Yahoo!ニュース

急速に流行「Sarahah」とは? 中東発のアプリ、日本でランキング1位に

岡田有花フリーランス記者
25日のApp Storeランキングより。saraharは無料1位だ
25日のApp Storeランキングより。saraharは無料1位だ

 「Sarahah」(サラハ)というスマートフォンアプリが、11月半ばごろから日本で急速に流行しています。25日現在、App Storeの無料アプリ総合ランキングで堂々の1位。20日に初めて総合1位になって以降、3位以内をキープしています。

 また、「Googleトレンド」(Google検索のデータを基に、人気キーワードが分かるサービス)で「Sarahah」の人気度を調べると、11月半ばごろから急上昇しています。

 そんなSarahahとは、いったいどんなアプリなんでしょうか?

Sarahahとは?

 Sarahahは、友人などから匿名メッセージを受け取れるアプリです。メッセージを受け取った人は、送信者を知ることはできず、直接返信することもできません。匿名の投書箱のようなイメージです。英語版とアラビア語版のみで、日本語版はありません。

Sarahahのメッセージ送信画面(左)と、受信画面の例
Sarahahのメッセージ送信画面(左)と、受信画面の例

 開発元はサウジアラビアの企業で、「sarahah」は、アラビア語で「正直」という意味だそう。アプリには「Sarahahは、従業員や友人から匿名でフィードバックを受けることで、あなたの強みや改善すべき点を発見するのに役立ちます」と書かれており、ビジネス用途での活用を想定して開発されたようです。

 今年6月にアプリが公開されると、中東や欧米など海外の若者の間で流行。Googleトレンドを見ると、サービス開始直後から人気が高まり、グローバルでは7~8月にピークに。その後は急に失速したようです。日本のブームは海外に遅れること約3カ月。11月半ばになって急速に流行り始めています。

Sarahahのグローバルでの人気推移。7~8月にピークを迎え、その後は落ち着いている(Googleトレンドより)
Sarahahのグローバルでの人気推移。7~8月にピークを迎え、その後は落ち着いている(Googleトレンドより)
Sarahahの日本での人気推移。11月半ばに急速に人気が高まっている(Googleトレンドより)
Sarahahの日本での人気推移。11月半ばに急速に人気が高まっている(Googleトレンドより)

インスタのストーリーから流行

 日本で流行が広がり始めたのは、Instagramの「ストーリー」からのようです。InstagramのプロフィールにSarahahのメッセージ受け取り用URL(ユーザーごとに発行される。メールアドレスのようなもの)を公開してメッセージを募集。メッセージを受け取ると画像キャプチャし、返信を書き加えてInstagramストーリーで公開する、という使い方が広がっています。

受け取ったメッセージを画像でキャプチャし、このように返信を書き加え、Instagramストーリーで公開する人が多い
受け取ったメッセージを画像でキャプチャし、このように返信を書き加え、Instagramストーリーで公開する人が多い

 Instagramストーリーは、24時間以内に撮影した画像のみ投稿でき、公開期間も24時間限定。更新するには24時間以内の“最新のネタ”が必要になります。Sarahahなら、届いたメッセージに答えるだけで新たな“ネタ”を作ることができ、フォロワーとも気軽に交流できるとあって、急速に広がったようです。

 公開されているやりとりを見てみると、「○○さんに似てますね、かわいいです」「いつも投稿楽しみにしています」などフォロワーからの賞賛の言葉や、「彼氏いるの?」「イルミネーション、誰と行ったの?」など、本人のプライベートを探るもの、「おすすめの○○を教えて下さい」など軽い質問などさまざまです。

 Twitterでも流行しています。Instagramと同様、軽い質問・回答のやりとりのほか、女性サッカー選手に「ゴールキーパーというポジションで大変なところは?」と尋ねたり、起業家に「最初に起業したときの自己資金はいくらでしたか?」と尋ねる――など、著名人と交流したり、専門的な情報を得るための質問も目立ちます。また、下ネタのQ&Aも多数投稿されています。

ブームに乗じたスパムや偽アプリも

 このブームに乗じ、スパムも流行し始めています。「Sarahahでメッセージの送り主を特定する」とかたるスパムが出回っており、日本語のスパムも届き始めています。スパムメッセージに書かれたURLからは、個人情報を詐取するフィッシングサイトや悪意のあるアプリに誘導される可能性があるため、アクセスしないようにしましょう。

 Sarahah運営元は、「Sarahahは、送信者の同意なしに、送信元を公開することはない」とヘルプに明記しており、「送信元が分かるというメッセージはすべて偽物だ」と注意喚起しています。

 また、Sarahahの偽アプリも出回っているようです。Google Playには「saraha Mobile (日本版)」という名のアプリがあり、多数ダウンロードされていますが、これはSarahahとはスペルが異なり(最後のhがない)、開発元名も異なります。間違えないよう注意が必要です。

ブームは続くか?

 Sarahahのように匿名で質問できるサービスは、新しいものではありません。質問と回答で交流するサービスは、場や形を変えて何度も流行してきました。

 2011年には、匿名で質問できる「ザ・インタビューズ」が登場。その後も同様なサービス「Ask.fm」が流行しました。さらにさかのぼると、多数の質問に答える形でプロフィールを作るガラケーサイト「前略プロフィール」(2002年~)も大流行したほか、SNS「mixi」(2004年~)では、質問リストに回答し、同じ質問を友人に行う「バトン」も流行りました。Sarahahは、これらのサービスの現代版と言えるのかもしれません。

 ただ、こういったサービスは一時的に大流行しても、なかなか長続きしない面があります。質問の“ネタ”が一巡すると、聞くこともなくなり、自然に流行が収束していくのです。また、匿名による質問は、悪口や中傷、嫌がらせなどにつながりがちです。Ask.fmでは、サービスを通じて中傷を受け、自殺したユーザーもいる――とも報じられています。

 Sarahahはどうでしょうか。海外ではサービスインから2カ月ごろまでがピークで、その後失速しています。スパムや中傷なども問題になったようです。遅れて流行した日本ではどうか。海外と同じような軌跡をたどり、数カ月で収束していくのか、それとも――。

フリーランス記者

1978年生まれ。京都大学卒。IT系ニュースサイト記者、Webベンチャーを経て、IT・Web分野を軸に幅広く取材、執筆するフリーランス記者。著書に「ネットで人生、変わりましたか」(ソフトバンククリエイティブ)。

岡田有花の最近の記事