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6時間の口頭弁論 伊藤さん「痛みで目が覚めた」、山口さん「なだめる気持ちで誘いに応じた」

小川たまかライター
口頭弁論後、報道陣や支援者の質問に答える伊藤詩織さん

 7月8日、ジャーナリストの伊藤詩織さんが元TBS記者の山口敬之さんから性暴力を受けたとして慰謝料など1100万円の損害賠償を求めた訴訟の口頭弁論が東京地裁で開かれ、原告、被告それぞれが出廷した。

 傍聴席30席を求める抽選には160人以上が並んだ。口頭弁論は10時から17時過ぎまで、約1時間の休憩を挟んで行われた。

 午前中の伊藤さんへの尋問では、2015年4月の事件当日、2軒めに入った寿司店のトイレに入った後の記憶がないことや、下腹部の痛みで目が覚めた際、ホテルのベッドの上で性暴力被害に遭っていたことなどが語られた。

 被告側の代理人弁護士が伊藤さんに対し「意識があったなら(準強姦ではなく)強姦ではないか」「(伊藤さんの)証言のように体に傷ができたなら(準強姦ではなく)強姦致傷での起訴は容易だったんじゃないですか」などと問いただし、伊藤さんが「起訴が容易か容易でないかは(検察の判断であるため)私はわかりません」と答える場面もあった。

 また、午前中と午後の尋問で、繰り返し被害時の状況を聞く場面があり、裁判長が「質問を変えてください」と制止した。

 午後の山口さんへの尋問で、山口さんは「伊藤さんとの関わりにおいて法に触れるようなことはしていないか」という被告側代理人の問いに「絶対にしていない」と強い口調で断言。伊藤さんが記者会見や著書の中で訴えたことについて「デートレイプドラッグというものすら知らなかった」「許せない」と主張した。

 被告側代理人の「(安倍政権と親しい山口さんが)逮捕状を取り下げるように依頼したという疑惑があるが」という質問については、「(自分に対して)逮捕状が出ていたことを確認していないので(確認していない逮捕状を)もみ消すことはできない」と答えた。

 山口さんは今年2月に、伊藤さん側に1億3000万円と謝罪広告を求める反訴を起こしている。この日も、「(事件後に)ジャーナリストとして、ラジオ、テレビ、雑誌、すべての場での発信の機会を失った。家族や知人にも『レイプ犯』『薬物レイプ犯』といったハガキやメールが殺到している」「薬物を盛られた証拠がないのであれば事実と違うと発表してほしい」と主張した。

 また、原告側代理人から、「(伊藤さんからの誘いがあったので)社交辞令的に性行為に応じた」という雑誌での主張について問われると、「伊藤さんが嘔吐し、私物にも吐瀉物がかかりイライラしていた。彼女が何度も謝り、泣いたり鼻をすすったりした。とにかく黙ってほしい、黙っていただくためになだめるような気持ちで(性行為に)応じた」と答えた。

 その上で、「たとえどういう経緯でも性行為するべきではなかった」「ホテルへ連れて行かない、タクシー代を渡して帰すという選択肢もあった」と話した。

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報道陣に囲まれる伊藤さん(7月8日)
報道陣に囲まれる伊藤さん(7月8日)

(画像はすべて筆者撮影)

ライター

ライター/主に性暴力の取材・執筆をしているフェミニストです/1980年東京都品川区生まれ/Yahoo!ニュース個人10周年オーサースピリット大賞をいただきました⭐︎ 著書『たまたま生まれてフィメール』(平凡社)、『告発と呼ばれるものの周辺で』(亜紀書房)『「ほとんどない」ことにされている側から見た社会の話を』(タバブックス)、共著『災害と性暴力』(日本看護協会出版会)『わたしは黙らない 性暴力をなくす30の視点』(合同出版)など

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