回、4人目の馬場が三者凡退に切って取り、その裏に長坂の左前打と熊谷の犠打、そして江越がセンターバックスクリーンへ飛び込む文句なしの2ラン!これで8対3です。

 馬場は7回も1四球のみで無失点、さらに8回も橋本到、和田恋、石川のクリーンアップを三者凡退に切って取り、守護神・伊藤和に託します。9回、伊藤和はまず宇佐美を捕邪飛に。これが引退試合となる代打・脇谷を一ゴロに。ついで代打・増田にはなんとレフトへのホームランを浴びてしまいますが、最後は山本を空振り三振に仕留めて試合が終わりました。

約束通り、勝って胴上げ!

試合終了!バッテリーのところへ今成選手がやってきます。
試合終了!バッテリーのところへ今成選手がやってきます。
ベンチにいた選手たちも次々と出てきました。
ベンチにいた選手たちも次々と出てきました。
おしくらまんじゅう?集まって何か相談でもしているのかな。
おしくらまんじゅう?集まって何か相談でもしているのかな。
バースデー胴上げ。今成選手(左)と谷川投手(右)。
バースデー胴上げ。今成選手(左)と谷川投手(右)。

 ちょっと照れたような伊藤和投手のもとへ長坂選手が駆け寄り、選手たちの輪ができます。やがてベンチから矢野監督やコーチ陣が姿を現し、ゆっくりとマウンドの方へ。輪の中央に立った矢野監督がバンザイのように両手を上げて身をゆだねると、胴上げ開始!8回いくかなと思ったら、やっぱり4回で力尽きた感じですね。降ろされた矢野監督はそのまま地面に放置(笑)。うつぶせに体勢を変えて、笑いながら起き上りました。

 また、この日がバースデーだった今成選手と谷川投手も胴上げされています。今成選手の表情が最高でしょう?この時はまだ知らなかったのですが…きょう7日の夕方、今成選手と来季の契約をしない旨が、球団から発表されました。西田選手もです。その報を受けて今回の写真を見ると、みんなの笑顔が切ないですね。

 6日の話に戻ります。胴上げのあと勝利監督インタビューが行われ、ヒーローとして阪神の馬場投手と熊谷選手がインタビューを受けました。続いて表彰式。まず優秀選手(賞金20万円)は阪神の馬場投手と巨人の橋本到選手、最優秀選手賞(50万円)は阪神の熊谷選手が選ばれています。

 なお、矢野監督の勝利監督インタビュー、テレビ用のインタビュー、そして記者による取材での談話は、次の記事でまとめて書かせていただきます。お待ちください。きょうは選手のコメントをご紹介しましょう。

浜地投手、江越選手、板山選手

 まず、先発した浜地投手は「緊張感はありましたけど、緊張して固くなることはなかったです。こういう大事な試合に先発させてもらって、自分の結果だけで言うと満足していませんが、勝てばいい試合だったので結果としてチームが勝ったのはよかったです」と話しています。

先発の浜地投手。「抑えても打たれてもいい経験」と矢野監督は言います。
先発の浜地投手。「抑えても打たれてもいい経験」と矢野監督は言います。

 この日は台風で大変な中、福岡からご両親と弟さんが来られていました。浜地投手が交代したあとも最後の記念撮影までご覧になっていたようです。お父さんは久々の観戦で、高校3年の弟さんは野球部引退後に鳴尾浜で試合を見て以来。お母さんは途中で降板したため「すみません、ご迷惑をおかけして」と何度もおっしゃって、あとを0点に抑えてくれた飯田投手にも感謝されていました。

 来年は1軍の交流戦でヤフオクドームへ投げる姿を見られますように。

 また6回に豪快な2ランを放った江越選手。「打ったのはストレートです。チャンスの場面で積極的に振っていこうと思っていました。ことし1年、チームとして積極的にいくというのを課題にしていたので、それがきょうの試合でもできてよかったです」

2ランを放って生還した江越選手(左)。迎える長坂選手(手前)と筒井コーチ(右)。
2ランを放って生還した江越選手(左)。迎える長坂選手(手前)と筒井コーチ(右)。

 板山選手は、4回の同点タイムリーを振り返り「チャンスだったので還そうと思った中で、追い込まれちゃったんですけど、低めの変化球にうまく対応できた。ああいうバッティングができれば、もうちょっと率も上がってくるんじゃないかなと思っています」と言います。勝って胴上げできましたね。「そうですね。やっぱり勝負事は負けたら悔しいので。1年間やってきて、こうやってまた胴上げできて嬉しかったです」

 4番として、劣勢の中の同点打だった。仕事ができたという気持ち?「そうですね。早い段階で追いつきたいってところで高山が、ああやってチャンスを作ってくれたので。最低でも進めたいと思いながら、うまく対応できた。それがタイムリーになってくれてよかったです」

ここで満足せず上を目指して

 次に、MVPを獲得した熊谷選手。「MVPを獲りたいっていう強い気持ちは持っていましたけど、そこまでは。2本目を打った時も“俺だ!”とは思わなかった」。小さくガッツポーズしていましたけど、やっぱりチームに貢献できたのが嬉しかった?「そうですね。追加点だったので。そのあともちゃんと、つながっていきましたし。そういうとこでも」

 走攻守で自分の持ち味が出せたのでは?「いいプレーができましたし。1年間トータルで見て、ミスも多くありましたけど、きょうはいいプレーができたかなと思います。そしてまた日本一という形で終われたのでよかったです」。賞金50万円と商品券10万円分、どうしますか?「貯めます」。た、貯める?(笑)。「そんなに使えないんで」。みんなで食事に行くとか。「予定ないです」

タイムリーを放って、一塁で筒井コーチに笑顔を見せる熊谷選手。
タイムリーを放って、一塁で筒井コーチに笑顔を見せる熊谷選手。

 仙台育英の先輩・橋本到選手が5回に2点タイムリー二塁打を放って、二塁に到達したとき何か会話をしていた?「ナイスバッティングって言われました」。ああ、言われたんですね。「到さんに関しては偉大な先輩なので御話できて嬉しいですし、松原さんは友だちなので…そこまで(笑)」。いやいや、松原選手に失礼でしょう。前日練習の時も、挨拶をしたら「熊谷、来てますか?」と真っ先に質問されましたよ。それでも「松原さんは」と言ったところで止まり「松原さん、じゃなくて"くん"です。だって友だちなんで」と繰り返す熊谷選手。

 橋本到先輩と、同級生の馬場投手と3人が独占した表彰式。「仙台育英の名前を少しでも知ってもらえたので、よかったと思います。ここで満足せずに、上を目指して頑張っていきたいです」。フェニックスリーグに向けては「まだ野球ができるので、しっかり自分のためになるようやっていきます。あとは1軍で自分が活躍するために何が必要か、考えてやっていきたい」と話していました。

勝つために、という意識で投げた3イニング

 最後は馬場投手です。高橋コーチが「彼は投球術でうまく野球に入れるという。オンとオフができるので、きょうはそれがいいようにいったように思います。ヒーローインタビューで変化球がよかったと言ってましたけど、これからは真っすぐの強さというのを求めていきたいところですね」と話していました。

6回からの3イニングを無安打無失点の馬場投手。
6回からの3イニングを無安打無失点の馬場投手。

 馬場投手本人は「6回から投げるのは前回のBCリーグの時もあったんですが、きょう投げていて何か、あっという間だったような。あとは1人1人しっかり抑えるっていう気持ちで投げたので、特にペース配分もしなかったですし。ほんと勝つためにという意識を大事にして投げました」という感想。3イニングというのは言われていた?「知らないです。ベンチに帰ってきて、次も行くのかという感じですね」

 そして「先発じゃないのでアバウトにいくというか、際どいところを攻めるっていう感覚はなかったです。腕の振りをストレートと同じように。変化球の曲がりとか全然気にしていなかった。とにかく腕を振ることでバッターは嫌がるんで、全力で体を使って投げたのが結果的によかったと思います」と振り返った登板。

2ランを放った江越選手を迎え、笑顔の馬場投手(中央)。今成選手(右奥)も大喜びですね。
2ランを放った江越選手を迎え、笑顔の馬場投手(中央)。今成選手(右奥)も大喜びですね。

 日本一を賭けた戦いだったことに「投げていて真剣でしたし、こういう経験ができたのは今後にも生きると思う。優勝できてよかったです」と少し笑顔も出ました。表彰されたのが全員、仙台育英OBだったことは?「はい、気づいていました(笑)」。その橋本到先輩から空振り三振を奪っていますね。「うーん…そこまで頭が回っていませんでした」。なるほど。ちなみに賞金はどうしますか?「まだ考えてないです」。しばらくして、また聞いてみましょう。

 ※この日の試合後に聞いた矢野監督の談話集は、こちらからご覧いただけます。→<いつも通り、全員で戦って獲った日本一!「楽しかった」と矢野監督>

    <掲載写真は筆者撮影>

フリーアナウンサー、フリーライター

兵庫県加古川市出身。MBSラジオのプロ野球ナイター中継や『太田幸司のスポーツナウ』など、スポーツ番組にレギュラー出演したことが縁で阪神タイガースと関わって約40年。GAORAのウエスタンリーグ中継では実況にも挑戦。それからタイガースのファームを取材するようになり、はや30年が経ちました。2005年からスポニチのウェブサイトで連載していた『岡本育子の小虎日記』を新装開店。「ファームの母」と言われて数十年、母ではもう厚かましい年齢になってしまいましたが…1軍で活躍する選手の“小虎時代”や、これから1軍を目指す若虎、さらには退団後の元小虎たちの近況などもお伝えします。まだまだ母のつもりで!

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