韓国海軍のSM-3迎撃ミサイル採用で反故にされる中韓THAAD配備問題合意

写真はSM-3を発射する米海軍イージス艦(写真:U.S. Navy/ロイター/アフロ)

 韓国軍はイージス艦に搭載する弾道ミサイル防衛用のSM-3迎撃ミサイルの取得を事実上、決めました。SM-3迎撃ミサイルの取得は前政権の朴槿恵政権下でも検討された上で見送られた経緯がありますが、現在の文在寅政権になってからは導入に積極的な方向を示し続けていました。

韓国軍、迎撃ミサイル「SM3」配備を事実上決定|朝鮮日報

South Korea to buy ship-based interceptors to counter ballistic missile threats | DefenseNews

 韓国軍合同参謀本部は「2017年9月に迎撃高度100km以上の海上配備迎撃ミサイルの導入が決定された」と説明しSM-3とは明言していませんが、この条件に合う実用化済みのものがSM-3しか存在しないので、事実上SM-3の導入予定を認めたことになります。対北朝鮮を想定した場合に韓国海軍のイージス艦の警戒配置を考えると、日米共同開発中のSM-3ブロック2Aでは射程や射高の能力が過剰になるので、現行型のSM-3ブロック1Bを購入することになるでしょう。

 この決定で重要な点は、イージス艦による弾道ミサイル防衛はアメリカ軍の早期警戒システムと指揮統制システムに深く依存した存在であるということです。発射直後の敵弾道ミサイルの探知はアメリカ軍の赤外線衛星による早期警戒網によって行われ、各イージス艦のレーダーによる追跡情報もアメリカ軍の指揮統制システムに送られ、最適な位置に居るイージス艦に迎撃目標が割り振られることになります。SM-3迎撃ミサイルを導入する韓国海軍のイージス艦は火器管制システムの改修によりこの能力を手にします。そして戦時に置いて韓国近海にはアメリカ海軍のイージス艦も前進展開し、韓国海軍のイージス艦と共同で警戒を行います。迎撃の際に無駄弾を撃たず的確に処理する為には、どちらも一元化された指揮統制システムによって指示されなければなりません。それはつまり、韓国海軍のイージス艦がアメリカ軍の指揮統制システムによって迎撃を行い、アメリカ軍の弾道ミサイル防衛網に組み込まれることを意味します。

 政治的に韓国政府は「SM-3を導入してもアメリカの弾道ミサイル防衛網には組み込まれない」と言い張るかもしれませんが、実質的にそのような運用は為されないでしょう。戦時には確実に米韓は連携して行動します。朝鮮半島有事の際に韓国海軍のイージス艦がアメリカ軍とのデータリンクを切って戦闘を続けるなど、考えられません。

 そしてそれはつまり、韓国の文政権は昨年に中国と交わしたTHAAD配備問題についての合意を反故にするということを意味します。

中国が激しく反発して韓国との関係が険悪になっていた在韓米軍THAAD配備問題について、10月31日に中国と韓国は関係改善を発表し合意した3点を表明しました。

1. THAADの追加配備を検討しない事

2. アメリカ主導の弾道ミサイル防衛網に加わらない事

3. 日米韓の安全保障協力を軍事同盟に発展させない事 

出典:在韓米軍THAADと東欧MDの配備問題における共通性、中国とロシアの本音(2017/11/12) - Y!ニュース

 韓国軍のSM-3導入は、中韓合意の2番目の「アメリカ主導の弾道ミサイル防衛網に加わらない事」を無視するものです。文政権は最初から中国との約束を守る気はなく、アメリカとの連携強化を進める積りだったと言えます。