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バカッターの次は「バカスタグラム」流行? 変わる“バイトテロ”の発火点

岡田有花フリーランス記者
TwitterとInstagramのアイコン(筆者撮影)

 「すき家」の店員が股間に調理器具をあてがい「くら寿司」の店員が捨てた魚を拾ってまな板に戻す……1月から2月にかけ、アルバイト店員などが店内で不適切な行為をした動画がネットで“炎上”し、運営企業が謝罪する事態が相次いだ。

 問題の動画はTwitterなどで拡散したため「バカッター」とも呼ばれたが、実際は、Instagramの「ストーリーズ」に投稿された動画がTwitterなどに転載されて広がった。「バカッターではなく『バカスタグラム』だ」との指摘もあり、「バカスタグラム」という言葉が定着しつつある。

 2013年には「バカッター」が流行語大賞の候補語にノミネートされたが、今年は「バカスタグラム」が流行語になってしまうのだろうか――。

10年前はmixiやニコ動

 不適切投稿が行われる場は、SNSの変遷に伴って変化してきた。

 10年前は、「ニコニコ動画」や「YouTube」「mixi」に投稿されていた。例えば、2007年、吉野家の店員とみられる人が店舗の厨房で豚丼を山盛りした「テラ豚丼」を作った様子を投稿して炎上した騒動の発火元はニコニコ動画、ケンタッキーフライドチキンの元アルバイト店員を名乗る男性が、「店内でゴキブリ揚げた」と虚偽の書き込みをしたとされる先はmixi日記だった。

 その後、“発火点”はTwitterやFacebookに移動。2011年には、ウェスティンホテル東京のアルバイト店員が、有名人の来店をTwitterにつぶやいてホテルが謝罪したケースがあったほか、13年には、ローソンの店員が冷蔵ケース内で寝転ぶ写真がFacebookで公開され、ローソンが謝罪。その後、アルバイト店員や客などが、店舗の冷蔵ケースに入った写真をTwitterなどに投稿し、炎上する問題が相次いだ。

 このころ、Twitterに不適切な動画や画像などを投稿する人を揶揄する「バカッター」という言葉が生まれ、アルバイト店員が不適切な投稿で店舗に迷惑をかける行為を指す「バイトテロ」という言葉も誕生した。バカッターは13年の流行語大賞の候補語にまでなっている

最近はインスタに 次はTikTok?

 さらにここ数年は、発火点がTwitterからInstagramに移動。冒頭で紹介した「すき家」や「くら寿司」の動画はそれぞれ、Instagramのストーリーズに投稿されていたものだ。

「バカスタグラム」という言葉は、ここ数日で急速に投稿数が増えている(Twitterの投稿を分析できる「Yahoo!リアルタイム検索」より)
「バカスタグラム」という言葉は、ここ数日で急速に投稿数が増えている(Twitterの投稿を分析できる「Yahoo!リアルタイム検索」より)

 ストーリーズは投稿後24時間で消える仕様のため、「多少モラルの低い投稿をしても、消えるから大丈夫だろう」「友達しか見ていないだろう」と安易に考え投稿したのかもしれない。だが、投稿を見た人がダウンロードすれば動画は消えず、Twitterなどに転載されることで騒ぎは広がっていく。

 「バカスタグラム」という言葉は今回、「すき家」「くら寿司」の炎上がきっかけで注目を浴びているが、Twitterを検索すると、2012年ごろからつぶやかれている。当初は「バカな(笑える)画像をInstagramに投稿する」といった意味でも使われていたようだが、不適切な写真をInstagramに投稿するという意味が徐々に強くなり、17年ごろからは主に後者の意味で使われるようになった。

 Twitterのトレンドワードを分析できる「Yahoo!リアルタイム検索」で調べると、今年2月上旬以降「バカスタグラム」のつぶやきは急増しており、「バイトテロ」という言葉とともに投稿されることが多いようだ。「バカッター」が13年、流行語大賞候補になったように、今年の流行語大賞の候補語に「バカスタグラム」が入るのでは、と予想する人もいる。

 「次はTikTok(動画アプリ「ティックトック」)で同じような投稿が問題になりそう」という声もあり、「バカスタグラムの次はバカトックか」との予想も。SNSの変遷により、不適切な動画の投稿先は変わってきたが、不適切な動画投稿そのものは、なくなりそうもない。

フリーランス記者

1978年生まれ。京都大学卒。IT系ニュースサイト記者、Webベンチャーを経て、IT・Web分野を軸に幅広く取材、執筆するフリーランス記者。著書に「ネットで人生、変わりましたか」(ソフトバンククリエイティブ)。

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