国産の超音速対艦ミサイルASM-3の射程延伸型を開発

防衛装備庁より超音速対艦ミサイルASM-3。射程延伸型はこれより大型化すると推定

 3月19日に岩屋防衛大臣が定例記者会見で「超音速対艦ミサイルASM-3の射程延伸型を開発し、F-2戦闘機の後継となる新型戦闘機への搭載を視野に入れている」と説明しました。開発は完了済みで量産はまだ開始されていないASM-3を改良するという異例の方針となります。

私どもは近年、諸外国の艦艇に射程が長い対空火器の導入がどんどん進んでいることから、これに対応するためには、平成29年度に開発完了した空対艦誘導弾、ASM-3の更なる射程延伸を図るべく早期に研究開発に着手し、順次航空自衛隊に導入していくこととしております。

出典:防衛省:防衛大臣記者会見 平成31年3月19日(09:39~10:05)

 記者会見でASM-3射程延伸型の具体的な射程の数値は説明されませんでしたが、ASM-3の射程150~200kmを倍増する300~400kmを目指して搭載燃料を増加する改修を行うと推定されます。また外国製の長距離巡航ミサイル取得と並行して進められる計画であるとも明言されています。取得する理由は仮想敵国の軍艦が搭載している艦対空ミサイルの射程が伸びてきたため、これを上回る長射程の対艦ミサイルを装備してスタンドオフ攻撃を行う目的と説明されています。

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 防衛大臣の記者会見では言及されていませんでしたが、筆者の推定では「中国海軍の艦対空ミサイルが近い将来に米国製SM-6艦対空ミサイルと同様のデータリンクによる超水平線射撃能力を手にする」という重大な事態への対抗策として、自衛隊はこれに対するスタンドオフ攻撃を行える長距離対艦ミサイルを用意するのだと考えます。相手が古い装備のままなら自衛隊も古い装備のASM-2対艦ミサイルのままでスタンドオフ攻撃を行えますが、もうすぐそうではなくなるのです。

 取得が予定されている外国製の長距離巡航ミサイル「JASSM-ER」「LRASM」「JSM」と国産の「ASM-3射程延伸型」で決定的に異なるのは速力です。ASM-3はマッハ3を発揮できる超音速対艦ミサイルであり、この種類の対艦ミサイルはアメリカも保有していません。アメリカ軍の新型対艦ミサイルLRASMはマッハ1未満の亜音速で飛翔する遅い巡航ミサイルで、その代わりに射程は800km以上と長くなっています。ASM-3射程延伸型はLRASMと重量がほぼ同じくらいの1.1~1.2トン程度になると予想されますが、超音速飛行の燃費の悪さで射程は400kmが限界です。亜音速の対艦ミサイルと超音速の対艦ミサイルではこのように性能に一長一短があります。1本あたりの取得費用は超音速型の方が数倍も高価になるので、ASM-3射程延伸型は特別な切り札的な存在として使われることになるでしょう。保有数の少ない貴重な対艦兵器として温存されることになるので、敵基地攻撃用の対地兵器への転用は現時点では全く考慮されていません。

 そして今回の防衛大臣の記者会見でASM-3射程延伸型はF-2戦闘機の後継となる新型戦闘機への搭載を視野に入れていることが示唆されました。新型戦闘機が対艦攻撃の主力を担うことが初めて明確になったのです。