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伊藤和雄投手が支配下登録 背番号92で「球児さんのように」

岡本育子フリーアナウンサー、フリーライター

3年目・伊藤和雄投手(24)の支配下登録が、11日に球団から発表されました。キャンプ、オープン戦の頃から話題に上っていたので、満を持してという感じですね。開幕前に支配下選手復帰の声も聞かれましたが、ちょうど右肩の張りで戦列を離れていたから今になったのでしょうか。もちろん憶測でしかありませんけど。

そして甲子園で今季初の巨人戦が行われる11日に公示、背番号は117から92に変更です。同時に出場選手登録され、伊藤和投手はルーキーだった2012年10月以来の1軍昇格となりました。試合前の練習が終わった時に球場内で囲み取材が行われたので、その話をご紹介します。いつも通り、穏やかな口調でした。

「武器の直球で攻めていきたい」

今の気持ちを聞かれた伊藤和投手は「去年、育成選手と言われて本当に悔しくて…何とか這い上がろうと思ってやってきたんですが、きょう支配下選手に戻れてうれしいです。ホッとしています」と答えました。もう周囲の方々には連絡を?「まず両親に電話して、(東京国際大の)古葉監督や(坂戸西)高校の監督とかに電話しました」。ご両親には「よかったな。これからが勝負だから頑張れよ」と激励されたそうです。

育成選手を経験して「悔しい思いで、何とか這い上がろうという気持ちが強くなった」という伊藤和投手。開幕前の登録も期待していたのでは?「正直、開幕1軍ってのはそれほど。今シーズン中に絶対支配下とは思っていましたけど、開幕にこだわりはなかった」そうです。この段階での登録には「予想より早い方かな思います」とのこと。

1軍投手陣に不安がある時期、しかも巨人戦というタイミングでの登録と昇格で「三振を取れるのが自分のいいところなので、三振を取っていい流れを作れたら」と話しています。そして「武器である真っすぐでどんどん攻めるピッチングで、チームの勝利に貢献できるように」と意気込みを語りました。

最後に、新しい背番号92はどうか尋ねると「球団の方も(藤川)球児さんの番号だったから、期待していると言われたので、球児さんみたいになりたいと思います!」と頼もしい返事。この日の試合は先発・メッセンジャー投手の好投もあり出番は訪れなかった“92”でしたが、近いうちにお披露目できるでしょう。

2日の鳴尾浜での伊藤和投手。これが117のユニホームの撮り納めだったんですね!
2日の鳴尾浜での伊藤和投手。これが117のユニホームの撮り納めだったんですね!

練習が終わった直後の取材だったため、伊藤和投手はユニホームの上に黒いトレーナーを着ていたんですよね。よって私には新しい背番号の写真が撮れず…。なので先日も掲載したのですけど、右肩の張りから復帰した2日のとってもいい笑顔の写真をもう一度ご覧いただきました。背番号117です。

それから、ちょっと懐かしい写真も。1年目の2012年12月、シーズンを終えて参加した台湾の『アジア・ウインター・ベースボール・リーグ』でのものです。アンダーシャツの首のところに「17」の刺繍がありますね。1年目の伊藤投手は9月30日に初昇格して10月3日の中日戦(ナゴヤドーム)で1軍初登板。しかし4回7安打4失点という苦いデビューで、投げたのはこの1試合だけでした。そのあとのフェニックスリーグでは3試合に先発して、6回5安打3失点、6回10安打11失点、5回6安打2失点という内容…。でもこの期間に球速は146キロを計測しています。

そして台湾では3度の先発を含む4試合に登板。開幕戦は先発して5回1/3を投げ7安打5失点と崩れましたが、以降の3試合(うち先発2)は無失点。最後の試合は散発の3安打と3四球による走者のみ、三塁を踏ませずのピッチング!日本チームどころか、リーグ全体でも初の完封勝利を挙げ、この試合のMVPも獲得しました。

2012年の台湾ウインターリーグ。この数日後に“プロ初完封勝利”がありました。
2012年の台湾ウインターリーグ。この数日後に“プロ初完封勝利”がありました。

当時の原稿に、私は『台湾プロ野球の公式サイトに伊藤和投手の写真があり「最速は141キロながら、非常にエキサイティングだった」みたいな記事が出ていました。とにかく走者を出してからが課題だった伊藤和投手だけに、これは素晴らしい経験でしょう。9イニングも、143球もプロに入ってからは初めて』と書いています。

1軍でも三振奪取に期待!

ところが2年目のシーズンは右ひじの痛みもあり「思うようなピッチングができなかった」と伊藤和投手。球速が140キロに達しない試合も多かったですね。でも後半は順調に投げ、この年のフェニックスリーグで中継ぎとして5試合に登板。練習試合のみ失点していますが、それ以外のリーグ戦は計4イニングで1安打無失点でした。

ことしに入ってからの好調ぶりはご存じでしょう。2月の安芸キャンプ練習試合、3月の教育リーグ、1軍のオープン戦、ヤクルトとの練習試合、さらにファーム開幕後の育成試合と公式戦を全部合わせて、13試合にリリーフ登板した伊藤和投手。計21イニングを投げ、8安打9四死球で無失点です。何といっても、ほぼ毎試合奪っている三振(唯一、甲子園で行われた巨人とのオープン戦だけ三振なし)は、合計37個というのがすごい!

普段はとても穏やかで、静かに笑っている雰囲気ですが「追い込んだら常に三振は狙う」とか、真っすぐが自分の武器だと話す時は顔つきが変わります。育成契約となったことを淡々と語りながら、胸中に秘めた悔しさは相当なものだったはず。2ケタになっても入団時よりずっと重い背番号ではあるけど、いつか藤川球児投手のような守護神となって活躍してほしいと思います。神様がそう言っているんですよ、きっと。

フリーアナウンサー、フリーライター

兵庫県加古川市出身。MBSラジオのプロ野球ナイター中継や『太田幸司のスポーツナウ』など、スポーツ番組にレギュラー出演したことが縁で阪神タイガースと関わって約40年。GAORAのウエスタンリーグ中継では実況にも挑戦。それからタイガースのファームを取材するようになり、はや30年が経ちました。2005年からスポニチのウェブサイトで連載していた『岡本育子の小虎日記』を新装開店。「ファームの母」と言われて数十年、母ではもう厚かましい年齢になってしまいましたが…1軍で活躍する選手の“小虎時代”や、これから1軍を目指す若虎、さらには退団後の元小虎たちの近況などもお伝えします。まだまだ母のつもりで!

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