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北朝鮮がICBMを東方向にロフテッド軌道で発射

JSF軍事/生き物ライター
日本防衛省の公表した北朝鮮ICBMの推定着弾地点

 3月24日14時33分ごろ、北朝鮮が平壌近郊の順安の付近から東方向に弾道ミサイルを発射しました。韓国軍の観測では最大高度6200km・水平距離1080km、飛翔時間71分のロフテッド軌道(山なりの弾道)で発射されたICBM(大陸間弾道ミサイル)です。

これまでの北朝鮮ICBM発射と比較

  • 2022年03月24日 高度6200km 距離1080km 71分 不明
  • 2017年11月29日 高度4475km 距離950km  53分 火星15
  • 2017年07月28日 高度3725km 距離938km  39分 火星14
  • 2017年07月04日 高度2802km 距離998km  47分 火星14

 過去の北朝鮮のICBM実験は全てロフテッド軌道で行われていますが、今回の名称不明ICBMは最も高い高度に到達しています。火星15の時でも仮に最小エネルギー軌道(最も水平距離が長くなる軌道)で飛ばした場合は1万3千km以上を飛べてアメリカ本土を射程に収めることが出来る性能だったのですが、今回の発射はそれ以上の1万5千km以上を優に飛べる性能を有しています。

 これはアメリカ本土攻撃用としては明らかに性能が過剰です。もしかすると今後、偵察衛星を載せて軌道に打ち上げる準備としてペイロード(搭載物)の重量を調整していたのかもしれません。なおロフテッド軌道では衛星を軌道に打ち上げることはできません。

 今回発射されたものはおそらく新型の超巨大ICBM「火星17」か、あるいは「火星15」のペイロードを軽くしたものだろうと推定されます。

2022年の北朝鮮ミサイル発射

  • 1月05日朝 準中距離弾道ミサイル級 「極超音速ミサイル」
  • 1月11日朝 準中距離弾道ミサイル級 「極超音速ミサイル」
  • 1月14日夕 短距離弾道ミサイル 「鉄道型イスカンデル」 ※2発
  • 1月17日朝 短距離弾道ミサイル 「北朝鮮版ATACMS」 ※2発
  • 1月25日朝 中距離級巡航ミサイル 「新型巡航ミサイル」 ※2発
  • 1月27日朝 短距離弾道ミサイル 「車両型イスカンデル」 ※2発
  • 1月30日朝 中距離弾道ミサイル 「火星12」 ※ロフテッド軌道
  • 2月27日朝 ICBM予備実験(準中距離弾道ミサイル級に抑えた飛翔)
  • 3月05日朝 ICBM予備実験(準中距離弾道ミサイル級に抑えた飛翔)
  • 3月16日朝 ICBM実験失敗
  • 3月24日夕 ICBM発射成功 ※ロフテッド軌道

 北朝鮮が2月27日と3月5日に発射した弾道ミサイルは当初は準中距離弾道ミサイルと推定されていましたが、3月11日になってアメリカ軍の分析結果として「ICBMの性能をわざと抑えた予備実験だった」と日米韓で公表されています。また3月16日に平壌近郊の順安の付近からミサイルが発射され直後に爆発したことが観測されており、ICBM実験の失敗だったと推定されています。

 3月24日のICBM発射実験成功で、北朝鮮は最近の約一カ月間のうちに4本ものICBMを射耗しています。非常に高価な機材であるICBMの開発で一挙に4本も実験に使ったことは驚きで、北朝鮮がICBMの実用化・量産化に向けて大きく動き出したことを意味します。

1. 北朝鮮は、本日14時33分頃、朝鮮半島西岸付近から、1発の弾道ミサイルを東方向に発射しました。現時点における分析では、発射された弾道ミサイルは、約71分飛翔し、15時44分頃、北海道の渡島(おしま)半島の西方約150kmの日本海(我が国の排他的経済水域(EEZ)内)に落下したものと推定されます。飛翔距離は約1,100km、また最高高度は6,000kmを超えると推定されます。

2. 今回の弾道ミサイルが2017年11月のICBM級弾道ミサイル「火星15」の発射時を大きく超える、約6,000km以上の高度で飛翔したことを踏まえれば、今回発射されたものは新型のICBM級弾道ミサイルであると考えられますが、詳細については引き続き分析中です。

出典:北朝鮮のミサイル等関連情報:防衛省(令和4年3月24日

軍事/生き物ライター

弾道ミサイル防衛、極超音速兵器、無人戦闘兵器、オスプレイなど、ニュースに良く出る最新の軍事的なテーマに付いて解説を行っています。

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