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ウクライナ軍のパトリオットが越境長距離射撃でロシア軍機を連続撃墜していたことが判明

JSF軍事/生き物ライター
ウクライナ空軍公式動画より、2023年5月13日のパトリオットによる撃墜戦果

 7月3日、ウクライナ空軍は「地対空ミサイル部隊の日」を祝いました。そしてYouTubeにUPした広報動画に驚くべき「戦果報告」が掲載されていました。パトリオット防空システムの指揮車両と思わしき機材に撃墜マークが描き込まれていたのですが、なんと撃墜日の日付けまで記されていたのです。

 これにより今まで謎だった5月13日のロシア領ブリャンスク州でのロシア軍機同時墜落事件の撃墜方法が、ウクライナ軍のパトリオット防空システムによるものだったことが判明しました。

 ウクライナに供与されたパトリオット防空システム2個高射隊のうち、片方が国境線付近まで前進配置され、PAC-2長距離地対空ミサイルによる越境射撃が実施されていたことになります。

Ukrainian Air Force (Повітряні Сили України)

ウクライナ空軍公式YouTubeアカウントよりキャプチャー
ウクライナ空軍公式YouTubeアカウントよりキャプチャー

ウクライナ空軍公式YouTubeアカウントよりキャプチャー(拡大)
ウクライナ空軍公式YouTubeアカウントよりキャプチャー(拡大)

 日付の読み方は(日/月/年)の順番です。23は2023年の略なので、「130523」は13日/5月/2023年になります。描き込まれたシルエットはMi-8輸送ヘリコプター、Su-34攻撃機、Su-35戦闘機です。

 パトリオット防空システムは「PAC-2」「PAC-3」といった大きさの異なる別種の迎撃ミサイルを同時運用できるのですが、PAC-2は射程160km以上の長距離地対空ミサイルであり、当初から攻撃方法として強く疑われていました。ただしこれまで若干の匂わせた報道があった程度で正式には確定していませんでした。

 この他に「潜入したウクライナ軍特殊部隊による携行地対空ミサイル説」「エンジン故障説」「ロシア軍の誤射説」「ウクライナ空軍戦闘機の空対空ミサイル説」などが唱えられていましたが、同時に複数機が撃墜された以上は故障や誤射は有り得ず、携行地対空ミサイルも離れていては複数同時は考え難く、戦闘機ならばステルス機でもない限りロシア側が気付く筈で、パトリオット防空システムが撃墜の実行者だろうという推定が有力だと絞り込まれてはいました。

 ウクライナ軍の長距離地対空ミサイルはこれまで旧ソ連製のS-300P(5V55迎撃ミサイル)とS-300V(9M83迎撃ミサイル)がありましたが、最大有効射程は70~80km程度でした。これがパトリオットの導入によりPAC-2迎撃ミサイルの最大有効射程160km以上と、一挙に2倍近い射程を手にしたことになります。

軍事/生き物ライター

弾道ミサイル防衛、極超音速兵器、無人戦闘兵器、オスプレイなど、ニュースに良く出る最新の軍事的なテーマに付いて解説を行っています。

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