グルテンフリーダイエットで健康的にやせられるって本当?

(写真:アフロ)

スリムで健康的な体を手に入れたい、できれば無理のない方法で・・・、というのが多くの方の願いだと思います。話題の糖質制限食については先日言及しましたが、多くのダイエットは栄養学の知識がしっかりしていないと、将来にも影響を与えるような健康問題を引き起こす可能性があることをおぼえておいて欲しいところです。

今回はちょっと変わったところで、美肌効果も期待できるとされる「グルテンフリーダイエット」について検証してみようと思います。

■どんな食事法?

グルテンというのは、小麦や大麦、ライ麦などに多く含まれるタンパク質なのですが、スパゲティのモチモチ感のもとにもなっています。日本の伝統的な食品であるお麩もグルテンの食感を利用した食品ですね。

グルテンフリーダイエットは普段の食事に含まれるグルテンを取り除けば健康にやせることができるという考えの食事法です。グルテンフリーダイエットについて書かれた本やネットの記事によればグルテンを食べると色々と体に悪い影響があるということです。

・グルテンは吹き出ものや便秘の原因になる

・小麦たんぱく質のグルテンは消化酵素で分解しきれなかったものが身体に麻薬のように働き、食べ続けるとグルテンに依存状態になる

・グルテンの入っている小麦を食べると 血糖値が急上昇し、それを下げるためのインスリンが過剰に分泌されると、脂肪を溜め込むことで太りやすくなる

・小麦(精白されてない小麦でも)を食べると血糖値を急上昇させるため高血糖による体内の糖化を促進させる

これらが本当だとしたらグルテンを含む小麦などの製品は恐ろしくて食べられなくなってしまいそうです。グルテンは普段の生活で避けたほうがよい危険な食品成分なのでしょうか?

■グルテンの悪影響ウソ、本当?

【吹き出物や便秘の原因になる】→×

特別な病気を持たない人がグルテンを含む食品が原因でそのような症状が起こるという信憑性の高い報告は見当たりません。グルテンが免疫反応を引き起こし身体に炎症反応を起こす病気があるのですが、その症状が書かれており誤解を与えるものといえるでしょう。

【体内で麻薬のように働き依存症に】→×

ご存じの人も多いと思いますが、体内でつくられる麻薬様物質にエンドルフィンと呼ばれる物質があります(いわゆる脳内麻薬ですね)。エンドルフィンはアミノ酸が幾つか連なったペプチドと呼ばれる構造を持つ物質です。食品中にもエンドルフィンと同じような作用を持つタンパク質やペプチドが存在していると考えられ調べたところ、小麦のグルテン(グリアジン)や牛乳のαカゼインが消化酵素で分解されてできたペプチドに似たような構造を持つものが見つかったのです。もしかしたら体内でも麻薬のように働くかも知れないと色々検証されたのですが、この物質が脳内に届いて同じように作用することは実証されませんでした。

一時期はもしかしたらと真剣に検討されたものですので、当時としてはバカらしい話ではないのですが、現在ではグルテンの分解物が体内で麻薬のように働く事は無さそうだ、というのはコンセンサスになっております。小麦を食べて小麦依存症になるという話はバカバカしいと思って大丈夫です。

【グルテンの入っている小麦を食べると血糖値が急上昇し、インスリンが過剰に分泌され、脂肪を溜め込むことで太りやすくなる】→×

これは完全に眉唾です。むしろグルテン含量の多い小麦の方が消化吸収がゆっくりとなり、ごはんなどに比べて血糖上昇が緩やかである事が知られております。

食事を食べて血糖がどれぐらい上昇するのかを調べ、どの食品や料理が血糖を上げやすいのか上げにくいのかを明らかにする研究がいくつも行われております。こうした調査の成果は一般にGI(グリセミックインデックス)として紹介されておりますが、タンパク質の多い小麦原料のスパゲティは、同程度の糖質を含むご飯に比べてGIが低いことからもわかります。

【グルテンの含まれている小麦を食べると血糖値を急上昇させるため高血糖による体内の糖化を促進させる】→×

糖尿病の人であれば、インスリンの分泌が不十分なために高血糖となり、体の組織を糖化させることがありますが、それは小麦などに限った話ではありません。よりGIの高いごはんでも同じ事がおこるはずですね。ごはんもダメであれば和食も勧められなくなってしまいますからオカシサがよく分かるでしょう。 

■セリアック病

多くの人は食べもののグルテンについて気にする必要はありませんが、中にはグルテンを除去した食事を必要とする人がいます。それがセリアック病です。

セリアック病は穀物中に含まれるタンパク質であるグルテン(グリアジン)が原因となり、小腸に炎症をおこし、機能障害がおこり消化吸収不全から栄養失調を起こしたりします。消化が十分にされないままのグリアジンがペプチド(アミノ酸が複数個繋がった状態のまま)のまま小腸粘膜に吸収され、それを異物と認識する免疫反応が起こり炎症を引き起こし、消化吸収に重要な小腸粘膜を損傷してしまうものです。主な症状として体重減少、貧血、慢性疲労があります。

今のところ有効な薬物療法などがないため、基本的にはグルテン(グリアジン)除去食が行われますが、摂取頻度が高い食品に含まれているものであり、グルテンを除去した素材食品や調理品などを利用して食事をつくったりします。セリアック病の人にとって除去食は健康的な生活を送るために不可欠なものです。

さて、このセリアック病の頻度ですが、アメリカでの症状を示すセリアック病は3000人に1人程度の割合と考えられていますが、潜在リスク者は130人に1人ほどかも知れないと予測されています。

この病気は国や人種により発症頻度が異なり、日本を含むアジアでは比較的少ないと考えられており、消化管に症状が見られるケースは少ないようです。とはいえ、病気自体の認知があまりなされていないという影響もありそうですから、実際にはもう少し多いかも知れません。

思い当たる症状のある人は、自己判断ではなく炎症性腸疾患外来のある専門医を受診することをオススメします。

■今回のまとめ

・グルテンには麻薬のような作用もないし依存性もありません

・小麦は血糖を上昇させやすい食品ですがごはんも同様です

・そもそも糖尿病が心配な人でなければ高血糖になるまえにインスリンで調節されます

・グルテン除去食は食事の幅をせばめ、食事のコストを高めます

・グルテンに関係なくやせるためには消費エネルギーが食べた分を上回る必要があります

・セリアック病は小腸に炎症のおこる自己免疫疾患です

検証してみたところ、セリアック病やその疑いのある人以外にはグルテンフリーダイエットをするメリットは見当たりませんでした。

以前、グルテンと自閉症の関係性が取りざたされたこともありましたが、こちらも関係はないだろうという結論がでております。特定の食べものを悪者にするような話は、基本眉にツバをして良いと思って下さい。

参考資料・文献

http://www.efsa.europa.eu/en/efsajournal/pub/231r.htm

Fasano A, Berti I, Gerarduzzi T,et al. Prevalence of celiac disease in at-risk and not-at-risk groups in the United States: a large multicenter study. Arch Intern Med. 2003 Feb 10;163(3):286-92.

http://www.webmd.com/brain/autism/news/20110928/diet-autism-what-works