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イラン製自爆ドローンのロシア国内生産工場が稼働開始

JSF軍事/生き物ライター
Google地図よりロシア・タタールスタンにあるゲラン2自爆無人機生産工場

 ロシアのSNSでイラン製シャヘド136自爆無人機ことロシア名称:Герань-2(ゲラン2)のロシア国内での生産工場の内部の写真が流出しました。タタールスタンのエラブガの北に建設していた工場が稼働し、ライセンス生産が始まったようです。

 流出タイトルはОРАНЖЕРЕЯ ШОЙГУ(ショイグの温室)です。シャヘド136自爆無人機のロシア名称ゲラン2は花のゼラニウムが由来なので、生産プラントと温室で育てるゼラニウムの花を掛けた意味なのでしょう。

 白い塗装の機体と黒い塗装の機体の2種類の塗装パターンが並行して生産されています。昼間攻撃と夜間攻撃で使い分けるのでしょうか? 主翼前縁にはロシア語でГерань(ゲラン)の文字が書き入れてあります。映像を見る限り工場内には既に100機単位で生産された機体が置かれており、おそらく月産数百機の生産能力があるとすると、ウクライナ防空網に対する負荷が増す可能性があります。西側から地対空ミサイルの予備弾の追加供与が続かないと、苦しいことになってしまうでしょう。

 なおタタールスタンのゲラン2生産工場の位置(55.821111, 52.050556)はウクライナの国境付近から約1200km離れた位置にあり、長距離ドローンならば種類によっては届く可能性がある距離です。場合によってはウクライナ軍がこの工場に対して攻撃を仕掛けるかもしれません。

Google地図よりハルキウ周辺からタタールスタンのゲラン2生産工場まで約1200km
Google地図よりハルキウ周辺からタタールスタンのゲラン2生産工場まで約1200km

 ウクライナ軍にはこの距離を飛べるミサイルは現在ありませんが、開発計画があります。またドローンならば距離を飛ばすだけなら短期間で作ることができる可能性がありますが、しかしGPS航法に頼った簡易な誘導システムではGPSジャマーによって目標に辿り着くことが覚束ない可能性も高く、また弾頭重量が少ないと敵防空網を突破した少ない数のドローンでは満足な打撃を与えられない可能性もあります。

 仮に苦労して工場に打撃を与えることに成功しても、ロシアは工場をより後方に移し疎開させるでしょう。それでも工場が攻撃されたら生産に支障が出ますし、移転も労力が掛かります。最初からもっと遠くに建設すればよかったようにも思えますが、あまり遠過ぎると生産した機体の輸送に労力が掛かってしまうのを嫌ったのかもしれません。

軍事/生き物ライター

弾道ミサイル防衛、極超音速兵器、無人戦闘兵器、オスプレイなど、ニュースに良く出る最新の軍事的なテーマに付いて解説を行っています。

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