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【都知事選】住まいがない人への支援について候補者にアンケートをしました

大西連認定NPO法人自立生活サポートセンター・もやい 理事長
選手村の活用についてchangeで署名をおこないました

【都知事選】住まいがない人への支援について候補者にアンケートをしました

僕が理事長をつとめる認定NPO法人自立生活サポートセンター・もやいで、都知事選候補者に対してアンケートをおこないました。その結果についてご報告するとともに、各候補の回答について、末尾で個人的に検証をしたいと思います。

都知事選立候補者の主要候補に対してFAXもしくはメールでアンケートをおこないました

〈もやい〉は、都内を中心に、生活困窮者への支援をおこなっている団体です。

〈もやい〉では、3月29日に緊急署名キャンペーンとして、『【新型コロナ】住まい・居場所を失った人のために「オリンピック選手村」の一部を開放してください』を立ち上げました。

これまで54,000人以上(6月26日現在)の方から署名をいただき、6月12日に、東京都に署名を提出いたしました。

【緊急署名】新型コロナで住まい・居場所を失った人のために「オリンピック選手村」の一部を開放してください

このたび、都知事選の立候補者に対して、新型コロナで住まい・居場所を失った人のための「オリンピック選手村」の活用や、住まいのない生活困窮者への支援について、公開アンケートをおこないました。

アンケート項目は、

1.新型コロナで住まい・居場所を失った人のために、「オリンピック選手村」を活用し、緊急の宿泊先や滞在先として確保することについて

「賛成」「反対」「どちらでもない」

その理由:

2.住まいのない生活困窮者への支援について、具体的にどのような施策を考えているのか教えてください。(自由記述)

としました。

6月26日を回答期限とし、山本太郎氏、小池ゆりこ氏、宇都宮けんじ氏の3名(返送していただいた順)から回答がありましたので、ここにその内容を掲載します。

各候補には、生活困窮者への支援、住まいの確保に関する取り組みの実現に向けて、議論をしていただければと思っています。

また、当選したあかつきには、ここにご回答いただいた内容を必ず実施していただくよう、私たちも働きかけていければと考えています。

回答は原文のまま記載します。

■山本太郎氏

1.新型コロナで住まい・居場所を失った人のために、「オリンピック選手村」を活用し、緊急の宿泊先や滞在先として確保することについて

【賛成】

その理由:

東京都は以前、「東京2020オリンピック・パラリンピック組織委員会」に対し、新型コロナウイルスに感染した軽症者を収容する施設として東京五輪・パラリンピック選手村を活用できないか打診したことがあります(実現せず)。選手村は2020年12月までは、デベロッパーから都が42億円で借り受け、選手村活用を目的として、五輪組織委員会にまた貸ししている状況です。

参考:新型コロナ施設に選手村活用へ〜都が組織委に打診 | OurPlanet-TV:特定非営利活動法人 アワープラネット・ティービー

参考:五輪選手村、感染者に開放しない理由

2.住まいのない生活困窮者への支援について、具体的にどのような施策を考えているのか教えてください。(自由記述)

(回答)私は、新型コロナを災害に指定することで、今回のコロナ禍による経済急変によって住まいを失った方への住まいの提供ができると考えています。弁護士の津久井進先生を始めとする200人以上が政府に対し、新型コロナウイルス対策に災害法制を生かすよう緊急提言していますが、この災害指定は政府が政令で行うことができます。仮にこの災害指定をすれば、コロナ禍で住む場所を失った人には、他の台風、地震などの災害と同様に、災害救助法に基づいて仮設の住宅も提供できるようになりますし、民間賃貸住宅を仮設住宅として活用する「みなし仮設」として提供できるようになります。

また、住まいのない生活困窮者に対して、一律の給付金を支給する場合には、(1)本人確認ができる場合には無条件で支給を行うこと、(2)住民登録のない者でも、公園などの住居喪失者の「今いる場所」で、仮の住民登録を行える運用や、福祉事務所などの住所に借りで住民登録を行い、給付を受けられるよう緊急的な柔軟対応を行うこと。(3)住居喪失者、および住民登録がない者に対応できる窓口の創設を行うこと、など生活困窮者に対する対応を行っていきます。

また、コロナ後の住宅政策としては、都営住宅の空き部屋4万戸に加え、都内の活用可能な空き家69万戸、共用住宅空き部屋41万室の中から都が必要な分を借り上げ、低廉な家賃で提供。もちろん、都営住宅の新築も行います。単身で暮らす障がい者は特に住居の確保が難しい現状です。都営住宅の入居を促進します。 以上

■小池ゆりこ氏

1.新型コロナで住まい・居場所を失った人のために、「オリンピック選手村」を活用し、緊急の宿泊先や滞在先として確保することについて

【賛成・反対・どちらでもない のどれも選択せず】

その理由:

新型コロナウイルス感染拡大に伴い、住まいや居場所を失った人々に対しまして、区市等と連携して一時的に受け入れる宿泊施設を提供するなどの支援策を講じております。今後もの都内の状況を踏まえながら、適切に対応してまいります。

2.住まいのない生活困窮者への支援について、具体的にどのような施策を考えているのか教えてください。(自由記述)

これまで「人」に焦点を当て、東京で暮らす全ての方が自分らしく輝ける社会の実現に向け、生活困窮者の方への支援にも取り組んでまいりました。

こうしたことから、住まいのない生活困窮者の方につきまして、生活支援や居住支援、就労支援等を行っているTOKYOチャレンジネットをはじめとする諸制度に繋げるなどして、誰もが安心して暮らせる取組を一層推進してまいります。

■宇都宮けんじ氏

1.新型コロナで住まい・居場所を失った人のために、「オリンピック選手村」を活用し、緊急の宿泊先や滞在先として確保することについて

【賛成】

その理由:

住居のない状態におかれた人に対して、東京都がこれまで用意してきた施設は、すべて個室ではないのが現状です。コロナ感染を考えると、個室を用意することが不可欠です。東京都が用意できる施設については、できる限り活用して対応すべきだと考えます。

住まいの確保は人権です。オリンピック選手村は、現在使用されていません。皆さんの願いは当然です。

2.住まいのない生活困窮者への支援について、具体的にどのような施策を考えているのか教えてください。(自由記述)

・住宅政策を人権として位置づけ、都営住宅の増設・拡充と家賃補助制度の導入をめざします。

・都として路上生活者を排除する行為を根絶します。オリンピック開催を口実に、路上生活者が排除されることがないよう、国土交通省、区市町村に働きかけます。

・路上生活者のための個室型の緊急シェルターを整備し、NPOとの連携の下で、巡回相談(駅ターミナルや繁華街など)を24時間実施します。巡回指導員の権限で福祉事務所を経由せずに緊急シェルターに入所できる仕組みを作ります。

・知的障がいや精神疾患など様々な困難を抱えた路上生活者が地域で生活できるようにサポート体制を作ります。

・ハウジング・ファースト型の支援を徹底させます。

以上です。

■3名の回答について

今回、急なアンケート依頼にも関わらず、3名の候補者にはご回答をいただきました。ご協力に感謝いたします。

3名の回答は、それぞれ各人のスタンスが分かれています。

「選手村」の活用については、山本太郎氏、宇都宮けんじ氏の両名が賛成で、小池ゆりこ氏は賛成反対等に言及せず既存の枠組みで対応する、答えています。

住まいのない方への支援施策に関しては、現職である小池ゆりこ氏は、既存施策を活用する、と答えています。

一方、山本太郎氏は、災害救助法に基づく仮設の住宅の提供や、民間賃貸住宅を活用する「みなし仮設」に言及しているほか、10万円の給付について住居喪失者や住民登録がない人に対しても給付できる仕組みを作る、としています。

本太郎氏と宇都宮けんじ氏に共通しているのは、都営住宅の活用、新築や拡充です。山本太郎氏が空き家を借り上げて低廉で提供するとしているのに対して、宇都宮けんじ氏は家賃補助制度の導入を目指すとしており、ここには違いがあります。

また、宇都宮けんじ氏は、路上生活者への排除を根絶する、福祉事務所を経由せずに巡回相談員が個室の緊急シェルターに入所できる仕組みを作る、ハウジングファースト型の支援により、アパート入居後の支援の仕組みを作る、としています。

3名の回答内容の共通点、違いなど、ぜひ確認いただき、都民のみなさまの投票行動の参考になれば幸いです。

なお、都知事選の立候補者である小野たいすけ氏からはこちらで設定した期限以内には回答をいただいていませんが、もしご回答いただけた場合は、追記したいと思います。

認定NPO法人自立生活サポートセンター・もやい 理事長

1987年東京生まれ。認定NPO法人自立生活サポートセンター・もやい理事長。新宿での炊き出し・夜回りなどのホームレス支援活動から始まり、主に生活困窮された方への相談支援に携わっています。また、生活保護や社会保障削減などの問題について、現場からの声を発信したり、政策提言しています。主著に『すぐそばにある貧困」』(2015年ポプラ社)。

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