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宇野昌磨の発言で注目「ジャンプの採点基準」とアスリートファーストのルールとは #専門家のまとめ

野口美恵スポーツライター
NHK杯で熱演する宇野昌磨(写真:長田洋平/アフロスポーツ)

 フィギュアスケートのGPシリーズ第6戦、NHK杯でのジャンプの回転判定が、話題になっている。宇野昌磨は、ショートでは2種類の回転不足判定があり、会心の演技と見られたフリーでも4本の4回転がq判定(90度の回転不足)に。宇野は「これが今後の基準になるなら、競技から退くことも」と発言し、さまざまな物議をかもした。

 また宇野だけでなく、多くの選手が回転で減点される試合となり「今回の試合は判定が厳しい印象」と発言。大会によって採点の厳しさに差があることも、浮き彫りになった。

 回転をめぐる採点の仕組みは? 宇野の発言の真意は? そしてアスリートファーストのルールはどんなものが良いのか。各記事や宇野の発言をまとめた。

▼ジャンプの回転を判定する「テクニカルパネル」と、出来栄えを評価する「ジャッジ」。採点の流れを解説。宇野の「引退」発言の真意を説明した

▼体操競技ではAI判定により「1度」の差も自動判定されることなど、新たな採点システムにむけての視点を紹介した

▼不可解な判定のなかでも、宇野が前向きに気持ちを切り替えたことを紹介

▼公式アンバサダーの田中刑事さんが宇野選手へインタビュー。メディア対応ではない、演技後の表情が見られる

 まず宇野自身が誤解されないために記述しておくと、彼はルール批判や、得点への不満を伝えたかったのではない、ということ。演技直後のインタビューでも、回転判定へのショックを押し込めながら、充実した表情でジャンプについて語っている。一夜明けたインタビューでも「自分を信じて、これまで通り練習したい」と話し、採点騒動が加熱しないことを望む姿勢を見せた。

 宇野がそう宣言した以上、宇野自身の採点については、これ以上、無理に騒ぐべきではないと思う。ただ、すべてが解決したわけではなく「公平性」という論点が残った。

 ジャンプの「回転不足」の判定は、テクニカルパネルが「目で見て」決める。人間が判定するため「厳しさにある程度の差があるのは仕方ない」というのが、これまで暗黙の了解になってきた。しかし、本当に仕方ないのか、ということだ。

 大会によって厳しさが違うということは、選手はどの基準を信じて練習すれば良いのか分からなくなる。出場した試合ごとの公平性が保たれていないことになる。

 体操競技ではAI判定が導入されているというが、フィギュアスケートでは縦横無尽にリンク内を移動し、多彩なステップなども詰め込んでおり、AI導入は遅れている。

 AI導入が難しいならば、やはり現状は、テクニカルパネルの連携を深めるしかない。大会後の振り返り、次の試合との基準の連携、認識の共有。基準を揃えるための会議やセミナーが、今まで以上に頻繁に、厳格に、行われていくことが最善だろう。アスリートファーストのルールに向けて、多くの議論がなされ、皆で前に進んでいくことを願う。

スポーツライター

元毎日新聞記者。自身のフィギュアスケート経験を生かし、ルールや技術、選手心理に詳しい記事を執筆している。日本オリンピック委員会広報としてバンクーバーオリンピックに帯同。ソチ、平昌オリンピックを取材した。主な著書に『羽生結弦 王者のメソッド』『チームブライアン』シリーズ、『伊藤みどりトリプルアクセルの先へ』など。自身はアダルトスケーターとして樋口豊氏に師事。11年国際アダルト競技会ブロンズⅠ部門優勝、20年冬季マスターゲームズ・シルバー部門11位。

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