北朝鮮がICBMを発射成功。今年のICBM全力飛行試験の成功は2回目
11月18日午前10時14分ごろ、北朝鮮が平壌近郊の順安付近から日本海に向けて1発のICBM(大陸間弾道ミサイル)を発射しました。高角度で山なりに高く発射するロフテッド軌道で行われ、日本のEEZ(排他的経済水域)に着弾しています。
自衛隊の観測
- 最大高度6000km・水平距離1000km・飛行時間69分
韓国軍の観測
- 最大高度6100km・水平距離1000km・速度マッハ22
この飛行性能は北朝鮮が今年3月24日に行ったICBM全力飛行試験での数値とほぼ同じです。このロフテッド軌道での発射を通常軌道(最小エネルギー軌道)に直して計算すると、弾頭重量はそのままで最大射程1万5千kmを発揮可能な性能となります。
今年のICBM発射では全力飛行試験の成功は2回目となります。なお予備実験(性能を抑えた発射)や発射失敗は十分な確認が取れず推定になりますが、今年のICBM発射総数は8回になります。
2022年北朝鮮ICBM発射・推定8回(全力飛行試験2回)
- 02月27日朝 予備実験 火星17
- 03月05日朝 予備実験 火星17
- 03月16日朝 発射失敗 火星17
- 03月24日夕 発射成功 火星15(推定) ※発表写真は火星17
- 05月04日昼 予備実験 火星17
- 05月25日朝 予備実験 火星17
- 11月03日朝 予備実験 火星17(推定) ※発表写真は火星15
- 11月18日朝 発射成功 火星17(推定)
今年2回成功したICBM発射は過去の試験と比べてもより高く長い時間を飛んでいます。(北朝鮮のICBM全力飛行試験成功は今回の2022年11月18日の発射で通算で5回目)
このことから新型の巨大なICBM「火星17」の発射試験だろうと推定されていました。しかし・・・
しかし北朝鮮自身が火星17の写真を公開したにもかかわらず、この時に韓国軍は3月24日発射のICBMを火星15と判断しました。3月16日の火星17発射失敗(おそらく全力飛行試験を企図していた)を誤魔化すために、以前の別の日(2月27日か3月5日)に発射した火星17の予備実験での写真を流用したという分析です。つまりこの場合は3月24日発射のICBMは火星15に軽量弾頭を積んで火星17に偽装した工作だということになります。
それでは11月18日のICBM発射成功は今度こそ火星17なのでしょうか? 現時点では韓国軍はその可能性が高いと分析しています。
なお今回の発射成功で2022年の北朝鮮ミサイル総合計数は、失敗2発を含め33回の発射機会で69発のミサイル発射となります。予備実験を含め発射成功は67発です。(多連装ロケットや地対空ミサイルは除外、弾道ミサイルと巡航ミサイルのみカウント)
ロフテッド軌道で発射して日本のEEZに落とした意味
EEZに着弾したのは日本を狙った威嚇が目的ではなく、ロフテッド軌道で日本列島を飛び越えずに日本海に落とす場合であっても、どうしても其処まで飛ばさざるを得ないという理由です。通常軌道で飛ばした場合は日本列島を飛び越えて余計に刺激することになる上に、着弾位置次第ではアメリカと戦争になりかねません。そもそも北朝鮮には本格的な弾道ミサイル追跡艦が無いので、自分で観測も出来ない遠隔地にICBMを飛ばしても試験を行う意味がありません。
また北朝鮮は過去にロフテッド軌道でのICBM発射試験について「安全に配慮した試験用の高角度発射」という主旨の説明を公式で行っており、実際に意図としてはその通りなので、「迎撃が困難なロフテッド発射」という日本の一部の認識は間違いでしょう。たとえ実戦であっても貴重な数の少ないアメリカ本土攻撃用のICBMを目の前の近くの日本に目掛けて発射する可能性は著しく低いと言えます。