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ロシア軍Kh-101巡航ミサイルがチャフを放出する実戦での初映像

JSF軍事/生き物ライター
SNS投稿動画よりKh-101巡航ミサイルがチャフ(電波欺瞞紙)を放出する様子

 12月29日、ロシア軍は巡航ミサイルや弾道ミサイルなど各種ミサイル122発と自爆ドローン36機の合計158発による大規模な長距離攻撃をウクライナ各地に行いました。これは昨年も含めてこのロシア-ウクライナ戦争で最大規模のミサイル攻撃です。

 ロシア軍は爆撃機からの空中発射巡航ミサイルによる攻撃を9月21日を最後に3カ月近く行っていませんでしたが、12月8日に巡航ミサイル19発の発射で再開。そこから3週間後の12月29日に巡航ミサイル90発を発射し、暫く使わない間に生産して貯め込んだ分を遂に使い始めたことになります。

2023年12月29日の迎撃戦闘 出典:ウクライナ空軍

  • Kh-101巡航ミサイル×90 ※撃墜87(Tu-95MS爆撃機)
  • Kh-22超音速巡航ミサイル×8(Tu-22M3爆撃機)
  • キンジャール極超音速ミサイル×5(MiG-31K戦闘機)
  • 弾道ミサイル×14(イスカンデルMないしS-300対地攻撃モード)
  • Kh-31P対レーダーミサイル×4(Su-35S戦闘機)
  • Kh-59空対地ミサイル×1(Su-35S戦闘機)
  • シャヘド136自爆無人機×36 ※撃墜27

 ウクライナ軍が撃墜できたのは低速のKh-101巡航ミサイルとシャヘド136自爆無人機だけで、高速のKh-22超音速巡航ミサイルやキンジャール極超音速ミサイル(正体はイスカンデルM弾道ミサイル空中発射型)、弾道ミサイル系は全て撃墜に失敗しています。ウクライナ軍には高速ミサイルを撃墜可能な大型防空システムはパトリオット(3セット供与)とSAMP/T(1セット供与)がありますが、如何せん数が少なく、未配備の地域に高速ミサイルを撃ち込まれた場合は対応できません。

Kh-101巡航ミサイルのL-504チャフ・ディスペンサー

 この大規模攻撃の最中に飛行するKh-101巡航ミサイルが撮影されましたが、チャフ(電波欺瞞紙)を放出する様子が捉えられています。今年2月に撃墜したKh-101巡航ミサイルの残骸から発見されて調査報告されたL-504チャフ・ディスペンサーが実戦使用される様子が初めて撮影されました。巡航ミサイルがチャフを撒くのはKh-101巡航ミサイルが世界初です。

※放出器のL-504ディスペンサーはフレア(囮熱源)とチャフ(電波欺瞞紙)のどちらの放出にも対応しています。ただし過去の2023年2月の残骸の調査で発見されたのはチャフ弾のみでした。

関連記事:ロシア軍のKh-101巡航ミサイルに搭載されたレーダー欺瞞用チャフ・ディスペンサー(2023年2月18日)

ウクライナ空軍より撃墜したロシア軍Kh-101巡航ミサイル(報告日:2023年1月30日)
ウクライナ空軍より撃墜したロシア軍Kh-101巡航ミサイル(報告日:2023年1月30日)

 側面に空いた12個の穴がL-504ディスペンサーです。2023年1月26日に撃墜し1月30日に回収したKh-101巡航ミサイルにこの部品が装着されていることが発見されて調査が行われて、2月16日にウクライナ軍参謀本部傘下の「鹵獲兵器および将来兵器および軍事装備研究センター」代表ミコラ・ダニリュク大佐が説明を行っています。詳しくは当時の記事「ロシア軍のKh-101巡航ミサイルに搭載されたレーダー欺瞞用チャフ・ディスペンサー」をお読みください。

※露語・宇語のキリル文字「Х-101」を英語で使われるラテン文字に転写すると「Kh-101」になります。「Л-504」は「L-504」です。

軍事/生き物ライター

弾道ミサイル防衛、極超音速兵器、無人戦闘兵器、オスプレイなど、ニュースに良く出る最新の軍事的なテーマに付いて解説を行っています。

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