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スリランカ国会、大統領からの辞表が得られず延期に。

にしゃんた社会学者/タレント
占拠していた官邸を引き渡しその場をさるデモ隊のメンバー(文:にしゃんた)(写真:ロイター/アフロ)

 スリランカは今も混乱が続いているが、今一番待ち望まれるのはゴーターバヤ・ラージャパクシャ大統領の辞職だ。当初、彼は国民議会議長を通じて、13日に辞表を提出すると国民に約束したが、それが果たされることはなかった。しかも、辞任後の逮捕を避けるために海外に逃亡していることがわかり、国民は怒り心頭だ。

 マヒンダ・ヤパ・アベイワデナ国会議長によると、スリランカ時間の14日18時現在、大統領からの辞表はまだ受け取っていないとのこと。この状況を鑑み、国会議長は本日、明日予定されている国会は召集されないと通知した。大統領の辞表を受け取った後、3日以内に国会を召集する予定であることを表明した。

 7月9日の党首会談で、ゴーターバヤ・ラージャパクシャ大統領は、7月13日に辞表を提出すると約束していた。13日に辞表を受け取った後、7月15日に国民議会が召集され、7月18日には大統領の指名が受け付けられ、7月20日に新大統領が選出される予定であった。しかし、約束を守らないラージャパクシャの無責任な行動により、国は前に進まず、政治的混乱が深まっている。現在、大統領はまだ辞表を提出していないが、海外にいることを理由にラニル・ウィクレミンハ首相を大統領代行に任命している。

 ラージャパクシャ氏は13日未明にスリランカ軍用機でモルディブに逃亡したが、14日日本時間正午過ぎにモルディブを飛び立ち、シンガポールに向かったと伝えられ、その動向が注目されていた。実はこの飛行機、14日に世界で最も追跡された飛行機になった。Flightradar24.comのデータによると、マレ発のサウディア航空788便はグリニッジ標準時14日午前7時43分の時点で約5000人のユーザーによって追跡され、これはヨーロッパを飛ぶフランス空軍機を追跡する人数の3倍以上だとブルームバーグは伝えた。

 シンガポールのチャンギー空港に日本時間8時半過ぎに到着したことが伝わった。シンガポールの空港外務省によると、ラージャパクシャ大統領の同国への到着を確認したこと、今回は「私的訪問」であり、亡命を要請したことも、認められないことも明らかにした。ラージャパククシャ氏は、シンガポール経由でサウジアラビアに向かうとの情報もある。

 情報筋によると大統領はまだ目的地に到着できていないことが、辞表が遅れている理由と伝えられている。この目的地は亡命先ではないかとも見方もあった。今回、ラージャパクシャの亡命先がシンガポールではないことが明らかになった。つまり、亡命先がサウジアラビアなのか、それともここに書かれていない第三国なのかは、現時点では不明だ。

 スリランカは現在、大統領が辞任を先延ばしにしているため、今後の国の行方を左右する国会業務に支障をきたし、政治的混乱に直面している。さらに、現状を打破するための対外的な交渉の出発点にも立てない状態である。ラージャパクシャの言動は無責任極まりないと断じざるを得ない。

 そんな折、思いがけないところから、ラージャパクシャ氏が辞任したとの知らせが舞い込んできた。相手は、さっきまでラージャパクシャを囲んでいたモルディブの議長でモハメド・ナシード元大統領だ。

 「大統領は辞任した。これでスリランカは前に進めると思います。もし大統領がまだスリランカにいて、身の危険を感じていたら、辞任はしなかったと思う。モルディブ政府の思いやりのある行動を評価する。スリランカ国民に幸あれ。」という内容のツイートをした。

 時系列的にはその1時間ほど後になって、国会議長が、大統領から電子メールで辞表を受け取ったと現地メディア(newswire)が発表した。その後、手紙の合法性などを確認する段階に入った。辞表のマスターコピーがシンガポールから飛行機で届けられる予定であるというニュアンスの内容をロイターが報じた。いずれにしても当初より明日に予定していた国会召集は、辞表提出の今回の遅れにより延期になった結果は変わらない。

 ラージャパクシャはどこまで国家や国民を後回しで、私利私欲優先なのか、そしてこんな愚か者を2200万人もの国民の代表として選んだかと思うと、怒りはもちろん自己嫌悪に陥る国民も多いはずだ。

社会学者/タレント

羽衣国際大学 教授。博士(経済学)イギリス連邦の自治領セイロン生まれ。高校生の時に渡日、日本国籍を取得。スリランカ人、教授、タレント、随筆家、落語家、空手家、講演家、子育て父などの顔をもっており、多方面で活動中。「Mr.ダイバーシティ」などと言われることも。現在は主に、大学教授傍ら、メディア出演や講演活動を行う。テレビ•ラジオは情報番組のコメンテーターからバラエティまで幅広く、講演家として全国各地で「違いを楽しみ、力に変える」(多様性と包摂)をテーマとする ダイバーシティ スピーカー (多様性の語り部)として活躍。ボランティアで献血推進活動に積極的である。

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