オスプレイは転換飛行中に事故が多いというデマはなぜ広まったのか

アメリカ海兵隊より、転換飛行モードのMV-22オスプレイ

オスプレイは転換飛行が原因で墜落した事故は1件のみ

 垂直離着陸輸送機オスプレイについて「エンジンナセル角度を変更し飛行モードを切り替える転換飛行の操作中に不安定になり事故が多い」とよく言われることがあります。しかしそれは事実ではありません。実は転換飛行そのものが原因となって姿勢を乱して墜落した事例は、わずか1件のみしかないのです。

  • 2012年4月11日 モロッコでのオスプレイ墜落事故・・・原因:エンジンナセル角度を75度より倒す場合は対気速度40ノット以上が要求される操縦マニュアルに違反し、僅か5ノットの速度で飛行モード切替を始めて禁止飛行領域に入ったため。【参考】モロッコのオスプレイ事故原因は操縦ミス、転換飛行時僅か5ノット(筆者の外部ブログ記事)

 モロッコでの事故は原因がパイロットの人為的なミスにあることは明白でした。それもかなり分かりやすい単純な操縦マニュアル違反だったので、とても難しい操縦とは言えず、オスプレイの欠陥ではありません。同様の事故は他に無くこの例のみで、事故後に警告システムを追加して対策も取られたので、今後も起きる可能性は低いでしょう。

 オスプレイは1989年3月19日に初飛行、2007年6月13日に初期作戦能力(IOC)を獲得し同年10月からイラクで実戦投入が始まりました。もう既に試作機時代から31年、実戦配備から13年が経過していますが、転換飛行そのものが原因で墜落した事例は1件しかありません。一体なぜ「転換飛行が原因で事故が多い」というデマが流されてしまうのか理解に苦しみますが、このような誤解と思い込みはアメリカでは全く信じられていないにもかかわらず、日本のみ一部で信じられて非常に根強く今もデマを流され続けています。

オスプレイの市街地上空での転換飛行は普段から行われている

 そもそも在日アメリカ軍はオスプレイについて市街地上空での転換飛行はなるべく少なくするとは約束しましたが、禁止するとは言っていません。当たり前の話になるのですが、オスプレイは固定翼モードから垂直離着陸モードに切り替えて転換しておかないと着陸ができないからです。つまり市街地に隣接した基地では普段から市街地上空で転換飛行を行っています。

運用上必要な場合を除き,通常,米軍の施設及び区域内においてのみ垂直離着陸モードで飛行し,転換モードでの飛行時間をできる限り限定する。(日米合同委員会合意骨子より)

出典:外務省:日本国における新たな航空機(MV-22)に関する日米合同委員会合意

 アメリカ側が市街地上空では基本的に行わないと約束したのは「垂直離着陸モード」の方です。安全上の理由ではなく実は騒音対策で、オスプレイは垂直離着陸モードの時に最も騒音が大きくなるからです。これは垂直離着陸モード(ヘリコプターモードとも称する)時にヘリコプターと同様のローターブレードスラップ音が生じるようになるのが原因です。

 転換モードでもナセル角度が垂直に近ければ生じる種類の騒音なので、転換モードでの飛行をできるだけ少なくするとしたのも単なる騒音対策です。このローターブレードスラップ音は固定翼モードになると発生しません。

  • 固定翼モード・・・エンジンナセルがほぼ水平(騒音小)
  • 転換モード・・・エンジンナセルが1度~84度(騒音は中間)
  • 垂直離着陸モード・・・エンジンナセルがほぼ垂直(騒音大)

 そもそも防衛省はオスプレイの転換モードでの飛行は違反行為ではないと説明してきました。市街地での飛行制限を約束したのは垂直離着陸モードであり、転換モードなら飛行してよいと飛行中の写真まで引用して説明しています。

【関連】オスプレイ、垂直離着陸モードで市街地上空を飛行した事実無し(筆者の外部ブログ記事)

 しかし一部ではオスプレイの転換モードが危険な飛行で違反行為だと勘違いされたままです。これは一体どうしてなのでしょうか?

 おそらくですが「市街地上空で垂直離着陸モードでは飛ばない、転換モードはできるだけ少なくする」と約束したのを騒音上の理由と気づかず安全上の理由と思い込んで誤解した上で、これを「飛行モードを切り替える転換飛行は危険だからだ」と更に誤解してしまったのが「転換飛行中に事故が多い」という根強いデマの原因にあるように思えます。

 過去のオスプレイの事故の事例を調べれば、「転換飛行が原因で起きた墜落事故は1件のみ」と直ぐに気づくはずなのですが・・・